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クウネルが好きだった。

TBSの火曜ドラマ「おー!マイ・ボス 恋は別冊で」を見ていたら、硬派な企画で勝負しようとする編集部員たちに対して、新しくきた編集長が言った。「売れない雑誌を作ってもだめ。雑誌はビジネスよ」(記憶はあいまいだけど、だいたいこんな意図)

それで思い出したのが、昔の「クウネル」。他の女性誌とは一線を画す独特の雰囲気で、乙女な文学系女子のハートに響いた。コンセプトは、ストーリーのあるモノと暮らし。商業くささがなく、悪く言えば地味だったけれど、大事に大事にとっておきたいと思う雑誌だった。消費欲は喚起しないと思うけど、広告じゃないんだから、それでいいのではないのかしらね。世界の市井の人々に目を向け、サスティナブルで、SDGsを先取りしてたと思う。

2003年の創刊号の特集は「週末の過ごしかた。」。寄り添うロシア人の老夫婦が表紙。キャピキャピとした要素は一切なく、乙女な文化系女子の琴線に触れる内容とデザイン。「これ好き〜!」といっぺんで愛読者になった。

紹介されていたのはロシアの週末の田舎の家「ダーチャ」。ロシア人の笑顔から素朴だけど豊かな暮らしが伝わってくる。他にも「郷土料理の旅 おはぎとぼたもち。」「大人のためのリリアン編み。」「写真家・武田花が語る 母・百合子と富士山荘の思い出。」どれも滋味深く、知ってよかったと思うことを、叙情的な写真とともに教えてくれた。読者のお弁当コーナーも好きだったなぁ。地に足がついててほっとした。消費されない世界だった。

私の周りには「クウネル」ファンが多くて、今でも、かつての「クウネル」を惜しんでいる。「クウネル」が好きだったという人とは、もれなく気があう。

リニューアルした「クウネル」は、華やかでちょっとお金持ちをターゲットにした雑誌になった。全然別物だ。期待して手にとったとき、軽くショックを受けた。「世の中、結局金か」って。

今の「クウネル」もいい雑誌だと思うし、パリも好きだけど、昔の「クウネル」が好き過ぎるあまり、買うもんかとなった。なんで「クウネル」の誌名を使ったのかなぁ。旧「クウネル」読者は買わないだろうに。

SDGsのムーブメントがもっと盛り上がったら、昔の「クウネル」の世界観を好む層がマジョリティになっていくのかしら。そしたらまた、世界中の長持ちする素敵なものを教えてくれる雑誌ができたらいい。(むしろ作りたい)

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