命の洗濯
「伊勢」の存在を知ったのはいつのことだったか。
中学のとき、社会の授業で「お伊勢参り」を習ったときだろうか。
それから数年後、私は日本縦断の旅をしていた。
鈍行列車やバスを乗り継いで、ゲストハウスを転々として。
目的地は決めず、先々で知り合った人たちにおすすめを聞いて。
そしてたどりついたのが伊勢だった。
伊勢には外宮と内宮があり、外宮からお参りするものらしい。
1日目は外宮にお参りしたあと、ゲストハウスに泊まった。
内宮は朝9時でもそれなりに人がいるとのこと。
早朝は人も少なく清々しいと聞き、自転車を借り、翌朝内宮へ向かった。
まだまどろみの中にある見知らぬ土地を、自転車で駆け抜ける。
宇治橋を渡り、古木が立ち並ぶ静かな境内を進む。
正宮の手前には、悠々と流れる五十鈴川。
誰もいない川のほとりで聞こえるのは、水のせせらぎと鳥たちの声。
そして自分の息づかいだけ。
「心が洗われる」の意味を初めて知った、そんな旅だった。
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ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。