これぞ星野源の”初期衝動”
清々しい程の生々しさを感じるエッセイだった。
星野源の初エッセイ集『そして生活はつづく』。
2作目のエッセイ集『働く男』は以前読んでいて、その時には好きな言葉、覚えておきたい言葉が山のようにあったんですよね。
たとえば、、
才能があるからやるのではなく、
才能がないからやる、という選択肢があってもいいじゃないか。
そう思います。
いつか、才能のないものが、面白いものを創り出せたら、
そうなったら、才能のない、俺の勝ちだ。
(星野源『働く男』文春文庫 p19 書く男 )
「みんなが嫌いなものでも好きなら好きと言おう」というメッセージの曲はたくさんあるけど、「みんなが好きなものでも堂々と好きと言おう」という曲はほとんどないと思います。「みんなが好きだって言うから、嫌いになる」という人はとても多い。僕はそれをとても愚かなことだと思っています。
(星野源『働く男』文春文庫 p172 『エピソード』日常 )
作家であり、音楽家であり、俳優である星野源が紡ぐ言葉たちはどれもこれも説得力があった。胸に刻み込みたい言葉の数々に、より一層星野源のことを好きになった。
では『そして生活はつづく』はどうだったかというと、タイトルにも書いた通り、感じたのは星野源の初期衝動だった。
星野源の根っこの部分をこれでもかと感じられる。
一気に星野源を身近な存在に感じられるエッセイだ。
覚えておきたい言葉というよりも、エピソードごとまるっと覚えてしまうような、そんな印象。
文章も面白かったし、星野源という人物が面白い!
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料金支払いはつづく
携帯料金の支払いを忘れてしまうという話。
口座振替を何故嫌っているのか。
何故支払いを忘れてしまうのか。
紅白歌手も支払い忘れたり滞納したりってあるんだなあ、と思わず口元が緩んでしまう。再請求書で支払いをした後、本来の請求書が出てきた時に「あれ、これ払ったよね?」ってなる感じわたしも経験あるなあ。
やはり、どんな高い物でもカードでは「金を払った感じ」がしないし、逆に現金で払わないと、その「高価な物を買う重要性」を体で味わえない。高い物を買うときにはそれなりに覚悟したい。
(p13)
この感覚って大事だよなあ。
高価な物だからこそカードで支払ってしまいがちだけど、カードで支払う時ってやっぱりどうしても現金と比べるとあんまりお金を使った実感が無いもんなあ。
そして文庫版あとがきでは、こうなってました。
僕の状況もすっかり変わりました。
まず、クレジットカード作ったよね。
いやー超便利っすねクレカ!
(p202)
生活はつづく
人は生まれてから死ぬまでずっと生活の中にいる。赤ちゃんとして生まれてから、やがて年老いて死ぬまで生活から逃れることはできない。誰だってそうだ。
(p25)
生活が嫌いだった、と星野源は書いている。
え、あれだけ日常的な歌を歌っているのに?と驚いたけれど、だからこそ、なのかもしれない。淡々とやらなきゃいけない毎日の生活を疎かにしてはいけない。どうせ毎日しなくちゃいけないのなら、楽しんだもん勝ちだよね。
このエッセイのテーマは「つまらない毎日の生活をおもしろがること」だ。楽しんだもん勝ち、って良い言葉だよね。とても好き。
連載はつづく
このエッセイの中で一番記憶に残るエピソード!
マンション内のコインランドリーで乾燥機を使用した星野源が、2時間後に乾燥機の扉を開けると自分の服の中にたくさんのブラジャーが入っていたという話。
…いや、うん、さすが、星野源。
これはあまりにも面白かったので是非読んでほしい。
子育てはつづく
星野源の母「ようこちゃん」の話。
なんというか、わたしの母に非常によく似ている。
「源は、宇宙から落ちてきた星の王子様なの」
(p45)
子供の頃にそう言われて信じたという星野源。
…わ、分かるなあ。
子供の時、ベランダで星を見ている時に隣に母がきた。
「おかーさん、星が綺麗だよ」
「…わたしはお母さんじゃないのよ」
「…え?」
「似ているけど別人なの。あなたのお母さんは、ほら、あそこに光るお星様なのよ」
「…お、おか〜さ〜ん!!」
と大泣きするわたしを見て母は大笑いしたのだ。
酷い。いま思い返しても酷すぎる。
ああ、子供時代のわたしをぎゅっと抱き締めてあげたい!
そんな母とのエピソード、こちらも是非。
たまたまだけど、こっちも星関係ですね。
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生活はつづく。生きている限り。
毎日24時間、今日も明日も明後日も来年も。
どうせならやっぱり楽しく生活がしたい。
noteで知らない人の生活を読むのがとっても好きだ。
朝の過ごし方、その日一日誰とどんな会話をしたのか、何を食べてどう感じたのか、どこに行って何を見たのか。
生活を楽しんでいるのが伝わってくる文章が好きだ。
自分ではエッセイを書くのが苦手だけど、少しずつでも言葉にしていけたらなあ。毎日の生活を楽しんでいきたいなあ。
そうだ。書き忘れたけどこのエッセイ下ネタも多いです。
だって、ほら、星野源だからさ。