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自然栽培4つの段取り① 美味しいお米の育てかた#025

苗を育てるセクションがひと段落したところで

あらためて自然栽培を行う上での段取りについて整理したいと思います。

ここ、わかりにくいかもしれませんが、なにげにめちゃくちゃ大事だと思っています。

自然栽培に限らず田畑やほとんどの仕事は

段取りが命と言えるのではないでしょうか。

今回はそのための前提を整理していきます。


ステージを分けて考える

自然栽培は大きくステージを分けて取り組む必要があります。

大きく別けると

「見立て」
「土質、作土の調査」
「環境整備」
「栽培と因果関係の追究」

と大別すると4つステージがあります。



1st Stage「見立て」

まずは大きな視点から、田畑のある場所がその地域全体の地形から見て

どのようなロケーション・タイムラインにあるかを確認します。


時間・土地の歴史

時間的に、現在の地形が歴史上どのような変遷を経て現在の姿になったのかを調査することも圃場環境を知るうえでは多くのヒントを含んでいます。

地形・地質

空間的には、環境全体から見るマクロな視点から山がどこにあるのか、川がどう流れているのか、雨が降ったときにどのように流 れていくのかも捉えます。



風と水の動きを知る


山から雨が流れてくるラインと地下水のラインを考えます。

また、時間や季節によって変わる風向きを観察することも重要です。

山から田んぼまでに道路や建物など、どのような構造物があるか

それらの影響が仮にあると仮定した場合、あった時代となかった時代で

地下水や風などの変化はどうかを調べることも有益です。

消えゆく安曇野のわさび

長野県安曇野市のわさび田は、その昔は地下水の流れも豊富でわさびの株の大きさ も今の5倍~10倍近くあったと言われていました。

安曇野のわさびは平野部の一番低いところから湧き出す飛騨山脈経由の伏流水で育てられています。

そのため、その途中に道路や住宅が急激に増えたこと、また、天然水として水をくみ出す事業が始まって以来、わさびが育つ水量水質がどんどん変化していったと地元では考えられています。

近年では廃業するわさび生産者が増加しています。また水質の悪化、水量の少なさから、カメムシが発生しやすい環境に変化してきており、

こっそり殺虫剤を使用する生産者が出荷時に残留農薬が検出され、全量出荷停止になるなどの問題が起こっています。


水と風で圃場から環境改善


地下水の流れは、肥料分や生活排水などの浄化も担っています。

流れが強く豊富であれば浄化作用も旺盛です。

しかし、滞ればうまく浄化できず、表層に揮発して

蚊など、それらに媒介する虫の発生につながっているとも考えられます。


もしそのような滞る性質が大きな規模で起きているとしても圃場整備によって

流れが滞っているところの水と空気の通り道をつくることで

小さな規模での浄化力を生み出し

圃場の中の環境に変化をもたらすことができます。

そういった工夫の継続が大きな規模の影響を軽微にすることに繋がると考えています。


使用する用水路を知る


また、田んぼの場合は、使っている用水路がどこからどのような流れなのかも

水質を把握する上では知っておきたいところです。

その用水路がコンクリートのU字溝なのか、昔ながらの堀溝なのかでも周囲の地下環境に与える影響や、水のクオリティに関わってきます。

昔ながらの用水路では水が地下浸透と噴出を繰り返し

多くの植物やカワエビやドジョウ、ザリガニそして微生物など

数えきれないほど多くの生命が育まれている中を流れてきます。

いわば自然の浄化槽と言えます。



しかし、コ ンクリート造りのU字溝になると流れが速く

生命も自然な堀溝ほどは介在していませんので、堀溝ほどの活水作用はないでしょう。

さらに、U字溝を設置してある地下の層は、 上にコンクリートの蓋をされている状態が続き

コンクリートの下部は、雨が降ったら浸透し、 晴れたら揮発するといった土中環境の呼吸が制限されてしまっています。

そういった構造物によって田んぼが乾きにくくなっている場合は

圃場の中に内畦をつくるか、点穴を掘ったり、栽培に影響しない圃場の際などに炭などを埋設したりするなどで

土中の呼吸を意識した施工をすると解消されることがあります。


近くにU字溝などがあっても特に圃場に直接影響がない場合もあるため

この場合、むやみに掘ってしまって大雨の時に構造物の下部 の地盤が崩壊するといったことには注意する必要があります。

施工する場合は環境の変化をよく観察して徐々に行うようにします。




周辺環境の情報収集は大切

周りの環境については、季節によっての風向きやその土地の天候についても知っておくと良いです。

実際には自らの栽培体験の中で年間の環境の変化が分かってくるものですが

地元に古くから住んでいる人と話すと、昔話と併せて色々教えてくれるものです。

また、 林や建物が日照に与える影響もチェックしてみましょう。

木が近くにあったりする場所は日照時間が少なく、栽培植物が徒長したり乾かない傾向があります。

そういったところは溝や天穴などで乾きやすい構造にしておくと改善されることがあります。


見立てを活かす


地上の見立てをどう活かすか。

ひとつには大きな流れに背かず活かす

ということがあります。

山が南北に伸びていれば風も南北に吹く傾向があります。

畝の向きを決めるなら風の抵抗が少ない方がいいのでこの場合は南北が無難ですよね。

また、日当たりに関しても考えます。

東西に山があるなら

風の強さや日当たりを考慮してどちらがバランスを取れるか

毎年安定するのは南北・東西どちらかを考えて決めたほうが良いでしょう。

畝の向きを決めるのは、自分がどうしたいかではなく

その場の地の利を活かした方がトラブルが低減します。

正解は場所によって違うのが田畑のおもしろいところですね!


ここではまだ地上部です。

環境の全体像を捉えるには地下部が非常に重要です。

続く

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