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得意先とともに酒を「育てる」|私と麒麟山:常務取締役 漆原典和さん編 前編

麒麟山酒造の“米づくりから酒づくりまで”の過程に携わっている方々にインタビューする「私と麒麟山」。第4回目は、麒麟山酒造 常務取締役の漆原典和さんよりお話を伺いました。 

こんにちは、麒麟山米づくり大学1期生のあさです。

日本酒がすき!という素朴な理由から入学を決意した2月下旬、入学手続き完了とともに米づくり大学広報部への案内をいただき、現在、受講生でありながら広報企画にも関わらせていただいています。

今回は、麒麟山酒造 常務取締役 漆原典和さんにインタビューをさせていただきました。前編では、常務取締役としての漆原さん、後半では漆原さん個人の魅力に迫ります。

麒麟山/常浪川を望む場所でインタビューしました。

「自らの言動」で伝える営業

――本日はよろしくお願いします。漆原さんの現在のお仕事内容を教えてください。

漆原さん:常務取締役として会社全体を見ながら、営業の総括をしています。営業の総括としては営業方針の方向性の確認や案件の判断などがウエイトを占めています。常務としては社外との折衝、社員教育やリクルートなどにも取り組んでいます。 

――入社以来、ずっと営業に携わられていらっしゃいますか?

漆原さん:いえ、入社してから1年間は酒造りをしていました。21歳から25歳まで県内のある酒造会社に勤め、その後は家業の酒屋を継ぎましたが何か満たされず…自分のやりたいことはこれじゃないと感じていたんです。そんなとき、酒屋仲間が斎藤社長を紹介してくれて、これからの酒造の在り方や地元での取り組みなど、社長の考えに共感し直ぐに入社の意志を決めました。今年で入社16年目です。 

――お仕事をする上で、大切にしていることを教えてください。

漆原さん:一番は顧客の満足度でしょうか。それがなければ麒麟山を飲んでもらえません。当たり前のことですが、自分が酒屋をやっていた経験からも、商売は顧客のためにならないと絶対成り立たないのですよね。飲み手の集まる場所で「酒」がどのように飲まれているかを観察し、話してみてニーズやシーンなどを聞き出していました。まぁとにかく「人」に会うために飲みに出ていましたね。(笑)

――営業の仕事をする上で、大切にしていることについてはいかがですか?

漆原さん:生産本部がしっかり造ってくれた酒の魅力をお客様に伝えることです。中でも、地域での米づくりから酒造りまでたずさわってくれる人たちの想いを、お客様に伝えることがいちばん大切だと思います。自分の言動で酒の魅力を表現できるのが、営業という仕事ですね。自分がまず楽しく飲んで、自分が麒麟山に関わって楽しいことを表現したい。だから、会社の愚痴とかも外で言っちゃだめですよね(笑)

得意先と共に酒を「育てる」

――『得意先と自分たちは同志だ』という表現がありましたが、同じくする志とはどんなものでしょうか?

漆原さん:協働して、顧客に酒の魅力を伝えていくことですね。モノ(酒)だけじゃなくてバックボーン(物語)も。味見すれば、日本酒はそれぞれみんな美味しいんですよ。ただ、どの酒を扱うか選ぶときは、顧客に「どの酒の物語を伝えたいか」を基準にしていましたね。 

商売する上では、その商品に自分がどれだけ思い入れを持てるかが大事。だから私たち営業は、得意先に「物語」を伝え、関係性を育てていく必要があります。酒造りに込められた想い、地域の酒蔵として注力している取り組みやその価値を丁寧に伝え、理解を深めていただくことが営業の仕事です。

――麒麟山酒造の中で、「伝辛」はどんな意味合いを持つ商品でしょうか。

漆原さん:麒麟山の姿勢を表している商品だと思います。

地元で一番飲まれ、愛されている証明だと思うのですが、当社の生産量の55%が「伝辛」。「美味しい」は当然ですが、地元の米、水、人で醸す、地域の人たちの思いがいっぱい詰まった酒です。

そこをもっと深く広く伝えていくことが一番だと思います。私たち酒蔵も独自の色を打ち出して、ユーザーにとっての付加価値をきちんと伝えることが大事ですね。

漆原さんの手に包まれた伝辛カップと麒麟山

――麒麟山酒造として伝えたいメッセージについて、教えてください。

漆原さん:「やっぱりいつもの麒麟山」ですね。わたしたちが醸す酒は「日常の酒」、「身近な存在」と感じていただいている実感があります。会長、社長はじめ、営業担当も新潟市内いろんな所に顔を出してユーザーとの接点を作っているし、そういうところで顔を見知ってもらって、「身近な存在」がつくる「日常の酒」というイメージができているんじゃないかなと思っています。

ミスター・キリンザンになる

――今回の米づくり大学も私は潜在的な自己表現の機会だと思っています。社員の皆さんも麒麟山を通して自分を表現しているのかなって。 

漆原さん:社長、会長はマスター・キリンザンなんで(笑)、私は入社時に記憶に残る「ミスター・キリンザン」になると心に決めていました。弊社の専務は酒造りの責任者であり、「麒麟山の杜氏」として数々の輝かしい記録を保持する名工です。同業でも一目置かれる存在なんです。一方、営業は、記録が残るような仕事の機会はほとんどない。だからこそ記憶に残らないと……ちなみにこの風貌も戦略ですから(笑)。やっぱり多くの方に麒麟山を知ってもらうのが大切ですし、飲みに行ったときには楽しく笑顔で! プライベートでも麒麟山を背負っていますよ。お客様が、お店の棚で麒麟山を見たときに自分の顔が思い浮かぶくらいになりたいです。

やっぱり麒麟山を置いとかないと

――麒麟山酒造の商品の魅力について、改めて教えてください。

漆原さん:地元で飲まれていることが一番のすごさだと思います。新潟にはたくさんの蔵元がありますが、地元でしっかりと飲まれている地酒は意外と少ない。下越地域なら、うちの酒は酒販店、飲食店での導入率は90%以上カバーしている自負がありますね。

――飲食店はどんなきっかけで導入していくのでしょうか?

漆原さん:意外と飲食店さんは、自分の価値観で酒を揃えたりしない。お客さんが「飲みたい」って言った酒は置いてくれるんです。お客さんが飲みに行って「麒麟山無いの?」って店主に一言掛けるような酒にしていかないと。麒麟山を、なくてはならない存在に育てることが私たちの仕事です。

――そのために、営業としてできる工夫はどんなものでしょうか。

漆原さん:やっぱりご縁を大切に、たくさんの人と会うこと。どんなところでも、麒麟山の魅力を伝えることでしょうかね。例えば、ある居酒屋の店主だけでなく、従業員の方と良い関係が築けていたら、その方が独立したときに「そういえば麒麟山の人、よく来てくれたんだよね。自分も麒麟山置かなきゃなんね」と思ってくださったりします。

一朝一夕にできることではありませんが、「あの人来てくれた時にないと悲しむよな」とか「来てもらって喜ばせたいよな」とか、麒麟山があると、店もいい雰囲気になると感じてもらえるように、麒麟山の魅力を伝えたいです。さらに、飲食店で会話したお客さんも大事にしないと。どこで繋がってくるか分かりませんから。ほんとに。

(後編につづく)

漆原さんのおススメする阿賀町の好きな風景:会社の敷地から見る麒麟山

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