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あの頃の「気まずさ」って|早朝始発の殺風景

振り返ってみれば、高校生の頃に感じていた気持ちは確かに「気まずさ」が多かったのかもしれない、なんて思う。

「友達」と呼ぶべきか迷う「クラスメイト」の存在
乗り切れない提案を断り損ねて過ごす休日
誰にも話すことが出来なかった本当の気持ち
ありのままより演じている状態が板についてしまった教室
友達の意見に「No」を表明する、あの時間

ドラマ『早朝始発の殺風景』では毎話、この言葉が出てくる。
「青春は気まずさでできた密室だ」

WOWOW放送だったため観たくても観られなかったのですが、ついに他のサブスクでも観られるようになりました。30分×6話、ほぼ1話完結の観やすい構成です。
『氷菓』みたい、という表現でピンとくるひとはピンとくるかなと思います。日常のちょっとしたミステリーという感じ。高校生たちが互いの言動の違和感から真相に辿り着き、閉じ込められた気まずさから脱出する物語。


第1話はタイトルと同じく『早朝始発の殺風景』。
なぜ加藤木くん(奥平大兼)は早朝5時35分の始発電車に乗ったのか。なぜその車両に同じクラスの殺風景(山田杏奈)も乗っていたのか。2人がそれぞれ始発電車に乗っている目的は一体何なのか。
互いのスマホを交換し、ヒントを得て辿り着いた真相は最終話『啄木町の七不思議』へと繋がっていく。決して「善」とは呼べないであろうラストが、わたしは結構好きだった。ドラマとしては攻めた終わりだな、と思った。

第2話『メロンソーダ・ファクトリー』は女子高生3人がクラスTシャツのデザインについて放課後のファミレスで話し合う物語。個人的に1番身に覚えのある気まずさが描かれていたのはこの話だった。
たとえ仲良しの友人の案だったとしても「もう1つのデザインの方が良いと思う…」と言う勇気。そしてそれを言われてしまった真田(吉川愛)の気持ち。「どうしてそう思うの?」と深掘りしていくことで見えてくる、友人の真実。

第3話『夢の国には観覧車がない』のタイトルバックには観覧車が映っている。どういうことだろうと思って観ていれば、なるほど、伊鳥(望月歩)は先輩を観覧車に乗せたかった、いや、乗せる必要があったのか、ということがだんだん分かってくる。だから他の部員からのディズニーランドに行きたいという意見を却下して、観覧車のある遊園地を先輩の引退記念イベントの場に選んだのか。では何故、観覧車に乗せる必要があったのか。観覧車に乗ることで、何が起きる?

第4話『捨て猫と兄妹喧嘩』では、高橋ひかる×萩原利久、第5話『三月四日、午後二時半の密室』では、茅島みずき×藤野涼子、と出演している俳優陣もとても好みだった。


あの頃の「気まずさ」を振り返れるほどにわたしは大人になった。
振り返ってもまだ「あの時は辛かったな」と思うことはあるけれど「いまでも辛い」はあまり無い。どうでも良いかと受け流せるようにもなったし、時間が解決してくれることもきっとある。
「あの頃は気まずかったな」が、良い思い出とまでは言わないまでも、苦い思い出として形を変えていたりもする。もうきっと味わえない気持ちもあるので、高校生特有の気まずさというのが存在するんだろうな。そう考えると、ほんの少し、微笑ましいものなのかもしれない。

山田杏奈ちゃんファンとしては、自分の好きな山田杏奈要素がめいいっぱい詰め込まれている1話とオフショットで構成されているEDが最高でした。いや、だってさ、殺風景に会えるなら始発にだって乗っちゃうわよ。
力強くて魅力的な真っ直ぐな目に見つめられながら「やっぱり合わないみたい」なんて言われたら、セリフとは裏腹にドキドキしてしちゃうのは仕方のないことでしょう。

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大麦こむぎ
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