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ベルは憧れの本の世界に飛び込んでいる/『美女と野獣』より『朝の風景』

こんにちはー!
此島このもです。

今日はディズニー映画『美女と野獣』の話をします。

実写ではなくアニメ版の方です。


『美女と野獣』のストーリーは、ベルという美しい女性が恐ろしい野獣と徐々に心を通わせていく恋愛ものです。美女と野獣の出会いは最悪で、粗暴で怒りっぽい野獣を嫌悪するベルが少しずつ野獣に惹かれていく様はまるで少女漫画。時計や燭台、ポットなどがお喋りする不思議な物語を子供の私も何度も楽しみました。

ですから存在自体は知っていたのですが、高校の吹奏楽で『美女と野獣』のメドレーを演奏して以来、この映画の音楽の魅力に気づき大好きになりました。


特にアラン・メンケン作曲の『朝の風景』という映画冒頭の曲が好きです。

この曲は、主人公のベルが住んでいる小さな村で歌われます。

これを聞くことで

  • ベルが住んでいるのは小さな村であること

  • ベルは日常に退屈していること

  • ベルは美人だけれど変わり者扱いされていること

  • ガストンというモテモテマッチョがベルと結婚したいと思っていること

などがわかります。状況説明のための歌ですね。

さまざまな様子の村人が登場し、にぎやかな画面はまるで絵本『ウォーリーを探せ』のよう。とても楽しい曲です。


好きポイント①

『愛の芽生え』とのリンク

私が好きなのは映画中盤の曲『愛の芽生え』とリンクした部分があることです。

『愛の芽生え』はタイトルの通りベルと野獣の間に愛が芽生えていることを歌う曲です。
ベルは「優しい彼にはじめての気持ちを感じる」と歌い、野獣は「彼女が僕を見た視線はなんか特別っぽいかも。彼女は僕を怖がってないかも。いや勘違いかも……」とモジモジしています(日本語吹替版だとこのモジモジ加減は歌詞になっていません。自分に自信が持てない感じが伝わってくるので私は英語の歌詞が好きです)。

で、ここで『朝の風景』と同じメロディが登場するんですよ。

『朝の風景』ではベルが本を読みながら羊に話しかけるシーンがあります。そこと『愛の芽生え』と主旋律が一緒なんですね。

同じメロディが使われている部分の歌詞をそれぞれ書きとってみました↓

『朝の風景』では
ああ なんて素敵 胸がときめく 見て
そう気付かないのよ 王子様が彼だってことが

『愛の芽生え』では
ねえ とても不思議 胸が熱くなるの
二人でいると 何かが彼の中に見える

映画『美女と野獣』より
(耳で聞いて書き取りました)

ここで重要なのが『朝の風景』の歌詞です。
「♪そう気付かないのよ 王子様が彼だってことが」。

のちに『愛の芽生え』で野獣クンが気になる……と胸をときめかせているベルは野獣が王子だということを知らないんですね。

だから『朝の風景』の「♪そう気付かないのよ 王子様が彼だってことが」は本の内容を羊に聞かせてやる体をとっていますがその実それは未来の自分の姿を予言している歌詞だということです。

これわかりづらいので図解しますね↓

乱筆失礼します


まるでベルが、自分が憧れて何回も読んだ本の世界に飛び込んだみたいで素敵じゃないですか? 面白いな〜と思います。

これ、私は大人になるまでメロディが同じであることに気づきませんでした。でも2曲の英語の歌詞を比べると同じ部分に「Prince Charming」の単語が入っているし、他の歌詞も「alarming」と「amazing」とかちょっと似てて気付きやすくなっているのかなと思います。



それから、『朝の風景』はたくさん村人が出てきて賑やかな歌ですが、ベルが羊に本の内容を話すこの部分は画面の雰囲気が違っていて好きなんですよね。

それまでは村の中のお店とか家とかで圧迫感があります。でもここは広場の噴水というひらけた場所で展開するので、本にワクワクするベルの気持ちが画面にもあらわれているみたいで素敵です。


好きポイント②

ガストンのヤバさがにじみ出てている

ベルとの結婚を望むガストンはモテモテのマッチョです。
「♪ひと目見たその時からもう恋の虜 だから口説いて結婚しよう ベルは俺のものだから」と『朝の風景』のメロディに合わせて歌いますがめっちゃ声が良い。クラシックな発声で太い声を出すガストンに私もメロメロ……になりたいのですが絶対無理で、「ベルは俺のものだから」の歌詞が彼のヤバさをあらわしています。

