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イタリア滞在記(16) チェファルからタオルミーナへ
チェファルでの4週間はアパートで独り暮らし気分とは言え、毎日学校に行って仲間と会って、Decòのサルメリアには大家さんのSalvatoreがいる。ピッツェリアに行けばKirstenとも会える。こうしてなんとなくゆるーい繋がりの中で心地よく過ごした。
でも、これからは本当に一人旅。ここ10数年イタリア一人旅は毎年恒例になっていたけれど、ここはシチリア。交通の便がローマ以北のイタリアとは事情が違う。
これまでイタリア国内の移動は鉄道を好んで利用していた。けれども、日本出発前に色々情報を見ていると、シチリアは鉄道網がまるで駄目で、バスの方が圧倒的に便利という。タオルミーナに鉄道駅はあるけれど、中心街からは随分離れている様子。とにかく重い荷物を持って移動するのに少しでも楽な方法ということで、タオルミーナへはバスで入ることに決めた。
先ずはチェファルからメッシーナまで鉄道を利用。メッシーナと言えば、本土から電車の車両を乗せたフェリーが着く駅。この光景も見てみたいなぁと思っていたけれど、重い荷物を引きずってそんな余裕はない。
20Kgを越えるスーツケースと大き目のバッグに、貴重品を入れた小さめのバッグ。この3点。色々購買欲を刺激されても、とにかく身軽に!と自分自身に言い聞かせてきたのに、何故かやっぱり重い。学校での教材、購入した本など、やはり紙類は重くなる。
メッシーナ駅は大きく、幸いエレベーターもあったから、スーツケースを持って階段を上り下りするという拷問は免れた。
”駅のすぐそばのロータリーからInterbusに乗る”ためにオフィスでチケットを買う。。はずだったのが、なんとオフィスが閉まっている!それらしきバスも止まっていない。本当にここでいいのか不安がよぎる。隣のオフィスのドアが解放されていて一人女性が見えたので、渡りに船!と尋ねると、チケットはこの先のバールで売っていると教えてくれた。お礼を言って、ガタガタの石畳の上をスーツケースを引きずってバールへ向かう。イタリアでは歩道と車道の段差が、なんでこんなに!と思うほど大きく、スロープなんてない。たまにあっても、無理やりとってつけたかのような50度程の傾斜で、笑うしかない。バリアフリーの概念はないのかなぁ。
バールの外ではちょっと怖そうなおじさんたちが煙草を吸ってたむろしている。もはやスーツケースは店外に放置したいほど足手まといだけれど、やっぱり自分の荷物は自分で責任を持って!と、ここも歩道から中へ入る段差に泣かされながら店内へ。
中に入るとカウンターの中の人は忙しそうに動き回っていて、声をかけるタイミングをつかめない。仲間でコーヒーを飲んでいる若い男性グループも、なんだかちょっと怖そうだし… 大体なんで平日の昼間にこんなとこでたむろしているのかも不思議…
意を決して、「タオルミーナへ行くんだけど、バスのチケットはここで買える?」と聞いてみた。
そしたら、「ここで大丈夫だよ!」と言う。そして更に、「ちょっと待って、念のために確認してみるから」と言って、カウンターの中の人に聞いてくれた。なんだ、優しい。大きな声で、仲間内でシチリア訛りを交えて機関銃のように話していたから気おくれしたけれど、親切な人達で良かった。
やっとのことでバスのチケットを入手して、バスが来るであろうと思われる場所(何の表示もない)に移動する。しばらく待つとバスが到着。タオルミーナに行くことを確認して、乗り込む。と、その前にスーツケースをバスの車体の底にあるスペースに自分で乗せ込む必要が… 日本のようにバス会社の人が手伝ってくれるなんて親切なサービスは、ない。
中腰になって、気合入れて、四苦八苦して、やっとのことでなんとかスーツケースを乗せ込むことができた。しかし、これから始まるシチリア東部の旅、移動はすべてバス頼み。大丈夫か?と少しばかり不安な滑り出しだった。