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ベルリン天使の詩

この映画を初めて見たのは高校生だったか。

陸上部を辞めて、早く帰れそうだからと映画部を選び、そこの部長はガチの映画好きだった。
家も近かったので、良く寄っては映画と無修正(なんであるのやら)を借りていた。
その中の一つ。
当時はただただ暗い映画だとだけ感じたけど、リマスターを見て細かな部分まで観て大きく印象が変わった。

先ず、タイトルが日本語ではベルリン天使の詩となっているが、原題は
Wings of desire 直訳すれば欲望の翼だ。
これはかなり映画を見るうえで重要な所なのに、どうしてそんな邦題にしたのか分からない。
なんだか安っぽい恋愛映画に見えてしまう。

そもそも私は現在の何でもCGで作られた映画が嫌いだ。全ての場所にピントが合っているような画像も嫌い。
レンズを通してその空間の光を閉じ込めたフィルムの映画が好き。
きっと色も何もかもが「本当」の物とは違ってしまうのだろうけど、完全な再現のCGよりも柔らかくて美しい。

白黒は確か小津安二郎の影響だったと思う。
淡々と生活を描く手法は、人を引き込む。
ネタバレにならない様、詳しくは書かないが白黒とカラーの対比、表と裏の対比に大きく影響している。
自分の生活でも、カラーに見えたり白黒に見えたりするものだ。そこに愛があったり、楽しかったりすればカラーだし、嫌な思い出は白黒だったり。

また、撮られた時代がベルリンの壁崩壊の直前で、西ドイツが何とも疲れていた時代を上手く写している。
戦後すぐはソ連に対抗すべく、力も注がれたが戦後が長くなり復興すると薄れる記憶の中で、どうにも世界から取り残されて行く。
そんな鬱屈した雰囲気も素晴らしい。

この映画を初めて見た時の環境が、高校生で小さなブラウン管テレビ、多分3倍録画のVHSで、細かな所や音楽まで明確ではなかったせいもあって、
左程記憶に残っていなかったが、今回4Kリマスターを見て素晴らしさを改めて感じた。

多分、ターミネーター2辺りまではまだまだ実写が多く、それ以後はどんどんCGが増えた様に思う。
ジジイの懐古主義なのかも知れないが、やはり映画は実写が良い。
そして、まあ全体的なイメージだけどヨーロッパの古い映画のセリフが難しい事を言ってる事が多い気がする。
哲学的と言うか、これはドイツだし真面目と言うか…
愛してる!の一言で終わるハリウッド映画とは大きく違う点の一つ。

古臭い映画だけど、ちょうど今と昔の間みたいな時期の映画で、テーマも深くてじっくり観る事をお勧めします。


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