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誰もいない庭を眺めながらフルアコを弾くのが至福の時。

なんてタイトルに書くと僕がとても良い家で暮らしている富裕層みたいですけど、もちろんそんな訳ありません。我が家は普通の古いマンションです。

でもそのベランダの真ん前が大家さんのお宅の庭なのです。テニスコートの半面を更に半分にした程の広さですが都会では十分広い方だと思います。

そこにはもみじの木が植えてあり、野鳥の為の水飲み場も設置されています。

春にはすぐ傍の敷地に咲く桜の花びらが舞い散り、ピンクの絨毯の様に庭を覆い、新緑の時期には青々とした葉が生い茂り、その隙間から陽射しが注ぎ込み、秋にはもみじが真っ赤に紅葉し、冬には落ち葉がフワフワに積もります。

水飲み場には、名前の分からない様々な鳥達が、そこに溜まった雨水を飲みにやって来ます。ごく稀にホーホケキョって鳴く鳥もきます。ウグイス?ホトトギス?メジロ?

そんな素晴らしいお庭ですが、誰か人がいるのを一度も見た事がありません。使っている形跡がまるでないのです。僕はもうかれこれ15年もここで暮らしているというのに…。

なので時々やってくる野良猫達も、それを分かっているのかのんびりと伸びをして安心しきって気持ち良さそうにお昼寝しています。

僕は窓辺の椅子に座りそのお庭を眺めながら、自慢のギブソンL-5cesを膝に乗せて、小さな音でボサノバを弾きます。それが今の僕の唯一のコンサートです。観客は美しい野鳥や可愛い野良猫達ですが、今のところ彼らから演奏に関する不満の声は届いておりません。

〜本日のお勧め〜


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城南画報
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