彼は別にベルと普段から仲が良くていい雰囲気になっているとかじゃないんですよね。

ベルの外見だけを見て「彼女と結婚したい何故なら完璧な俺様に釣り合うのは一番美人なベルだけだからだ」みたいな彼なりの論理で結婚を望んでいます。

そのヤバさが凝縮されているのが「ベルは俺のものだから」。
これは凄いですよ。この歌詞を聞くだけで話の通じない感じが伝わってきます。

だからガストンのパートは吹替版の方が好きですね。
英語の歌詞を訳したものは以下のようになっています。

一目見たその時から
ゴージャスな彼女のとりこ
この町で俺に見合う美人は彼女だけ
だからベルに求婚して結婚しよう

CD『ディズニーマジカル・メロディー
〜アラン・メンケン・ベスト〜』歌詞カードより

英語の歌詞の方が「求婚して結婚しよう」と段階を踏んでいるので話が通じそうな雰囲気があります。
私の主観ですけど「ベルは俺のものだから」よりまともな人そうじゃないですか?

強烈なナルシストであることが伝わってくるのは英語の歌詞の方ですけれど、それは歌詞を見なくてもアニメを見ていれば彼の動作などから伝わってきますからね(彼はピカピカな鍋に映る自分に見惚れます。歌いながら髪を撫で付けたり笑顔チェックしたり。そのせいで通り過ぎるベルに気付きません。つまり彼が好きなのはベルではなく自分自身なんですね)。


また、他にもガストンの登場シーンで好きなところがあります。
ガストンが登場する前に金管楽器の低音がブンブンブンとそれまで曲になかった動きをします。

その太い音はまるでガストンのマッチョさ、たくましさ、思想の激しさをあらわしているようです。
私は吹奏楽で低音の金管楽器を担当していました。こういうメロディは大好物。自分の担当する音は何を表現しているのか考えるのが好きだったのでこの音に気付いた時はウヒョ〜となりました。演奏してぇ〜!


以上が私の『朝の風景』好きポイントです!

もちろんこの曲はメロディも画面も楽しく素晴らしいものですが、こういうちょっとしたことに気づいてもっと好きになりました。

『美女と野獣』を見る機会があったら思い出してみてくださいね🤩🙌


【長い長いおまけ】

今回この記事を書くにあたって『美女と野獣』を見直して感動して泣いちゃった……だって今を逃すと自分が一生人間に戻れないってわかってるのにベルを帰してやる野獣立派じゃない? 『アナと雪の女王』で、真実の愛とは自らを顧みずに相手のために行動することだとオラフが言ってた気がしますがそれじゃんと思いました。野獣、あんたはえらいよ……。

あと人間の心理を熟知したストーリー展開に今更びっくりしました。ベルのパパは「正直ないい人」なんだろうけど、「野獣がどんなだったか教えろよ」と言われて正直に話しちゃうのは自らの首を絞めてるのにそれを全くわかってない。せめて「ほらやっぱり頭おかしい」と笑われたときに「なーんちゃって冗談だよ」とか言っていれば精神病院送りも防げたかもしれないのに……。
ベルはベルで野獣のことを「とても親切で優しいの」とか言ってそれガストンに聞かせたら駄目なやつ! 案の定ガストンはベルの声色から恋愛感情を読み取り野獣を攻撃対象にします。ガストンに先導される民衆も野獣の外見だけで恐怖に駆られあれよあれよという間に討伐隊を編成。リアルだ。
ガストンはただのナルシストじゃなくて人心をコントロールするのが上手い厄介なタイプですね。おもしろナルシストかと思ったらネチネチ攻撃してくる嫌なやつじゃん。こういう人いるいる〜! そういう奴と戦うには正直なだけじゃ駄目だということがよくわかるお話です。
ガストンはディズニーヴィランズの中で魔法の力も無い一般人だなあと思っていましたが普通の人がこういうタイプと戦うことの難しさを考えると魔女にも匹敵する厄介さかもしれない。こういうタイプは外面がいいから周囲の人を味方につけてターゲットを追い詰めるのが上手いんですよね。私の元上司とか。クソが。
あっ私情が出てしまいました。この辺で終わりにしておきましょう。

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