ウルトラセブンの戦闘シーンの風景は本当に地味なのか?
ウルトラセブンではウルトラマンと違って、街の中での戦闘シーンが少ないとよく言われています。
市街地戦は建物のミニチュアが必要になり、それだけ予算がかかることになります。ウルトラセブンはその予算への配慮もあって、全体的にセブンと敵が戦う場面は岩山や平原といった殺風景な場所がとても多くなっています。
次作の帰ってきたウルトラマンも序盤は同様の理由で市街地での戦いは少なめでしたが、中盤に入る辺りから、どんどん市街地での戦いが増えていくようになり、以降は戦闘シーンが華やかになっていきました。
ウルトラマンとの比較
ウルトラマンは全39話中、市街地が戦いの舞台になるのは以下のエピソードです。
02話(都市の上空・コンビナート)
03話(火力発電所)
05話(夜のビル街)
06話(港町)
11話(海辺のビル街)
13話(石油コンビナート)
16話(空港)
18話(夜の市街地)
19話(国立競技場)
22話(夜の造成地)
23 話(平和会議場の前)
31 話(工場地帯)
36話(大都会)
39話(科特隊基地の前)
実に1/3の割合で都会の中が戦いの舞台となります。
19・23・39話は正確には市街地ではありませんが、背景に建造物があるので市街地の一つと言えるでしょう。
7話や27話は建物をほぼ破壊してしまっているので、市街地戦にしては平原に近い少し殺風景な感じになっています。
ではウルトラセブンではどのような市街地での戦いがあったのでしょう?
●第5話「消された時間」
意外にも最初の市街地戦は、操演宇宙人であるビラ星人との戦いでした。この戦闘シーンは和風の庭園というのが非常にインパクトがあり、近未来の設定なのに神社や五重塔といったレトロな風景でウルトラセブンが戦うのは物凄いギャップを感じられます。
ちなみに、脚本上では単なる「平野」としか書かれておらず、スタッフがビジュアルに工夫を凝らしているのが窺えます。
●第8話「狙われた街」
夕焼けの中での戦いがとても綺麗なメトロン星人です。背景に見える赤い夕陽が強い存在感を放っています。
ウルトラマンが市街地の中で戦うと、広場などの広い場所が設定されたり、怪獣が既に壊して更地になってそこが戦場になりますが、街の建物越しに両者の戦いを映すので、妙にリアリティが感じられます。
実際の戦闘時間そのものは1分足らずで短いのですが、下町を駆け抜けるウルトラセブンやメトロン星人は達人同士の一騎討ちのようなシチュエーションになっており、シンプルかつスピーディな演出が好評を博しました。
●第14・15話「ウルトラ警備隊西へ」
セブンのエピソードの中でも非常に強いエンターテインメントのエピソードだけあって、前後編ともに建造物だけでなく水場もあったりと、キングジョーの強さも相まってかなり派手なシチュエーションになっています。
セブンが水場で戦うシチュエーションも後編の神戸港が初で、キングジョーもタンカーを投げつけたりと市街地戦ならではの小物を使っての攻撃も迫力があります。
●第21話「海底基地を追え」
第二のロボット怪獣・アイアンロックスとの舞台になったのも水場&港です。アイアンロックスの砲撃によって戦闘前に破壊されているので、背景で激しく炎上しているのが印象的です。
キングジョーが襲った神戸港と違ってこちらは普通の漁港なので、建物のミニチュアそのものは印象的なものがありません。
●第29話「ひとりぼっちの地球人」
プロテ星人との戦いの舞台になったのは大学内の庭園なので、正確には市街地ではありません。
しかし、ピラミッド型校舎を始めとした数々の建物が並び建つその風景は、立派な市街地と言っても過言ではなく、非常に面白い戦闘シチュエーションとなっています。
ちなみに、ロケ地となったのは学習院大学ですが、既に名物のピラミッド校舎は取り壊されて存在しません。
●第34話「蒸発都市」
ウルトラセブンにおいて本格的な市街地の中での戦いが初めて描かれたのが、実はこのダンカンとの戦いでした。
メトロン星人の工場地帯はあくまで背景に過ぎず、建物を壊すといった要素がないため、ビル街のど真ん中を舞台に戦うシチュエーションは新鮮味が感じられます。
