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樹木と人 そのかかわり
突然ですが、エネルギーってなんでしょう?
辞書にあたれば仕事をする能力、活力、精力、動力etc. さらに調べると、 ドイツから伝わった外来語とありましたが、身近な概念のわりに日本語(漢字)に置き換えられることがなかった不思議な言葉です。
文化や文明が加速して進み続けている現代では、化石エネルギー、原子力、再生可能エネルギー等、様々なエネルギー資源を混合して使っていますが、実に数千年にわたって、木材はほぼ唯一のエネルギー源として使われていました。
火を起こして暖を取り、調理をし、道具を作り、住居を建てる。非常に長い間、人は木材に依存した生活を送っていました。
古き良き時代を偲び、森の豊かな地域において、人は森と調和して暮らしていたに違いない、と思いたいところですが、実際は生活・繁栄のために、資材として、燃料として、森林資源を搾取・略奪し続けていたのです。
樹木の伐採は一瞬ですが、その成長には数世代というほどの長い時間がかかります。そのため、資源を使いつくし回復できないまま荒廃した街、移転を余儀なくされた街、資源を利用するだけ利用した後捨て去られた街等、色々あったようです。
地中海地域のようなかつての古代都市においても木造建築は行われていましたが、森林資源の枯渇が石造建築へと移り変わるきっかけのひとつとなったようです。
一方、このような木材依存の状況においては、木材の不足が行き過ぎた経済や人口の成長に歯止めをかけ、社会を安定させるという皮肉な一面もあったそうです。
また、中世ヨーロッパでは疫病(ペスト)の流行や、宗教紛争(三十年戦争)といった戦乱による社会的な荒廃が、森にとっての回復期ともなりました。
こういった視点からヨーロッパの街や歴史を眺めると、また違ったことが見えてきそうで、何だかワクワクしてきます。
木質資源って文明や生活を支える重要な要素だったんですね。
自分にとって、歴史において人々が木材を探し求めたり、奪い合ったりするというイメージは今まで全くありませんでした。
今回はここまでですが、次は、生活環境や経済に及ぼした影響など、ギルドや工房などが発達した中世の森林資源の利用について読み進めていこうと思います。
参考文献:
木材と文明 ヨーロッパは木材の文明だった
ヨアヒム・ラートカウ 著
第一章 歴史への木こり道
2021年12月22日 冬至