「神秘体験の弊害」のnote記事に関して
前回のnote
「神秘体験の弊害」のnoteの概要と「教訓」
「霊性」や「意識」の探求といった目的を持つ人であれ、明確な目的を持たない人であれ、意識変容・神秘体験をともなうような特殊なヨガや瞑想、密教、生命エネルギーの実践、神経科学的な方法、それに、サイケデリクスなどへの関心を示す人が増えているように感じられます。
人類には自らの意識の内に向かおうとする衝動があるのかもしれません。
このような中にあって神秘体験の弊害にも目を向けるのは、価値あることだと思います。
私の考えでは、現時点では、この神秘体験の弊害に関して指摘しておきたいのは、「グノーシス(グノーシス主義)」の傾向、要素であり、特に「反宇宙的二元論」です。
前回のnoteでは、オウム教団がこのグノーシスを地で行ってしまったという意見を述べました。
意識変容や神秘体験に関心のある人、密教、生命エネルギーの実践に関心のある人は、オウムという凄惨な事例を振り返り、教訓を得るようにした方がいいと思っています。
オウムについては、次のnoteで書籍『悔悟 オウム真理教元信徒・広瀬健一の手記』を参考・引用文献としてさらに補足します。
以下は、神秘体験に関係の深いものについて、今日でも特に目立つものの紹介です。
・オウム教団
オウム教団は数多くあるカルト宗教の一つであったという認識は正しいと思います。
極端な、凄惨な事件を起こした教団ですが、カルトというのは昔から数多く存在し、一般的な認識では、その一つであると知られています。
一般的な認識だとそうなのですが、このオウムが、密教・生命エネルギーの実践があり神秘体験を重視する団体であったという認識については、宗教や精神世界、瞑想、ヨガ、スピリチュアルの人たちにおいても、いまだに欠けていることがあるようです。
またオウムで実践されていた方法や神秘体験も、もっぱら断食や断眠、強いストレスや暗示、幻覚剤によるものという認識がなされることもあるようです。
適切な認識としては、オウムには密教、生命エネルギーの実践があり、その神秘体験も、仏教やヨガの密教的実践の伝統で語られてきたものだったというものです。
このことは否定しようがないと思われます。
これについては理解されがたいことなのかもしれません。
スピ・精神世界の界隈では「私はあるとき突然、ワンネスの一瞥体験をして覚醒しました」とか「仙道の小周天のために武息という呼吸法をやってます。眉間のツボで温養すると不思議な光が見えます」とかで騒ぐ人がいます。
しかしオウムでは、修行体系で一定以上の評価を受けた人たちの体験は、そんなレベルではなかったようです。
この「バルドーのヨガ」(3:37~)なんて、明らかにチベット密教の修行の中でも深甚なものとされる究竟次第の伝統にある実践です。
ちなみにこのバルドのヨガについて、チベット密教の簡単な解説本には以下のような説明があります。
関連note:オウム「タントラ ヴァジラヤーナの救済」
・生命エネルギーの実践(ヨガ、密教)
クンダリーニなどの生命エネルギーを重視する密教的なヨガなどの実践は以前から欧米にも伝わっています。
YouTubeでも「kundalini」で検索すると、奇妙なものも含めていろんなのがあります(ネオタントラの影響を受けた取るに足らないものもあると思われます)。
参考記事:会社を辞めて、こうなった。【第54話】 人生初!クンダリニー瞑想で変性意識の世界を垣間見る。
生命エネルギーの実践では、理論や思想的な面も含めて体系的にも整っているのはチベット密教の特に「究竟次第」に分類されるものなのではないでしょうか。
亡命したチベット仏教僧によって、マニアックな密教の実践が欧米にも紹介されるようになって久しいです。
ニンマ派のゾクチェンやカギュー派の修行に連なる瞑想リトリートに参加する欧米人も増えているようです。
チベット仏教の明晰夢を用いた修行などもあるようです。
この明晰夢についてはいろんな見解がありますが、やり過ぎると神秘体験みたいな領域に入ることもあるんじゃないかなぁと思っています。副作用もありえます。
関連記事:「ドリーム・ヨガ:夢を使った修行法」(スピリチャルでアートな日々、時々読書 NY編)
・サイケデリクス
サイケデリクスへの関心も特に欧米人の間では高まっています。精神医療、セラピーへの適用も研究されています。
「アヤワスカ」などを用いた儀式もかなり知られるようになっています。
関連する論文や書籍も増えており、英語によるものはかなりの量になっています。
ごく一部は邦訳されています。たとえば有名なのだと、、、↓↓
・DMT―精神(スピリット)の分子 ―臨死と神秘体験の生物学についての革命的な研究
・天からのダイヤモンド LSDと宇宙の心(マインド)
・幻覚剤は役に立つのか
この分野の古典ではオルダス ハクスリー『知覚の扉』でしょう。
最近のニュース記事にも↓↓
心の病治療に幻覚キノコ 豪政府承認
オーロビンドについてちょっと
インドの宗教家、ヨーガ指導者にオーロビンド・ゴーシュ(Sri Aurobindo Ghose)という人がいます。欧米では有名なようです。
このオーロビンドも相当な瞑想実践者のようで、深い体験も数多くあるようです。
「瞑想で体験したものを言葉にしたら、それが思想、哲学となった」のような内容のことを述べています。
オーロビンドはあるときヴィシュヌ・バスカー・レレというヨーガ指導者にあって瞑想指導を受けたようです。
指導された瞑想は「自らの心を見よ。そうすれば様々な想念が心に入ってくるのが分かる。それらを斥けよ」というものだったようです。
これは瞑想の種類としては、仏教の禅や、チベットのニンマ派やボン教の「ゾクチェン」に近いものなのかもしれません。
このヴィシュヌ・バスカー・レレから指導を受けたあとは、「内なる指導者に従う」として、特に指導者、グルを求めなかったようです。
瞑想による直接体験を重視したという点では、彼もグノーシス的なところがあるのかもしれません。
しかしグノーシスの「反宇宙的二元論」ということでは、それとは違ったような独特な思想が彼にはあるようです。
オーロビンドの思想は、科学ではなくて、やはり思想なのですが興味があります。
書籍『天からのダイヤモンド LSDと宇宙の心(マインド)』(ナチュラルスピリット)には、ほんとうにちょこっとオーロビンドに触れられています。