田んぼの整備について① 美味しいお米の育てかた#033
これまで自然栽培稲作のプロセスをおさらいすると
自然栽培の背景・概念について
苗の段取りについて
自然栽培の段取りについて
をそれぞれ辿ってきました。
今回からは苗が育っていくステージである
田んぼそのものの整備について紹介していきます。
栽培は秋から始まっている
繰り返しになりますが
田んぼは、収穫を終えたと同時に
すでに次のシーズンに向けての栽培が開始している
と捉えています。
早速、取り掛かる作業として
秋起しがあります。
特に雪国では雪が降る前に
秋起こしを済ませておく必要があります。
なぜ秋起こしが必要なのでしょう?
実は私が生産者初期の頃はトマト栽培が主で
田んぼは比較的あと回しにしていて
秋起こしをしていませんでした。
すると数年経ったところでとんでもない現象が起き
その田んぼで1年栽培不可能になってしまったのです。
それについては詳しく後述したいと思います。
冬期湛水のメリット・デメリット
山の中の田んぼや
離島の田んぼでよくあるのは
田んぼの中で水が湧いてしまったり
底なし沼のような田んぼです。
そういった場所では
その環境に適した別のアプローチが必要です。
無理に乾かそうとしても難しいこともあり
この場合は冬水たんぼ、通称冬期湛水(とうきたんすい)
の観点から冬を過ごします。
冬に水が使える圃場で
水を張っておく冬季湛水。
土壌の生態系を豊かにし
さらに草のタネを不活させる方法です。
この場合おさえられる草の種類は一年草が主ですが
その他の草には無効か逆効果になる恐れがあります。
また、水を張った田んぼに
白鳥が訪れたりもします。
冬の風情があって観光地として
多くの人が訪れるスポットになっている
地域もあります。
それはそれで良いのですが、
生産者側からの意見を言えば
白鳥に田んぼの一部が大きくえぐられ
春先に高低差を補正するのが
非常に大変な作業になることもあります。
また、白鳥の糞の影響が
作柄に影響することもあります。
さらに、湛水を続けていると畦が脆くなって
水が抜けやすくなり水もちが悪くなっていきます。
そのため、こまめに手作業で畦塗りをするか
一度乾かして機械で畦塗りをするかで
対応する必要があります。
秋起こしのコツ
収穫の終えた田んぼは秋起こしをします。
よく乾いていることを確認します。
うまく乾いていない圃場は前回の記事を参考に
環境改善をしてみてください。
トラクターの場合は
通常のロータリでもかまいませんが
トラクターに極度の負荷がかからない程度に
回転のゆっくりしたロータリで
走行スピードを少し早めて
土塊が大きくなるように耕運します。
オススメはスタブルカルチなどの
鍬形のカルチを
田んぼの硬盤より上のラインで
かけていく方法です。
それによりトラクターのエンジン負荷を軽減しつつ
土塊を大きく起こすことができます。
トラクターで耕すルート
秋起こしの役割
秋に起こしておくことで
奥の土層が雨や風にさらされることになり
微生物や菌などが呼吸するようになります。
そのようにすることで起こされた稲かぶや
収穫後の稲わらの分解も促進され
土中の嫌気性質が解消されます。
これにより、長い冬のあいだに
次のシーズンのために土壌が育っていきます。
ただ、あまり細かく起こしてしまうと
雨などで表層が固まってしまい
呼吸感が失われてしまいます。
また、トラクターがないなどで
秋起こしができない場合は
圃場に3m~5m間隔で直径30cm程度の
バケツ大の穴を点々と掘っておくと良いでしょう。
その他、機械以外でも
伝統的な馬耕や牛耕などの方法もありますが
基本的な考え方は同じです。
草を意識した秋起こし
私が1年間栽培できなかった原因
それは
クログワイという球根植物の増殖です。
秋起こしのもう一つ大切なポイントは
クログワイの繁殖を抑えることです。
クログワイはジメジメした空気の通らない場所で繁殖します。
低温や乾燥に弱いため
秋に起こしておくことで
冬の空気に晒されると増殖が抑えられます。
ほおっておくと大繁殖し
私のように1,2年は稲作が出来なくなってしまうということもあり
除草剤を使用しない米づくりには注意が必要です。
その1年間はひたすら乾燥させ耕してを繰り返し
どうにかクログワイの活性を止めました。
自然が健気に大地を守ろうとする力は
本当にすごいものです。
また、特に畝立てをして冬季を過ごす
二山耕起などを毎年行うと
他の草のタネを枯らすことも兼ねて有効です。
冬の寒さの厳しいところでは特に
二山耕起の成果が現れやすように思います。
以上、秋冬の田んぼの整備についてでした。
春になってからではこの辺りの作業は
手遅れになってしまいますので
秋冬の過ごし方の要点をいかに抑えておくかが
重要ポイントになってきます。
続く
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