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シンガポール旅行記1-④『絶対に早く帰った方が良い』編

前回の話

登場人物
◯私…英語が全く話せない。シンガポールに来てからは出川英語で不測の事態を乗り切っている
◯夫…英語力は自称中学生レベルだった。しかし旅行に来てまあまあ英語が話せることが発覚する。

マーライオンを見る

前回しっかりと晩ごはんを食べてお腹が膨れた私たちは、疲れも溜まっていたので早めにホテルへ帰るかと思われた。
しかしホーカーを出ようという段になって夫は言った。
「マリーナベイサンズのショーが見たい」と。

マリーナベイサンズのショーとは毎晩決まった時間に行われる光と水のショーである。

確かに旅行前から夫はこのショーを見てみたいと言っていた。
夜の決まった時間でしか行われない為、タイミングを逃すと見に行けない可能性は大いにある。
今なら頑張ればギリギリ間に合いそうなところだ。
そう考えると、このまま帰り道に寄って見に行った方が確実な気がして来た。

「多分徒歩15分くらいで行けると思う。ショーの時間も丁度良さそうだ」
夫に言われて、まあ15分なら大丈夫か、と思った。
勿論2人とも日本で元気な旅行をしているときの感覚である。
私たちはここでも結局徒歩を選んで、マリーナベイサンズの方面へ向かった。

道中、マーライオンがある場所も通り過ぎるということで流石にマーライオンは見ようという話になった。
マーライオンがただの置物だということは分かっているし、こうして通り道で見ないと、わざわざ見に行くということは無いと思ったからだ。

街の写真。よく見るとここにもひらがな
いたるところにある高い建物


こうして私たちは無計画にマーライオンを目指して歩き始めたのだが、ショーの時間が刻一刻と迫っていた。
ショーの時間は20時だったが、私たちがマリーナベイサンズ付近に着いたのも結局20時だった。

目的地は確実に見えています


場所でいうと、光と水のシンフォニーが目に入ってきても良いくらい近い。
しかし不思議なことに、ショーらしい音楽ひとつ鳴っていなかった。
『ショー』というくらいなのだから、角度的に目視出来なかったとしても音楽くらいは聴こえて欲しい。だってもう目の前が水辺だぜ?
しかしどこからか聞こえるのは、屋外バーのような場所で踊り狂う人々のダンスミュージックのみだった。
私たちは既に足が棒のようになっていたので、ここから見れないということは今日はもう無理だという結論に至った。
ショーはまた調べ直すことして、一旦マーライオンに向き合ってみた。

これが噂のマーライオンだ!

マーライオンを見た感想は、「思ってたよりは大きい」だった。
逆にいうとそれ以外は全てが想像通りだった。

とはいえシンガポールのシンボルといえばマーライオンなので、私たちはしっかりと「マーライオンの水を飲んでいる風」のお決まり写真も撮った。
旅行前、会社の後輩に「マーライオンの水で頭洗ってる風の写真撮って来てください」と言われていたのでそれも撮ったのだが、本当に頭洗った方が良いですよ??と言われるくらい髪の毛がボサボサ過ぎたので、その写真は結局後輩に見せることもなく封印した。
飛行機の後に散々歩いてフォトスポットに行くのは向いていない。余りにも疲れが全身に出ていて、結局この日映えている写真なんて1枚も撮れなかった。

マーライオンを見て、その近くの橋も渡ってみたがやっぱりショーをした形跡が無かった。
何よりもヘトヘトすぎた。本当はもう一歩も歩かずにその場で一泊したいくらい疲れていた。子どもだったら間違いなく歩くことを放棄していた。
私たちは漸くここで帰るかと思われた。

しかし私は言った。
「いや、でもクラークキー行ってみたくない?」

これを人は『調子乗り』と呼ぶ。

だってここまで来たらクラークキーが近かったのだ。
さっき栄えスポットの話をした後になんだがクラークキーはとてもオシャレな街並みの栄えスポットである。ネットでは夜の街だと書いていたし、今の時間行っても楽しめるに決まっている。
それにシンガポールに行ったことのある友達が「大変に素敵だった」と言っていたので、隙を見て絶対に行きたかったのである。

