『スイッチ 悪意の実験』潮谷験
人気の心理コンサルタントによる高報酬アルバイトの募集に応じた、大学生や職員ら計6名。課された仕事は、スマホに「スイッチ」をインストールした状態にしておくことだけで、スイッチを押しても押さなくても報酬は同じ、しかし誰か一人でもスイッチを押すと、とある家族経営パン店への資金援助が打ち切られて家族が崩壊する、そんな謎めいた心理実験の被検者となることでした。そんな何の得にもならないスイッチを押す者などいないと思っていたところに、期限間近になって誰かの手によってスイッチが押されてしまいます。しかも資金援助打ち切りどころか、予想外の殺人事件まで発生していまうのです。
自分と関係のない第三者に対する「純粋な悪」の発露はあり得るのか、と言う興味深いテーマを扱っていました。更に、今どきの新興宗教の実相が絡んで来て、要素としては面白いものが揃っていました。
当初は、純粋に人間の心理の謎に迫る話かと思って興味津々で読んでいたら、実は登場人物たちの何人かには過去の個人的な関係があったことが、徐々に明らかになって来るのです。最初の方で度々強調される人間の「純粋な悪」の話から、結局は人間関係のしがらみや愛憎の話へと帰着してしまい、甚だ拍子抜け感がありました。