●第38話「勇気ある戦い」
34話に続いて、クレージーゴンとの戦いの舞台になったのは大都会のど真ん中でした。
しかもセブンは2回も変身して、『高速道路』『ビル街のど真ん中』とそれぞれ違う場所が舞台になるので、同じ市街地でも違った印象を感じさせることに成功しています。
ミニチュアや表現が微妙に硬かった34話と比べると圧倒的に迫力ある市街地での戦闘シーンとなりました。
●第39話「セブン暗殺計画 前篇」
セブンではなくカプセル怪獣のウィンダムとガッツ星人が戦う舞台となったのが、夜のビル街です。
38話と同時進行で作られた都合もあってか、同じセットが流用されています。
同じセットでも、昼間の時とは全く違う印象が感じることができます。
●第43話「第四惑星の悪夢」
怪獣や宇宙人が登場しないエピソード3部作の一つですが、34話と同じくセブンが街を破壊するという非常に珍しいシチュエーションが描かれます。
戦う相手が実質上、存在しないのでセブン自身が暴れないといけなくなった訳ですが……。
その後のロケット基地の破壊ですが、このシーンは実相寺監督が貧相なセットの造りに怒ったという逸話もあります。
注射器や浣腸器をロケットや基地に見立てたということらしいですが、ドーム基地みたいな黒い部分が恐らく浣腸器なのでしょう。
初見ではそんな印象は感じず、実相寺監督が怒るほどでもないとは思われるのですが。見る人によって感じる印象は異なるということですね。
●第44話「恐怖の超猿人」
ゴーロン星人との戦いの舞台になったモンキーセンターはエピソードのタイアップ先でもあります。
平原の中に建物が疎らに設けられたような感じなので、ゴーロン星人が建物を壊したりはしますが市街地戦というにはあまり目立ってはいません。
●第47話「あなたはだぁれ?」
最後の市街地戦は夜間でのフック星人との複数戦というこれまた変わったシチュエーションでした。
舞台になっているのはむしろ団地のすぐ隣にある真っ平な造成地部分であるため、団地自体はほとんど目立っていません。
なので市街地戦という印象は薄いと言えるでしょう。
◆破壊される街
戦いの舞台にはならない代わりに、宇宙人の攻撃による都市破壊シーンのための市街地も少ないながら登場しています。
第1話の石油コンビナートはクール星人の攻撃で徹底的に破壊されており、第10話でも同じくコンビナートが破壊されるシーンがあります。
また、欠番となっている第12話ではスペル星人が巨大化して出現する場所が実は市街地という、シリーズ内では珍しいシチュエーションとなっています。
他にも第42話ではノンマルトの潜水艦からの砲撃で、漁港が破壊されます。こちらはアイアンロックス以上に徹底的に破壊され、火の海と化していました。
ウルトラセブンに登場する怪獣は基本的に「ウルトラセブンの戦う相手」という役目を果たすために存在しているため、登場しても都市を破壊する役目はほとんど与えられませんでした。
その点においても、ウルトラセブンはウルトラマンに比べると地味な作品だと感じやすいのかもしれません。
ウルトラマンとウルトラセブンにおける戦闘シーンの風景は、具体的には以下のようになっています。
比べてみると、意外にもセブンは建物などのミニチュアがある場所を舞台にして戦っていることがウルトラマン並に多いんですね。
ただ、やっぱりウルトラマンのように大都会の中で思いっきり戦うというような機会そのものは5回にも満たないので、とても少ないです。
セブンはウルトラマンより話数が多いので、その分だけ市街地以外の舞台が設定される分、市街地で戦う印象が薄いと感じやすいのでしょう。
なお、帰ってきたウルトラマンにおける市街地戦は各クールごとに分けると
01 02 12 13
15 17 18 19 21 24 26
27 28 29 31 33 35
39 41 45 46 47 48 50 51
全51話中、25話と実に半分ものエピソードとなっており、第2期ウルトラシリーズの戦闘が派手な印象を強めているのが分かります