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介護保険制度について

■介護保険制度の成り立ち

2000年4月から始まった制度になります。
介護が必要になった高齢者を社会全体で支えましょう!という目的でスタートして、もう24年目になるんですね。

制度を作って終わりではなく、3年毎に見直しされることになっています。ちみなに医療保険制度は、2年毎に見直されています。

■介護保険制度の見直しポイント

  • 国や市区町村の財政状況

  • 介護事業者の収支状況

  • 実際に介護保険を活用している高齢者のサービス利用内容

上記を鑑みて、3年毎に制度の見直しが図られています。

■介護保険制度の課題

制度設立から24年が経過して、制度自体の課題も見えてきました。
それは、

介護を必要している高齢者の増加→財源の不足
介護を担う働き手の不足→介護人材の不足

制度の課題を解決するため、介護保険法が改定されました。

■介護保険法改定

2021年に改正されました。
内容は、「地域共生社会の実現」が明記されました。

地域共生社会とは??

子ども、高齢者、障がい者など全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる社会。

残念ながら現状では、地域共生社会が実現されていない。ということになります。この地域共生社会が必要とされている背景とはどのようなものでしょうか?

具体的には、
大人が担うと想定される家事や家族の世話を子どもが行っている、ヤングケアラー問題。子育てと介護が同時期に発生するダブルケア問題。介護と仕事の両立で悩むビジネスケアラー問題。50代の引きこもりの子どもを80代の親が面倒を見るという8050問題など。

これらが、複雑に絡み合って複数の課題となり課題の複合化になっています。介護保険制度のみでの解決が困難なことから、2021年の介護法改正で、「地域共生社会」が明記されました。

取組みとして、
市町村が高齢、障害、子ども、生活困窮制度ごとの縦割りを超えて包括的に住民ニーズに関わる相談支援の仕組みが設けられました。つまり、属性や世代を問わず相談ができる仕組みに変わりました。

この仕組みは、「重層的支援体制整備事業」といって、事業実施の際には国が財政支援を行うことになっています。
出典:厚生労働省「地域共生社会」の実現にむけて

■2024年~介護保険制度の改定


3年毎の改定になるので、2024年に介護報酬が改定されました。
ポイントは4つになります。

1.地域包括システムの深化と推進
地域包括ケアシステムとは??

介護が必要な方が介護や医療のサービスを受けながら、住み慣れた地域で生活できるシステムをいいます。

地域と言っても都市部と地方ではだいぶ前提条件や実情が異なるため、実態に応じた取り組みを推進し、システムを構築していくことが必要です。

2040 年にピークを迎えると言われる高齢者人口。
それに伴い、認知症の方や単身で生活されている高齢者、医療ニーズの高い高齢者の数もどんどん増加していくため、高齢者を地域で支えるための地域包括ケアシステムをさらに深化・推進させていくことが求められます。

他にも、感染症や自然災害などが発生した場合にも、介護サービスが継続的に供給できる体制の構築についても示されています。

2.自立支援、重度化防止に向けた対応
自立支援や介護の重度化を防止するための取り組みです。
介護が必要になってもその方の尊厳を守り、持っている能力に応じた生活が継続できるように必要なサービスを提供することが必要とされています。

リハビリテーション、口腔、栄養などに一体的に取り組んだ場合の加算や、LIFE による質の高い科学的介護の推進が評価されます。LIFEについては後ほど説明します。

3.良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい環境作り
人手不足は他業界と同様、介護の現場でも人手が不足しています。
直近の2025年問題、いわゆる団塊の世代が75際以上になる時、介護人材は 215 万人の見込みなのに対して、介護が必要となる方々が253万人。
約38万人介護人材が不足するとされています。

介護施設の運営者は、人材不足の打開策を真剣に考える必要があります。
厚生労働省「介護人材確保対策」(参考資料)

良質な介護サービスを維持し介護者が働きやすい環境を整備していくことも重要な課題です。介護職員の処遇の見直しや、業務を効率化させて働きやすい環境を生み出すためのICT等テクノロジーの推進を通した人材確保対策が求められています。

4.制度の安定性、持続可能性の確保
介護ニーズが増大する中で、介護保険制度の安定性と持続可能性を確保する取組が、引き続き必要であることが明記されています。
参考:厚生労働省 介護保険改定に向けた基本的な視点

■2024年~介護報酬改定

介護護サービス事業者の報酬改定も3年毎に実施され、改正のポイントが示されます。

1.財務諸表の公表義務化
財務諸表とは??

1年間の企業の財務状況を報告する決算書類です。介護事業所の運営において、お金の出入りやどれくらいの儲けがあるかなどが財務諸表でわかります。2024年以前は社会福祉法人や障害福祉事業者のみが公表義務がありましたが、今後は全ての介護事業者が対象となります。
定期的に都道府県知事に届けなければなりません。もし怠った場合には指定の取消や業務停止が課せられる可能性もあります。

2.科学的介護情報システム「LIFE」の活用
LIFE(科学的介護情報システム)とは??

ご利用者の状態・ケアの計画・ケアの内容などを一定の様式で入力すると厚生労働省に送信されるシステムです。送信された内容が分析後、現場にフィードバックされる仕組みです。

フィードバックされたデータは、現場でご利用者のケアの向上のために利用できるほか、全国から収集できる大規模なデータは国の施策などにも活用されます。2021年度の改正でもLIFEの活用等が要件となる加算が創設されましたが、さらなる推進を目指して対象サービスや加算の見直しが行われます。

3.介護予防支援が居宅介護支援事業所に指定を拡大
地域包括支援センターの役割の一つである介護予防ケアマネジメント。
要支援1・2と認定された方のケアプランの作成など、さまざまな支援を行いますが地域包括支援センターの業務の中で大きな負担になっています。そのため、多くのケースが地域包括支援センターでの契約後に居宅介護支援事業所に委託されているのが現状です。

今回の改正では、居宅介護支援事業者も市町村からの指定を受けることにより、介護予防支援を直接受注できるように変更され、地域包括支援センターの業務負担の軽減が図られることになります。

■要支援、ケアプラン、ケアマネージャーとは?

・要支援とは??
介護の必要程度を7区分して、「要支援1・2」は、日常生活を営むのに支障あると見込まれる状態。
「要介護1~5」は、継続して常時介護を必要とする状態。
数値、介護度は比例します。

・ケアプランとは??
介護サービス計画書ともいわれ、自宅で介護のサービスを受ける場合も施設でサービス利用する場合もこの計画書に基づいてサービスが提供されます。
だれがケアプランを作成しているかというと、ケアマネージャー(介護支援専門員)が作成します。
作成するにあたり、利用者の心身の状態、ご本人やご家族の要望をヒアリングし、どのような状態がゴールになるのか?目標を定めて適切なサービスが提供できるようにします。

・ケアマネージャーとは??
医療、福祉、介護の現場で5年以上かつ900日以上の実務経験のある有資格者が、試験に合格して取得できる資格です。2020年70万人超の人が合格しています。
地域包括支援センターとは??市町村により設置された地域住民・高齢者の総合的な相談・サービスの拠点です。高齢福祉の窓口で、地域に住む高齢者の様々な問題に対応するため、保健、医療、介護の専門職が配置されています。

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