ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ ネタバレあり感想
ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ ネタバレ感想
3作目となる今作「ナイスデイズ」は、文句なしの最高傑作だった。
バージョンアップしていると感じた点は大きく分けて3つ。
①役者
まず池松壮亮の演技が凄まじい。静と動の使い分けが恐怖で、でも違和感なくグラデーションになっている。"いきなり怒鳴る人"にみえて、その人にはその人の中の明確な信念と理論がある。生き様、集大成をすべて見せつけてくるような脅迫感。
その池松壮亮のアクションが、序盤から出てきて心臓が震えた。ラスボス的な形で温存されるのかと思いきや、彼とのアクションは何度も、繰り返し出てくる。その度に、ちさとやまひろが殺されるのではないかとの恐怖で目を離したくなる。話のスジからして終盤まで主要キャラが死ぬようなことはないだろうと分かっていても、池松壮亮のホンモノ感がそれを超えてくる。
印象的なのは、床に落ちた銃か、ハンカチか選ばせるシーン。序盤のまひろに冬村かえで(池松壮亮)が施しを与えるシーンでは、ちさとに助け出されたまひろがハンカチを握っていることから、ハンカチを選んだのだと分かる。
対象となる終盤のシーンでは、まひろがハンカチを握っていることから、冬村は銃を選んだのだと分かる。
撃った後、「やっぱそうだよね〜」とまひろは呟く。冬村がもしハンカチを選んでいたら、まひろは殺さなかったのかは気になるところ。
初登場の前田敦子、いつメンの水石亜飛夢、中井友望もキャラが光っていた。前田敦子は声が特徴的なので、キツめのキャラはかなり合うと思う。AKB時代にMVで喧嘩してた時も、あの声がかなり好きだったな。何回かMVで喧嘩してた気がする。
②映像
ロケ地とスケールが圧倒的にパワーアップしている。髙石あかりの地元でもある宮崎の美しい景色と、高級ホテル、空から撮影した奥行きのある最終ラウンド。宮崎県に行ってみたくなった。
1、2、ドラマ版は、日常と生活の中で殺しが息づいているようなほのぼのした映像で、閉塞感すらも心地よさがあったが、今回は圧倒的に"劇場映画"感がある。
でもやっぱり最後には食事シーンで締めるのがベビわるらしさだ。焼肉屋、絡み酒の先輩、お祝いのショートケーキ。ショートケーキは1にも出てきた気がする。顔のいい女2人とショートケーキの組み合わせ、大好き。
③友情
ちさととまひろの友情は引き続き描かれるが、今回はまた違った深さがあって良かった。
基本的にこの2人は緊張感がなくて、切迫した状況でもヘラヘラしている。それが良さなのだが、今回初めてまひろが死を意識した。
2ベイビーのときの「わたしに賭けろ、杉本ちさと」と言い切った自信は今回のまひろには無くて、「あっちでも遊んで」と別れに近い言葉を告げる。「そんな約束わたしはしないよ」と返すちさとがカッコよくて、沁みる。
前半のヘラヘラ日常シーンでは、普段とは逆に、まひろがちさとのストッパー役だった。バイトもできないコミュ力もないまひろをちさとが支えている日常とは違って、前田敦子に何度もキレそうになるちさとをまひろが抑える。
3作目ともなると、2人の人間性が深く見えてきて、そういうバランス感もリアリティをもって見えてくるのがいい。
最後に、前回、前々回、ドラマ版に共通したベビわるの好きなところ。
①主役2人
とにかく、髙石あかりと伊澤彩織のルックスが良い。キャラも良い。印象の違う美形が2人で、2人並んだ時のバランスがいい。実際の年齢差はあるものの、息ぴったりで見ていて心地がいい。
さらにいえば服もオシャレ。バンtやらレモン牛乳やらジャージやら、ゆるっとした服を自然に着こなして、カッコいい銃を携えている。あまりにも見た目が好きすぎて、この2人になら殺されてもギリ愛しさが勝つ。
②音楽
2人が歌っている挿入歌もいいし、2作目edの新しい学校のリーダーズ、今作edの女王蜂、全てが良い。
何よりも好きなのがドラマ版のedであるTeleの「包帯」。「君からする死の匂いは、焼きたてのパンに少し似て〜」から始まる、穏やかでメロウで、愛情が切ないほど詰められた曲。Teleは元々好きなんだけど、個人的にはこの曲が現状の最高傑作だと思う。
③日常感
殺しのシーンがある分、この作品は日常感、特に食事シーンを大事に作られている。ドラマ版でも毎度出てくる。命をてにかけた後のふたりの緊張感のなさに、半分ドン引き、半分ホッコリする。この奇妙なバランス感覚がベビわるの圧倒的個性だと思う。
あまりにも際立っているから、漫画原作の作品だと思ったら、映画オリジナル作品だった。監督はまさかの28歳。若き才能への嫉妬で死にたくなる。
集大成感が出てたけど、ファンとしては4作目も出して欲しくて仕方ない。ちさとが記憶喪失気味?なのも気になるところだし、それをフックとして次回作を作ってほしいと切に願う。