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アラビア語とイスラム教を学んでみた。【ボスニア・ヘルツェゴビナ】

「聖地巡礼」をしたことがあるだろうか?

宗教上、重要な意味をもつ場所に行くこと、ではなく、
映画やアニメ、マンガの舞台や作者と縁の深い場所などを巡ること、
の方である。

私が初めて「聖地巡礼」をしたのが、
ボスニア・ヘルツェゴビナという国だ。
ユーゴスラビア出身の少女が出てくるこの小説。
大好きだった小説に、重要な国として出てくる、
かつてのユーゴスラビアだったボスニア・ヘルツェゴビナを、
20歳の私は聖地巡礼のような気持ちでどきどきしながら訪れた。

そんな軽い気持ちではじまった旅が、
私にとっての中東やイスラムのイメージを大きく変えたのだった。

ボスニア・ヘルツェゴビナの都市、モスタル。

一番のきっかけは、ボスニア・ヘルツェゴビナのモスタルという、
カトリック・セルビア正教・イスラームが交じり合った都市での出会いである。

モスク(イスラム教の礼拝堂)のおみやげ屋のおじちゃんたちと仲良くなって話をしたことだった。

モスクのおみやげさんのおじちゃんたち。

私にとって、モスクに近づいたり入ったりしたのも初めてだったため、
初めて触れるイスラームの世界が、当時はとても新鮮だったのだ。

モスタルのモスク(イスラム教の礼拝堂)

様々な宗教を信じる人が共存するモスタルという都市においては、
当時20年ほど前に紛争が激しかった場所のひとつである。
それでも、対話を続けていくことがお互いの理解へ通じるのだ
と話していたモスクのおじちゃんたちを通じて、
彼らの価値観に影響を与えた、イスラームの文化や宗教について、
より深く知ってみたいと思ったのである。

また、モスクのおじちゃんたちと話していて、
いかに自分がイスラム教やイスラム文化について知らないかを感じた。
小さいころ、アメリカ同時多発テロが新聞の大きな見出しとなったことを鮮明に覚えていたので、
自分の中でも、どこかイスラム=怖い、危ないというイメージがあった。

しかし、思い返してみれば、
高校の世界史において、ペルシャやオスマン帝国など、
イスラーム世界の広がりや文化の豊かさを学んできたが、
そこには、ニュースで見聞きするような
「危険なイスラム教」の印象はなかった。

なぜイスラム教はこんなにも「危険だ」という印象につながっているのか
そもそも「世界三大宗教」と呼ばれる「イスラーム教」について、
私は全然知らないのではないか。

旅を終えて、日本に帰国してからは、
他学部の様々なイスラーム教関連の授業をとりはじめた。

イスラム教概論をとってみた。

自分が勉強していた学部には、関連するような授業がなかったので、
シラバスを見ていき、他学部でイスラム教について深く学べるような授業を探した。
結果的には大正解で、若手の先生が教えてくれた授業は、
イスラム教や文化の基礎だけでなく、
シリアやエジプト出身の留学生がゲストとして招かれ彼らのふるさとについても色々教えてもらえる機会もあったので、
知識にとどまらない学びがあった。

シリア出身の大学院生のお兄さんと歩きながら話していた時、
「シリアは内戦で危ないイメージがあるかもしれないけれど、
もともとは遺跡も多く、とても豊かでうつくしい国だったんだよ」
と話していたことが、何年も経った今でも印象に残っている。

アラビア語の授業をとりはじめた。

イスラム教の聖典であるクルアーン(コーラン)は、アラビア語で書かれている。

大学のシラバスを読んでいて、
アラビア語の授業を見つけたので、授業をとってみよう!と、
軽い気持ちで大学の授業を受講した。

ただ、アラビア語は、私が思っている以上に難しかった。

まずアルファベットが違う。
「アリフ、バー、ター」と、アラビア語のABCの発音と文字の練習から始まった。

数字の右に書いてあるアルファベットの発音例をみると、
謎の記号で書かれていることも多い。
例えば、7番の「ka」は、日本語の「か」の発音ではなく、
「カラスの鳴き声みたいに」(←??)など、
まったく新しい口の中やのどの使い方が新鮮だった。

また、アラビア語の母音記号が4種類ある。ひえ。

そして、文章の頭、文中、文の最後で形が変わる。ひええ。

さらには、「太陽文字」と「月文字」とに分かれる。ひえええ。
28個あるアルファベットのうち、太陽文字、月文字はそれぞれ半分ずつで、前に定冠詞「أل」(英語の「the」のようなもの)がついた場合に、発音が変化するかどうかという択もある。

そして、文章は右から左へと読む。おおおおお。

アラビア語のあいさつ「アッサラームアライクム」


とこれまで紹介したように、
アラビア語は、とても興味深いものの、かなり難易度の高い言語であった。
アラビア語と日本語は習得の難易度が高い言語だとよく言われるが、
こう思うと、日本語を勉強しようと考えたとき、
ひらがな50文字・カタカナ50文字・漢字何千文字と、
単純な文字の多さや変化の多様さは、すさまじいものがあると思う。

ただ、その後、
アラビア語を簡単にでも学んでおいてよかったと思うことは多かった

ロンドンのアルバイトでバングラデシュ人と働くときに、
あいさつをアラビア語でできたことで、彼らと仲良くなるきっかけとなり、キッチンで働く彼らに色々おまけのごはんをもらっていた。

モロッコをバックパックで旅行した際や、
アフガニスタン出身の難民の方など、
アラビア文字を使う地域の人たちと話すときに、
「アラビア語を勉強したよ!」とアラビア語のABCを言ってみると、
喜んでくれることも多かった。

(モロッコのおじちゃんとアラビア語について話したときは、
その後、「じゃあこの文字はなんだ?」と、
非常に読みにくい+自分も記憶があいまいなアラビア文字のテストが始まって困った…)

世界で2番目に人口の多い宗教である、イスラム教。
今後は人口がさらに増え、ゆくゆくは1番多い宗教になるとも言われている。

お気に入りの小説からの「聖地巡礼」をきっかけにした、
イスラム教やイスラム文化への興味は、私の考え方を大きく広げてくれた。

いつかは、メッカに「聖地巡礼」をした人とも話してみたいし、
彼らの背景を知る努力を忘れず、尊重しながら、
それぞれの人と向き合っていきたい。

参考文献

東京外国語大学「太陽文字と月文字」
http://www.tufs.ac.jp/common/fs/asw/ara/arabic/imlaa/7uruf_shamsiyah_qamariyah.htm

九州大学「アラビア語への挑戦:アラビア文字」https://guides.lib.kyushu-u.ac.jp/arabic/alphabet

Agata's Homepage「アラビア語」http://aagata.ciao.jp/arabiago/assalaam/index.html

Digima「イスラム教における「ハッジ(巡礼)」とは!?」https://www.digima-japan.com/column/life/2876.html

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