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ウルトラセブンの反省・第2話「緑の恐怖」~気になるあの人たちの扱い

第3話「湖のひみつ」と一緒に一番最初に制作された本作は、最初期のエピソードながら非常にクオリティの高いホラー作品となっています。

元々本エピソードの原案はウルトラマンの制作最初期に作られたものです。それが「ミロガンダの秘密」として制作されているので、「緑の恐怖」も怪奇性が強かったウルトラQやウルトラマン初期の雰囲気にとても近いものとなっています。

本話の演出を担当された方もホラー演出を得意とする野長瀬三摩地監督であり、ウルトラセブンでも屈指のホラーエピソードとして丁寧に作られていました。


脚本にある・なしな「郵便配達」と「おじさん」

本話は演出が野長瀬監督であるため恐怖演出やミステリー要素がとても多いのですが、その影響か違和感のあるシーンが多数見られます。

よくファンから指摘されるのは、序盤に登場する郵便配達です。

脚本でも怪しさ満点の郵便配達

チルソナイトを持ってきたこの郵便配達屋ですが、正体については色々憶測が出ており、「ただの無愛想な人」「別のワイアール星人が化けている」「ワイアール星人の手下」等と言われています。

この郵便配達は脚本の時点で登場していますが、家政婦に意味ありげな言葉を投げかけたりと非常に怪しさ満点です。
でも結局、正体は不明なままで意味不明と言えなくもないです。
脚本ではワイアール星人は生物Xとしか呼ばれないので、もしかしたら脚本の流れとしては生物Xと星人は独立していて、別々だったのかもしれません。

ウルトラセブンでは脚本段階で意味ありげに登場しながら結局は別に何ともない、ミスリードを狙ったり存在意義の低いモブの人物が登場することもあります。

本話は他にも何のことは無いシーンでもやたら恐怖演出が過剰に用いられている傾向が強く、上記の郵便屋の存在も含めてやや蛇足と言えるかもしれません。

何故か恐怖演出

後半には巨大化したワイアール星人に対してダンがセブンに変身する際、逃げ遅れたおじさんを救助しようとする展開があります。
実はこのシーンは郵便配達と違って、脚本上では存在しないものでした。

脚本にはいないおじさん

おじさんはトンネル内に避難させられていますが、その後の行方については全く示されていません。
戦闘後に救助された様子もなく、その安否についてもファンからはツッコミの対象になっています。

おじさんはいずこ?

ちなみにウルトラマンでも同じく野長瀬監督の担当回で似たような展開がありました。
それは第7話「バラージの青い石」です。

こちらのエピソードでもハヤタが変身する際に気絶したお婆さんを避難させて、戦闘後に救助するシーンがありました。
ちなみにこのシーンは脚本の時点で存在するものです。

セブンにおけるおじさんの展開はわざわざ野長瀬監督が追加しているシーンなので、救助されたシーンも撮影されていた可能性もあります。
尺の関係でカットされてしまったのかもしれません。


セブンの見せ場について

第1話では巨大化もせずクール星人を瞬殺してしまって全く見せ場が無かったですが、本話ではちゃんと巨大化してワイアール星人と決着をつけるクライマックスが用意されています。

戦闘時間はおよそ50秒

しかし、制作最初期ということもあってかドラマのクオリティの高さに反して、クライマックスの戦いは完成度が低いです。
セブンの初期はウルトラマンと違って特に殺陣を意識しているので派手な格闘をしないですが、それを抜きにしても演出はよくありません。

セブンもワイアール星人もほとんど最初に出現した山からほとんど動かずにアクションをするので、動きに全くメリハリがありません。
脚本上ではワイアール星人はツルの形態でセブンに巻きつくというものになっていますが、これは同時制作の「湖のひみつ」のエレキングが同じく長い尻尾で巻きつけたりするので、印象が被らないようにしたのでしょう。

また、上記のようにドラマ本編においてダンが変身するシーンでおじさんが追加されていますがこれによって本編と特撮の矛盾が発生してしまいました。
戦闘シーンでは思いっきり山を崩してしまっているので、余計におじさんの安否に対して全く配慮していないことが分かります。
恐らく特撮班にはドラマ本編で追加撮影された内容が伝わっていないことが窺えます。

おじさんが心配になる大破壊

ドラマと特撮の擦り合わせが上手くいかなかった典型とも言えるでしょう。


まとめ

以上のドラマ内における不自然な部分を改善するには

  • 郵便配達でチルソナイトを持ってくる関連の展開は変更する

  • おじさんに対してフォローするシーンを加える

といった点になるでしょう。
実際、チルソナイトに関しては一峰大二氏のコミックス版では郵便配達も登場せず、石黒隊員が電子頭脳を隠し持っているという自然な展開になっています。
むしろ本編もウルトラマンにおいてケロニアが登場する回で、似たような演出を取っているので不可能ではなかったはずです。

なお、こちらでは変身方法も全然違うので当然おじさんもいません。

郵便配達関連のシーンは全部で約60秒くらいなので、上手く尺を調整できればクライマックスのセブンの戦闘シーンも少しはまともにできた可能性もあります。

本編との擦り合わせを上手く合わせるなら、おじさんがいるトンネルの山は壊さないように配慮する戦闘シーンとすべきかもしれません。

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