どうする?育苗土 美味しいお米の育てかた#019
育苗土の用意
育苗土は自然栽培稲作栽培者の多くが頭を悩ませるトピックの一つでもあります。
ポット苗の場合は穴の下の苗代に根が張っていきますが、マット苗の場合は、苗の根のほとんどは苗箱の中の土で完結します。
選択する苗箱によって育苗土の種類が異なってきます。
まずはポットから。
ポットの場合、理想的には自分の田んぼの稲藁が 4~5年かけて分解した腐植土が望ましいでしょう。
また、市販の無肥料培土を使用する生産者も多いです。
ただ、山を切り崩し培土を確保することも多く環境面に配慮するとすれば、育苗土を自給する方が望ましいです。まさに土づくりです。
育苗土の自給は、稲藁を小切って積み、時々切り返していきます。
2~3年経つと湿気を含む泥のようになりミミズなどが増え、そこからさらに進むと比較的無臭になってサラサラしていきます。
そうなると、市販では買えない自分の田んぼにフィットした最高の育苗土の出来上がりです。
一般的には「時ハ金ナリ」ですがここでは「時は土ナリ」です。
ミミズのいる土はいい土?
ミミズのいる土はいい土、と言われていますが、まだまだ先があります。
ミミズのいる段階は道の途中と捉えています。
また、育てる植物によってそれぞれの好みの腐植の分解レベルがあるように見えることから、植物の性質に合わせていくのが良いようにも思います。
あまりに有機物が未分解の状態だと、土壌の自然バランスが崩れ、過剰な代謝などを引き起こし、虫たちや菌たちが発動することになりますので、見極めが必要です。
稲作に関してはできるだけ分解の進んだ腐植を利用することが、バランスへのインパクトが少ないように思います。
マットの場合の育苗土
また、マット苗の場合は、育苗土に多少の有機物がないと老化現象を引き起こす場合がありますので、この場合は、藁を分解した育苗土を年数で区別して、分解の荒いもの、細かいものをブレンドしたりと工夫が必要です。
また、有機物を足したりする場合もあります。
苗が老化するよりはその方が遥かにお米に優しい稲作であるように考えています。
自然か不自然かという曖昧な物差しよりも、稲の伸び伸びとした生育を中心に考えます。
こうでなきゃいけない。と言った真面目すぎる思考ではなく、お米が喜ぶバランスを中心にした柔らかい振れ幅を持たせ進めていくことをお勧めしています。
土になっていく
稲藁は、4~5年目には完全に無臭でなくとも嫌みのないサラサラとした質感に分解していき、最後はフカフカとした腐植土になっていきます。
分解のスピードは地域の気温によって異なります。
稲藁より分解スピードの速い麦藁などは2年 ~3年で腐植土に分解します。
イネ科の植物は栽培圃場の土壌環境にもよりますが、育苗土としての使い勝手はとても良い印象です。
田んぼの土を使う場合
ここまでは長期的な視点から栽培の永続性を考慮したうえでの方法ですが、栽培初期や量が少ない場合は、田んぼの土を使用したり、 または市販の培土から肥料成分のないものを選んだりして利用することも有りでしょう。
田んぼの土の場合は、草のタネも混入していますので、なるべく早い段階から採取し、草が生えてきたりするタイミングなどで定期的に切り返し、普段はシートなどをかぶせて発芽を促進しておくと良いでしょう。
このような草のタネの処理が甘いと、育苗時に草も生えてきてしまい、苗の根のスペースを奪ってしまい苗のスムースな生育を妨げますので注意が必要です。
タイミングとしては前年の秋以前か春の早いうちに用意しておきたいところです。
田んぼの土は土塊が大きくそのままでは使えませんので、土の粉砕機などで細かく砕いて使用するほうが良いでしょう。
栽培者によっては腐植土や田んぼの土を混合したり、さらにその混合比率を研究する人もいます。
コンセプトを統一する
どのような育苗土が良いかを考えるとき、野生の稲の場合を考えてみましょう。
野生の稲のタネ籾はそのまま田んぼに落ちて その場で芽を出すことでしょう。
どんな環境でも稲は太古より命をつないでたくましく育ってきました。
そういった観点に基づいて考えれば、極端に砂や粘土でなければ、育苗土は栽培者の好みでも稲にとっては大差ないかもしれません。
留意するポイントは、苗箱の種類という人為的な環境とバランスの取れる育苗土の選択です。
もちろん団粒構造が形成されている腐植土も根には優しいでしょう。
ただし、前述の分解途中の腐植など、窒素分などの肥料分を含む場合は注意が必要です。
育苗土に肥料分が含まれていると成長は著しく見えるものですが、それは植物の土壌浄化作用からくる代謝によるものであって、その場合、植物の本体である根が育ちません。
コンセプトズレの停滞とマメ科の取り扱い
そういった苗を、無肥料で土壌を育てられた田んぼに植えると「肥料≠無肥料」というコンセプトのギャップが出てしまい、 免疫力の低下によるトラブルや生育の一旦停止などが 起こる可能性があります。
特に空気中の窒素固定力の強いマメ科の草や残渣などを腐植土にするときには、良く時間を置き窒素分を解消したものを使用したほうが良いでしょう。
マメ後の生産は、マメ科の窒素固定力の影響で
稲作畑作に関わらず味の品質は低下する傾向がありますので注意が必要です。
続く
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