高級料亭のお米の正体 美味しいお米の育てかた#007
世の中の生産者が各々視点が違うように、僕もそのひとつの風景をお話ししています。
立地、土質、方法、天候などの不確定な要素と付き合っていく自然栽培にマニュアルはあってないようなものです。
自然栽培は全世界の人が、目の前の自然の反応を論じることができる
謂わば農業のオープンソースフォーラムとも言えます。
直接、栽培に効果のあるアプローチを省くことで見えてくる自然の躍動は、想像以上に学びの多い観点です。
そのようなビジョンから、みなさんと共有できる考えかたや方法を紹介しています。
さて、前回までのお話で
味覚だけでなくカラダ全体で感じる
新たな美味しい!という感覚を発見した。
というエピソードをお話ししました。
美味しいお米の美味しさに関しては、他にも興味深い出来事がありました。
高級料亭が使用していたお米
京都のとある老舗料亭の若旦那さんと使用しているお米についてお話ししたことがあります。
なんでも、土鍋炊きのおむすびが人気でお米もこだわっているんだとか。
どんなお米かを聞いたところ
一人の生産者さんと契約し全量買取していると教えてくださいました。
その生産者さんの田んぼでも田んぼごとに味が違うので、美味しい場所のお米を指定しているとのこと。
特に自然栽培とかではなく、有機肥料に数回除草剤を使用する栽培方法だと説明いただきました。
「どんな田んぼが美味しいんですか?」
単刀直入にお聞きすると
「いわゆる田んぼ地帯の田んぼより、川に近い田んぼがあっさりしてて美味しいんです。収量がなかなかとれないんですが。」
そのお話を聞いてすぐにピンときました。
生産者泣かせが実は良かったワケ
川のそばというのはだいたい砂地の田んぼが多く、さらさらし過ぎているため代(泥)が育ちにくい環境です。
肥料を投入したとしても砂地なので沈んで抜けていく。
稲は根がバリっと張れるある程度まったりとした代の湿地を好みます。
砂地は稲にとって蛋白すぎるのですが、そのせいで投入された肥料の影響が少なかった。
自然栽培というコンセプトで栽培していなくても、偶然にも肥料っけのないお米に仕上がっていたのです。
川沿いでない方はおそらく肥料が味に影響していたことで、採用されなかっただろうとお話しさせていただいたところ
自然栽培に興味を持っていただき、ぜひ試したいと言っていただきました。
栽培プロセスを重視する料理人は貴重
日本ではほとんどの料理人は自分の腕で料理をしようとすることが多く
素材のバックグラウンドまでを知ろうとする人は残念ながらほとんどいません。
だいたいコスパ優先で安い方に流れるため、考えようともしません。
素材に力があるほうが料理もシンプルで良いのですが、
腕の料理から、引き出す料理に変わるため、調理方法も違ってきます。
今の野菜は、あとづけの味付けに向いている、味のない志向で品種改良されています。
そういったことをわかっている料理人は日本にどれだけいるかというと、ほとんどいないように思います。
仕方がないですね。ビジネスですから。
僕が知る限り、そう言ったお野菜やお米と会話するように料理を生み出し、感動的な食体験を提供できる料理人はわずか数人です。
あとは見極め力のあるお母さんたち!
素材選びをするお母さんたちの家庭料理はあたたかい美味しさがあり、どんな外食にもかないません。というかジャンルが別ですね。
そんな家庭に育った子供たちは無意識に美味しさ体得していき、違和感に気づく感性が育つように思います。
今回は、自然栽培という看板がなくても美味しさを追求していった結果、自然栽培に近しい栽培環境のお米を採用していたケースをご紹介しました。
ご覧いただきありがとうございます!
続く