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ナーガールジュナ(龍樹)と道元
ナーガールジュナの仏教理解と日本仏教
日本の仏教は、実践法で宗派が分かれているため、その相互関係がわかりにくいです。名前だけは同じ仏教でも、実際には別々の教義の宗教だと思っている方もいらっしゃるかもしれません。
日本の各宗派の教えは、古代インドのナーガールジュナ(龍樹)の仏教理解に基づいています。日本の伝統で、ナーガールジュナは「八宗の祖」と尊ばれてきました。
ナーガールジュナの仏教理解を踏まえることで、各宗派の実践ー密教や坐禅、浄土信仰が、同じ山の山頂を目指す、別々の登山道であることが見えてきます。
参考・吉村均「ナーガールジュナ(龍樹)の理解を基盤としたチベットと日本における仏教の展開」『比較思想研究』第39号(2012年)
https://www.jacp.org/wp-content/uploads/2016/03/2012_39_hikaku_12_yoshimura.pdf
ナーガールジュナの仏教理解
とはいえ、ナーガールジュナの仏教理解がどのようなものであるかを知ることは容易ではありません。
ナーガールジュナの主著『中論』はきわめて難解であり、私見では、かなり戦略的な論で、また、そこにナーガールジュナの仏教理解の全体像が描かれているわけではありません。
インドからチベットに伝えられた伝統では、ナーガールジュナの仏教理解の全体像が説かれているのは、南インドの王のために書かれた『宝行王正論』だとされてきました。
詳細な『中論』の註釈をおこなったインドのチャンドラキールティ『明句論』を読むと、その註釈の内容・姿勢から、『宝行王正論』で説かれている全体像に、『中論』の内容を位置づけることで、読解を試みていることがわかります。
ナーガールジュナと禅
禅は、釈尊が花を拈じた時に魔訶迦葉(マハーカッサパ)のみが微笑し、言葉を越えた境地が魔訶迦葉に伝わったことに始まるとされる教えで、ナーガールジュナは、インド・中国の言葉を越えた境地を受けつぎ・伝えた祖師の一人に位置づけられています。
歴代の祖師の伝記を収録した『景徳伝統録』には、ナーガールジュナがアールヤデーヴァに嗣法した時のエピソードが記されており、道元禅師は『正法眼蔵』「仏性」巻で取り上げて、ナーガールジュナと弟子のアールヤデーヴァをインド・中国の歴代の祖師でも卓越した存在であると述べています。
オンライン勉強会・ナーガールジュナ(龍樹)と日本の高僧たち(その2)
2月14日(月)から始める予定のオンライン勉強会・ナーガールジュナ(龍樹)と日本の高僧たち(その2)では、(その1)の内容を整理したうえで、ナーガールジュナの仏教理解を踏まえた道元禅師の教えの読み直しをおこないます。予定内容は、以下の通りです。
・釈尊・ナーガールジュナ・日本の高僧
・道元禅師の生涯と教え
・言葉と言葉を越えるもの
・『正法眼蔵』「仏性」巻について
・十二巻本『正法眼蔵』
関心のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご参加ください。お申込みはpassmarketを通じてで、申込期間は2022年1月25日00時~2月6日23時までとなっています。passmarketの仕様変更で、申込期間がきわめて短くなっていますので、ご注意ください。