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ウルトラセブンの反省・第12話「遊星より愛をこめて」~名作「狙われた街」との差について
ウルトラセブンの第12話は2025年現在、諸般の事情で円谷プロは「欠番」としており、一般には公開されていない封印作品です。
その辺の理由については割愛させてもらいますが、内容自体は決して批判されるような要素は全くない「いたって普通のエピソード」とだけ言わせて頂きます。
本エピソードは封印作品ということで悪い意味で有名となりましたが、内容的には上記のように「普通のエピソード」です。
色々なファンの方々も感想を書かれていますが、数あるウルトラセブンのエピソードの中では「印象に残らない」「つまらない」「凡作」等々、意見が分かれています。
本エピソードの演出を担当されたのは一風変わった異色的な演出で知られる実相寺昭雄監督です。
名作として知られる第8話「狙われた街」と同時製作されたのですが、あちらと比べるとこちらの評価は「実相寺作品にしては面白くない」という感じの感想もよく見られます。
「狙われた街」と比べてみて
「遊星より愛をこめて」は「狙われた街」と様々な共通点が見られます。
事件のキーアイテムがタバコ(8話)、腕時計(12話)と身近な物
アンヌの知り合いが登場する
子役が登場する
ダンとアンヌのデートシーンがある
敵のアジトに尾行するシーンがある
クライマックスの戦いが夕日
等々、両エピソードを比べてみると本当に共通点が多いです。
しかし、両エピソードでここまで評価に差が出てしまった理由も、同時に見えてきます。
実相寺監督はウルトラマンでも風変わりな演出でしたが、それでも視聴者を楽しませようとする適度なエンターテインメント性がありました。
ウルトラマンからウルトラセブンの間に別のドラマの演出を担当している内に、監督独特の演出が尖ってきたのでウルトラセブンの頃には全体的にくどくなってきている傾向が強く、冗長なシーンが目立つようにもなっていました。
この点が12話の方で一番顕著なのは公園のシーンです。
このシーンは約3分もの尺を使っているかなり長いシーンですが、テンポが非常に悪く冗長なカットがかなり見られます。
ウルトラセブン撮影日誌で見ても、この公園の撮影はスケジュールをオーバーするなど、スタッフからもクレームが出ているほどです。
普通は重要なカットだけを使ってテキパキ進めるものですが、実相寺監督のある意味短所でもあるこだわりが強すぎて、このシーンは人物の描写を細かくし過ぎなのがはっきり分かります。
もう1分くらいは短くしても全く問題ないほど、このシーンは冗長で退屈に感じられてしまうのです。
#ウルトラセブン
— 這い寄る混沌 (@konton_nyaru) December 29, 2024
欠番回の12話「遊星より愛をこめて」は公園のシーンが3分近くも尺を使ってて明らかに長すぎる。
冗長なカットが多いから、もう少し短くしてもいいくらい。
その分、スペル星人との決闘に尺を費やしてくれればバランスが良くなってた。 pic.twitter.com/FK53xHDjO7
狙われた街が名作たり得たのは、実相寺監督の演出がさほどくどくなく控えめで、全体的に素直なので物語もスムーズに進んでおり、退屈に感じるシーンが無いからなのです。
「狙われた街」と「遊星より愛をこめて」の明確な相違点は、
8話「狙われた街」
ドラマ重視で特撮が少なく、宇宙人が姿を現すのは終盤。セブンの戦闘シーンにBGMがある。12話「遊星より愛をこめて」
エンタメ重視で特撮が多く、宇宙人は中盤から登場。ホークの戦闘が多め。戦闘シーンにBGMがない。
8話は終盤のクライマックスにのみウルトラホークと円盤の空中戦やウルトラセブンの戦いがあるのに対し、12話は中盤から終盤にかけてホークの空中戦などの活劇が連続しています。
特に8話の方ではほぼ光学合成も使っていないのに対し、12話の方ではホークと宇宙船の戦いで光線を撃ちまくったりと明らかな差があります。
そのためか8話の方は光学合成の予算が圧倒的に安く済んでるという点は見逃せません。
#ウルトラセブン#マイティジャック
— 畔上達也 (@PL34zxXkAWJScz7) August 19, 2022
「定本円谷英二随筆評論集成」(2010年、ワイズ出版)より。
驚嘆するのは『ウルトラセブン』におけるオプチカルプリンターの使用料。1話辺り538万円の予算で「魔の山へ飛べ」205万円、「消された時間」285万円は高過ぎる!😲それに対し「狙われた街」が6万円とは🤔 pic.twitter.com/elBRm09I4B
クライマックスのセブンの戦いについても、どちらもストップモーションを活用する点は同じですが、内容の完成度も大きな差が出ています。
メトロン星人の方は実際の戦闘時間は40秒も無く、内容もセブンとメトロン星人がダッシュジャンプですれ違うだけで大したアクションもありません。
スペル星人の方も戦闘時間は40秒程度ですが、メトロン星人と比べるとパンチやキック、投げの応酬をしたり円盤が攻撃をしてきたりと意外にも派手なアクションが展開されています。
この一面だけでも、スペル星人の戦いはエンタメを重視した構成であることが分かります。
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ですが評価はメトロン星人の方が遥かに高く、スペル星人の方はむしろ低いと言えます。
理由は明らかで、メトロン星人の方は内容が足りない分、素直な演出で編集されて補われており、BGMも使っているので結果的には達人同士の決闘のようなエンターテインメントを表現できていました。
反面、スペル星人の戦いは格闘シーンで1カットごとにストップモーションをかけているため、戦闘内容がほぼ省略されてしまっており、BGMが無いのも相まって盛り上がりに欠ける地味な編集がなされてしまったのです。
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この手法はウルトラマンにおけるシーボーズ戦でも用いられた演出ですが、あちらは「長時間戦った」というのを表現していた意味合いもありましたが、スペル星人の方ではあまり意味のないものとなっています。
この部分だけでもノーカットで戦闘の様子を見せてもらえれば、12話はウルトラセブンで特に第1クールで不足していたエンターテインメントが強化できていただけに、大変に惜しまれる要素となっています。
ちなみに8話の方もメトロン星人が実質、逃げるだけで何も攻撃をしない訳ですが、一瞬だけでも飛び道具で攻撃するなど何かしらの攻撃アクションがあればより完成度は高くなっていたでしょう。
まとめ
以上の点から、封印作品となった「遊星より愛をこめて」は実相寺演出の実験作としての印象が強く出ていることが分かります。
それ故に後半からはドラマも駆け足かつダイジェスト気味で、ゲストの早苗の悲恋も上手く表現し切れたとは言えません。
エンターテインメントとドラマがどれも中途半端
演出が「狙われた街」と比べるとくどい
これ故に「平凡なエピソード」の評価になってしまったと言えるでしょう。
実相寺監督の演出の短所も目立っていたため、セブンにおける他の実相寺作品ほどの好評も得られなかったと言えます。
公園のシーンなど冗長な場面は短くしたり、スペル星人との戦いはしっかり見せたりと実相寺演出を控えめにして、後半のドラマも調整すれば、より印象に残る作品として昇華していたでしょう。
実相寺監督はウルトラマンのシーボーズの特撮がお気に召さずに拗ねてしまって、以降特撮を極力しないような作風となり、セブンでの特撮がウルトラマン時に比べると地味に感じやすくなったのも、こだわりが強すぎたが故の弊害と言えたかもしれません……。
(以下、リンク2つ)