小説「狼の幸せ」著・パオロ・コニェッティ 読書感想文
あまりに暑いので、雪山が舞台の本を読んでしまいました。
ちなみに私は山より海派です。
どちらかというと、山は苦手。
見るだけで、人生の壁を感じてしまうのです。
「これより向こうへは行けませんよ」
と言われている気がして。
主人公であるイタリア人ファウストは、フォンターナ・フレッダという山にあるレストランで料理人の真似事をしている。
山へ来る前は都会で小説家として活動をしていた。
ロマンチストで傷つきやすく40歳にしてなお「成長ごっこ」がやめられないファウストはパートナーに愛想を尽かされ、いつしか小説も書かなくなる。
ファウストは山へ向かい、物語ではなく山で働く人たちの決まった献立を作る。
一緒に働く26歳のシルヴィアは、そんな彼と情事を重ねるようになる。
ファウストへのプレゼントに富嶽三十六景の画集を用意する粋で乙なサブカル女子であるシルヴィアだが、彼の纏う気配が一過性のものであり、また、頼りないものであることに徐々に気づき始めている。
二人はそれぞれに雪山の厳しさへと身を投じる。
シルヴィアが経験から心の成長を見せるのに比べ、ファウストのそれは伸びも縮みもしない。
人はそう変わることはない。
年を取ればなおさら。
本人にその気がなければ特に。
氷が解け、やがてまた凍るように。
やっぱり私は山も雪も好きになれないなあ。
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