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幼い心に爪痕を残した本/『まけてたまるか』鹿目たかし

こんにちは!
此島このもです。

今日は私が幼い頃読んで衝撃を受けた絵本をご紹介します。

その名も『まけてたまるか』です。

表紙の緑っぽい猫ちゃんが主人公。


幼い私が衝撃を受けたポイントを単刀直入に申し上げます。
この本は主人公の猫ちゃんが負ける話なんです。

主人公は性格の悪い負けず嫌いで友達が全然いません。

そして友達がたくさんいる人気者の猫に嫉妬して勝負を挑むんですが負けちゃうんですね。

(本は実家にあり確認できないのですが、ネット情報によるとその後人気者猫に面白かったまた遊ぼうと言われてご機嫌になるようです)


子供向けの絵本で主人公が勝つ話ばかり読んでいた私にはそりゃもう衝撃でした。

「なんで?! 主人公って絶対勝つものじゃないの?」

読んだあとおなかの底から悔しい気持ちが湧いてきて読まない方がよかったと思ったことをよく覚えています。


私もかなり負けず嫌いな性格だったんですよね。
タイトルの『まけてたまるか』にすごく共感した気がします。

主人公に友達がいないのは本人の性格の問題なんですが、読者の幼い私にはそれが不当なことだと思えたんですよね(何故ならば主人公の望みが叶っていないからです。主人公の望みは叶うべきだと思っていました)。

だから人気者猫に勝負を挑むのは当然だし、当たり前に勝つんだと思いながら読んでいたんです。

なにしろ、圧倒的に不利な条件の主人公が逆転して勝つ物語はよく見ていましたから。

ところがアッサリ負けてしまいます。逆転は無し。

私は苦しくて苦しくてたまらなくなりました。

本は私にとって物語を追体験させてくれるものでしたから、自分が負けたような気持ちになったんです。

もうむちゃくちゃに不快だったのでなんとか良い気分になれる要素はないかと、幼い私は負けた後の猫が機嫌を直す部分をじっくり見ました。

しかし私にはなぜ主人公がご機嫌になるのか全くわからずただムカムカする本として記憶に残りました。

私は読書が大好きだったので家にある絵本はどれも繰り返し読みましたがその本は一番読んだ回数が少なかったと思います。

でもタイトルまでしっかり私の脳に染み付いて落ちません。

おそらく本の筋は「友達がいない主人公は勝負には負けたけど友達ができてよかったね」という内容だったのだと思います。

しかし幼い私は本の主人公以上に勝ち負けにこだわる性格で、更に友達がいない寂しさもわからなかったから主人公がなぜご機嫌になったのかわからなかったのでしょう(内向的でひとりで遊んでいるタイプの子供でした)。


今の私ならどんなに負けず嫌いでも生きていればそりゃ負けることもあるんだしそういうストーリーの本もあった方がいいでしょうと思います。

むしろ、もし私が親の立場でこの絵本と出会っていたら絶賛していたかもしれません。他の本とは一味違う! とか言って。

でも子供の私から言えば完全にNOです。

現実の負けは受け入れるしかないから、悔しい気持ちを押し殺して我慢する。だから絵本の中くらい勝利を味わわせてくれYO!! NO NO NO!!!


今の私は好きな本があれば何故好きなのか言語化して誰かに伝えたいと激しく思うのですが、当時の私はあーおもしろかったで終了していました。

だからたぶん、好きな本よりも『まけてたまるか』の方が内容をじっくり見ていたしその世界にどっぷり浸かっていたと思います。

なんにせよ、『まけてたまるか』が子供の頃読んで一番衝撃的だった本であることに変わりはないですね。

次に実家に帰ったら大人になった今どんな感想になるのか読み返して確かめてみたいです。

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