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PS3以前のアーマード・コアのラスボスはヌルゲーなのか否か?
フロムソフトウェアの戦闘メカアクションゲーム・ARMORED COREシリーズには色々なラスボスが登場しました。
PS3以降の作品のラスボスはゲームデザインが大幅に変化したこともありますが、個人的にはあまり印象に残らない感じがあります。
というのも、PS1~PS2のACシリーズはメカアクションであると同時にアドベンチャーゲームとしての側面もあったためか、ダンジョンの奥深くで待ち受ける未知の敵という造りになっています。
故に登場するラスボスは『旧世代のテクノロジーで生み出された超兵器』がほとんどで、正体不明の兵器の登場が非常に多いです。
ファンタズマ(プロジェクトファンタズマなど)
ナインボール=セラフ(マスターオブアリーナなど)
パルヴァライザー(ラストレイヴン)
などは作中内外で何度も再登場したりするのでかなり印象が強いです。
そのラスボスの強さは各作品ごとにマチマチです。
MOAのナインボール=セラフは非常に強いラスボスとしてユーザーの記憶に残り、AC2アナザーエイジに再登場したりフィギュア化したりと非常に根強い人気がありました。
ですが、シリーズによってはヌルゲー並みに弱すぎるラスボスもいます。
PS2最終作のラストレイヴンはストーリーが分岐するのでラスボスも変化しますが、特殊兵器としてのラスボスはパルヴァライザーとなります。
ラストレイヴンはAC3以前からゲームデザインが大幅に変わって賛否両論な出来栄えであるため、相対的にボスの難易度が高いですがこの作品はゲームバランスがやや崩壊気味で調整不足という側面が強いです。
ACシリーズの弱いとされるボスは、このバランス調整不足が原因で結果的にヌルゲーのように弱くなってしまっているものが結構多いのです。
ACシリーズでは特に、AC2の無印とAC3サイレントラインのラスボスはシリーズ全体で見ても非常に弱いボスとして設計されています。
◆スカラバエウス&フィリアル(AC2)
このラスボス戦は2連戦となっており、前半戦と後半戦の間に回復ポイントが設けられています。
そのため、前半戦のスカラバエウスでいくら消耗してもダメージや弾薬も全回復してしまうので、ダメージは無視したゴリ押しプレイで簡単に倒せるほど簡単です。
図体がデカくて遅いので、ブレードでも余裕で倒せます。
むしろ、変に距離をとって慎重に戦おうとすると逆にミサイルの雨で苦戦してしまいます。
そして、後半戦のフィリアルは拡散レーザーでジワジワとこちらを削ってきたり、オーバードブーストで距離を詰めてきたり、オービットキャノンとの同時攻撃もしてきたりとアルゴリズムや移動速度、攻撃能力自体は優秀で真正面から戦うと結構強いのですが、ミサイルを使うと楽に倒せてしまいます。
特にコンテナミサイルは適当にばら撒くだけで、数十秒足らずで呆気なく倒せてしまうほどです。
また、ACシリーズのラスボスはライフポイントとなるAPが大抵は4万~5万とかなり多いのですが、スカラバエウスとフィリアルはせいぜい2万程度しかありません。
以上の要素から、AC2のラスボスは非常に弱いボスということになります。
ただ、スカラバエウスはまだしもフィリアルに関しては設定ミスの痕跡が見受けられます。
攻略本などにはミサイル迎撃の能力があることが記載されており、実際に撃ち落とすこともあります。
ところが、このミサイル迎撃性能は発動確率がたったの8%!
参考までにAC2ではコアのやエクステンションのミサイル迎撃装置の発動率は40~70%程なので、フィリアルのミサイル迎撃能力は無きに等しいです。
一説では、フィリアルのミサイル迎撃能力は8%ではなく、80%だったのではないかという見方もあります。
実際にチートを使ってバランス調整を施すと、かなり劇的にパワーアップするので、やはり設定ミスであったことは間違いないようです。
このミサイル迎撃能力なら、ラスボスとしてそれなりの威厳を保てていたのかもしれません。
◆I-CFFF-SERRE(AC3サイレントライン)
AC3サイレントラインのラスボス(通称IBIS)はナインボール=セラフのセルフオマージュみたいな相手なのですが、その強さに関しては天と地ほどの差があります。
IBISはラスボスの割にアルゴリズムはかなり大人しく、中ボスで登場する特殊AC(通称デブヴィクセン)の方が攻撃が激しくて強いとも言われています。
武器はレーザーライフル、ミサイル、ブレード、二種類のイクシードオービットと種類は豊富ですがセラフのようにブレードは威力がある訳でなく、ミサイルも連発したりせず単発でしか使って来ないのでかなり地味です。
唯一派手なイクシードオービットもわざわざ足を止めてしまうので非常に隙が大きく、後半戦はミサイルと一緒に使わなくなっていまいます。
実はレーザーライフルもデブヴィクセンと同じく二次ロックをしないという致命的な欠点があるので、動いていればほぼ当たらないという体たらくです。
後半戦はスピードが上がりますが、ほぼ一直線にしか動かない単純な軌道なので普通に攻撃は当てられてしまいます(ACシリーズには二次ロックの仕様があるため)。
このラスボスはどちらかと言うと、普通のAC戦の延長線上のような構成になっているので、波状攻撃をしてきたセラフと比べると攻撃が緩いというのも納得できます。
このようにヌルゲーなラスボスなのですが、チートを用いてセラフや大型兵器のようにしてみると、それなりに歯応えのある強さになります。
ビジュアルは非常にカッコイイラスボスなので、セラフほどとはいかずともそれなりに強ければ印象が強くなっていたと思われるのは勿体ないほどです。
◆結論
ACもゲームである以上、作るのは人間なのでその調整が上手くいかないと、結果的にゲームバランスは悪くなってしまいます。
ヌルゲーのようにラスボスが弱すぎるAC2やAC3サイレントラインも、反対に難しすぎてクリア自体が困難になってしまったラストレイヴンも、結局は調整不足だったと言えるでしょう。
ただ、AC2AAアナザーエイジのファンタズマやナインボール=セラフも正面から戦うと強いですが、上に乗っかればハメ殺せるという裏技もあり、捻くれた遊び方をして抜け道を見つけるユーザーを制作スタッフが想定していなかったような事例もあります。
バランス調整も、一種のデバッグ作業みたいなものなので、クリエイター側としては如何にユーザーが自分達の想定通りに遊ぼうとしないのを考えて、制作をしなければ満足のゆくボスキャラというものは作れないのだとつくづく感じます。