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Photo by
saltcaramel
ミョウガとオロナミンC
私の祖母の家は、決して立派ではなく、マッチ箱に青い屋根を付けたような家だった。
そのマッチ箱の家の縁側に小さな冷蔵庫が置いてあった。中には、オロナミンCだけがいつも冷えていた。
祖母が私が来るのに合わせて冷やしておいてくれたのであろう。
小学生の私が足を踏み入れるだけでミシミシと崩れそうな音を立てるその縁側に腰掛け、オロナミンCを飲みながら小さな庭を眺める。
そこはきれいに整えられているわけではないけれど、名前のわからない木々と東洋蘭とミョウガが育っていた。
子どもの私には、ミョウガの良さもわからなければ、東洋蘭?なにそれ?状態なので、なんてことのない庭だった。
成人して祖母の家に行った際、庭のミョウガをたくさんもらって酢漬けにした。
何故だかミョウガの薬味ならではのちょっとクセのある後味、でも次第に広がるさっぱり感が大好きになっていた。
その夏は、死ぬほどミョウガを食べた。
もう祖母の家はあの場所に無くて、オロナミンCが入っている小さな冷蔵庫も、壊れそうな縁側も、膨大に生えているミョウガも無いけれど、夏が本気を出してくる頃、いつも思い出す。
そう、今日からもう8月。
あぁ、何も進まないなぁ思いながら、ミョウガをかじる。