私たちの足は棒のようを超えて最早棒だった。
しかしそれ以上に貧乏性でもあった。
私たちはまた歩いてクラークキーへ向かった。流石にどちらかが止めてくれ。

息も絶え絶え歩いていたので正直道中の記憶はボンヤリとしている。

ただクラークキーから少し離れているところに美術館があって、そこが夜でも開いているのが印象的だった。しかも展示が無料で見れるのだ。
一瞬だけ入ってみたが、夜でも充分賑わっていて芸術文化が盛んだと思った。私が通っている絵画教室の先生が「金額もしっかり取る美術館は日本くらいだ」と言っていたのだが、その言葉を実感した。

道中もうひとつ覚えている話をすると建物の壁を使ってプロジェクションマッピングが流れていた。
普段だったら絶対に立ち止まるのに、
「プロジェクションマッピングだね」
「プロジェクションマッピングだな」
と二言だけ交わし歩き去った。
後から調べると旧正月付近に行っていたので限定で流れていた可能性がある。結構貴重だったのかもしれない。元気だったら絶対に見ていた。

クラークキーに着く

クラークキーは確かに映えていてオシャレスポットだった。
ネットにも夜の街と書かれているだけあって、バーがこれでもかというくらい建ち並んでいた。
店の並びの雰囲気をいうと、ダンスミュージック、ダンス・ミュージック、ダンスミュージック、ダンスミュージックだ。スモークも炊いてあって中がしっかりと見えないし、THE・海外!という感じだった。
海外らしさは大いに感じられたが、余りにも大人っぽすぎて何を見たら良いのか分からない状態になってしまい、こちらも予習不足を感じた。

ところでクラークキーには下から上へ逆バンジージャンプができる普通に怖すぎるアトラクションが何故か常設されてあって、私はそれを見るふりをしてしゃがんで2回分くらい眺めていた。本当はもう歩くことを放棄していただけだった。大人なのに。

踊り狂えるバーが沢山ある街


この日クラークキーは大人な街というイメージで終わったが、友達の話とすり合わせてみると昼は全く雰囲気が違うということで、どうやら私が求めていた雰囲気は昼のほうが近いようだった。
クラークキーも後日行けたら通ってみようということになった。

よくよく考えるとこの日は
・食べたい海南鶏飯が食べられない
・マリーナベイ・サンズのショーを見られない
・クラークキーの見たかった景色と少し違う

というサザエさんの予告だったら最悪な3本立てになってしまった。
しかし旅行とはそういうもので、ただ街を歩くだけでも「色々見れて良かったな」と思えるから不思議である。

流石の流石にホテルへ帰る


帰る途中、本当の最後にコンビニだけ行こうという話になった。
旅行に行って知ったがシンガポールはセブンイレブンがとても多い。二大コンビニのうちのひとつらしい。
1番の目的は翌日の飲み物購入であったものの夫はシンガポールのビールを飲んでみたいという目論見があった為、マーライオンのイラストが付いた『タイガービール』を手に取った。

ビールとお茶を持ってレジに並んでいると店員の女性が私たちに向かって何か言っている。早口英語だったので「前の人に言ってるんじゃ無い?」と話していたのだが、私たちの順番になってもこちらに向かって話しているようだったので、やはり私たちだったようだ。
しかし全く何を言っているのか分からない。
言い方のみで察するに「ビールは買えないっぽい」と思ったので夫がビールを返しに行くと、店員はすぐさま次の人を呼び会計を始めた。私は居たが、1人でも列から抜けるとノーカン(ノーカウントのこと)らしい。
レジの横にお酒を置くだけなのに、全く容赦ないスピード感に圧倒された。
結局私たちはまた後ろに並び直し、翌日の飲み物を買ったのである。

因みにその後すぐに調べてみると、シンガポールは22時半以降お酒の販売が禁止されているという。
私たちが買おうと思ったのは22時36分だったので、ギリギリ間に合わなかったというわけだ。

しかし個人的に恐ろしかったのは、ホーカーを出たのが19時半〜45分の間だったに関わらず、既に22時半になっていたことである。
なんと私たちは22000歩程歩いていた。
パンパンになった足に休息時間を貼りながら、「明日から怖くても絶対バスを使おう」と誓い合って眠りについた。

1日目終わり。
2日目につづく。


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木ノ実 ひよこ 文学フリマ東京40に出店します
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