社会問題を叫ぶほど、人を暗い気持ちにさせてしまうことに対して
年明けに、IT起業家で作家でもある「けんすう」さんがXで書いていた文章を見て、とても考えさせられた。
「これって、俺たちのことじゃん」と。
僕らNPOは、日々、現場で悲惨なケースをたくさん見る。
タバコの火を押し付けられた跡が背中にある子ども。
命からがらDVから逃げてきた、シングルマザー。
娘が学校で先生から性被害を受けて絶望するお母さん。
こうした事例を世の中に知ってもらい、こうした人たちを支える支援を提供したい。救えるような制度をつくりたい。そのため寄付を募る。
NPOとしては当たり前のことだし、そうしなければ社会課題の認知も広がらなければ、寄付も頂けない。
けれど、その反作用として、社会の悪い部分をクローズアップしてしまったり、みんなの気持ちを暗くしてしまったりする。
ネットニュースを見続けていると、社会に絶望してしまうのと似ている。
【自分たちなりの解決策】
この指摘を受け止めて、じゃあどうしよう、と。
つらく困っている人たちの声を代弁しないで、何を発信するのか。
そこで思いついたのが、僕たちが起こせた「変化」について発信してはどうだろうか、と。
もっと言うと、寄付者の方々が、僕らへの寄付を通じて起こせた変化、そして希望について語ってはどうだろうか、と。
課題はあるけど、でもそれは解決できる。
困っている人はいるけど、確かに助けられる。
そんなメッセージをちゃんと出す。
直接寄付を求めることはせずに。
【お礼動画広告】
そんなわけで、今回、「フローレンスの無料産院」で助けられた人のエピソードと支援への感謝を動画にして広告をかけて広げてみることにした。
実際に、妊婦さんが無料で病院にアクセスできる機会が生まれたことで、何人もの妊婦さんたちを、ひいてはお腹の子どもたちを助けられている。
そうした変化を起こせたことを、寄付者や支援者の方々に感謝する、というだけの動画。
一般的なファンドレイジングのセオリーからは外れるのだろうけど、それはそれで良しとした。
NPOが課題を世の中に声高に叫ぶだけの存在ではなく、同時にちゃんと希望を生み出す存在として認知されるように。
応援してくださっている人たちを暗い気持ちにさせるのではなく、小さくても確かな希望を持ってもらえるように。
これからも試行錯誤していきたい。
言いづらい問題提起をちゃんとしてくれたけんすうさんに、重ねて感謝。