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銀メダルの裏側にあった、100分の1秒の戦い|人成塾(元陸上競技・銀メダリスト・朝原宣治)

ノンフィクション作家・小松成美がゲスト講師を選び、次の時代を生きるためのヒントをありのままの言葉で学ぶ『人成塾(じんせいじゅく)』。今回の対談ゲストは、元陸上競技・銀メダリストの朝原宣治さんです!

陸上の歴史に名を刻んだ朝原さんに、スポーツから学んだことは何か?どうすればメダリストになれるのか?などたくさん語っていただきました。


オリンピック延期で感じたこと

小松:みなさん、おはようございます。オンラインサロンをご視聴くださりありがとうございます。本日のゲストは、北京オリンピック400mリレー銀メダリストの朝原宜治さんです。朝原さんには、人成塾の講師にも一度来ていただきましたのでお会いになったメンバーの皆さんもいらっしゃるかと思います。本当にお忙しいところ今日はありがとうございます!

朝原:ありがとうございます

小松:今日は休日なので会社を休まずに?

朝原:そうです、有休使わずに来られました。(笑)

小松:いよいよ明日の夜、開会式が始まりますね。(当時、東京五輪開幕直前)前日ということで、緊張感も高まるんですが、オリンピック延期から開催が決まって今でも様々な意見があるんですけど、アスリート代表としては今どんなお気持ちですか?

朝原:まずは開催されるっていうことは選手にとっては本当に良かったと思いますね。これ明暗で分けた選手もいたりするんで、そこは本当に運であったりその選手が持っている巡り合わせだと思うので、それもまたオリンピックかなという風には思います。

小松:そうですね、私オリンピックを長年取材させていただいているんですけど、オリンピックって6回中止になってるんですね。夏の大会が4回と冬が2回、全部戦争なんです。もちろん歴史でみなさんも知っているかもしれないんですが、1940年に東京オリンピックと冬季の札幌も同じ年に行われることになっていたんです。第二次世界大戦の開戦とその前から日本は日中戦争という戦争の渦中にあって中止になりました。こうした感染症でオリンピックが延期になるのは世界初、近代オリンピック初なんですね。

朝原:そうですね。

小松:だから選手の方たちのメンタリティを保つことが大変ですね。

朝原:そうですよ、モスクワのボイコットとかがあったとしても我々の世代で一番ショッキングな出来事としてオリンピックがなくなるっていうこと自体考えられないので、やっぱり4年に1回の大事な試合にしっかりあわせて選手たちはトレーニングをしているっていうのが当たり前なので、それがなくなって1年でもう一回調整し直しっていうのは選手にとっては辛いですね。

小松:本当ですね、ご自身に当てはめたら北京の頂上を描くときに1年延期と言われたら大変なわけですよね。

朝原:もう完全にやめてます(笑)もう1年もう一回やるってなったら辛いかもしれないです。当時36歳ですしね。

小松:単に1年の期間が延びたということより、自己の年齢とか体力とかメンタルのコンディションの維持ですよね。

朝原:モチベーションが持つかということだと思うんですけど、多分持たないと思います。

小松:本当にその日を思ってやっていくんですよね。毎日毎日。

朝原:そうですし、僕の場合は次の大会で辞めるって決めいていたじゃないですか。だから、次の人生のことも考えると失敗するリスクも結構あるし、あと1年延びるとなると、それだったら早めに動き始めた方が、次のことをやった方がいいかなって思ったかもしれないです。


現役の選手たちは何を想っているのか?

小松:実際現役の選手の方たちはいかがでした?声を聞いたりしました?悩んだりしてました?

朝原:結構前向きな選手が多いと思いますよ。考えたって仕方がないですし開催されるかどうかもわからないような状況で、でも自分たちができることっていうのはそこにあわせて調整するだけじゃないですか。だからやれることをやるだけっていうことにちゃんとフォーカスできていたと思います。

小松:そうですね。

小松:メディアの状況がコロナウイルスの感染とかもしくは拡大とかワクチン問題の報道がある中で、オリンピックのニュースをやっていくんだけど選手の声がこんなに届かないオリンピックもないじゃないですか。

朝原:そうですね、最近やっとでてきましたけどやっぱり選手としては出しにくいですよね。自分ごとなので余計に言いにくいってこともあるし、やっぱりスポーツの大事さは、分かってはいるものの、それどころじゃない人たちがたくさんいるってことも選手たちは知っているので、、。

小松:そうですね

朝原:だから今回オリンピックっていうのは、みんなが選手たちを応援できる余裕があって初めて成り立つというのが本当によくわかりました。

小松:たくさんのアスリートを取材するとどんな戦いどんなレースにも全力を注ぐ、ということは変わらないけども、オリンピックだけはやっぱり説明できない特別な存在であり、人生においての大きな価値を見出す瞬間なんだと。時にはアスリートにとってオリンピックは、人生のすべてっていう、それぐらい大きな目標であり自分が生きている理由なんだという風におっしゃる方もいて、神聖な気持ちになるんですよね。朝原さんは、オリンピアンとして現役の時はどうでしたか?

朝原:もちろん、今振り返るとオリンピック以外にもいろんなスポーツの価値って見出せると思うんですけど、やっぱり選手の僕らは特にアマチュア選手は、ワールドカップのサッカーとかの大きなオリンピックに代わる大会とかがない競技の選手は、オリンピックが最高峰じゃないですか。だから、そこを目指してやるっていうのは、ごくごく自然なことで、そこに出るためには人生の幾分かの時間をそれに全部つぎ込むっていうぐらいにならないとなかなか戦っていけないっていうのもやっぱり事実なんですよね。4回目のオリンピックの時にはだいぶ余裕が出てきていましたけども、初めてのアトランタの時は、やっぱり本当に特別な気持ちというか、特別な人間になったっていう感覚でした(笑)前の年に、世界選手権に出場しているんですけど、それとは全く違う代表の感動がありました。

小松:そういうインパクト、本当にアスリートの中に残ってその後の人生を創っていくわけですもんね。

朝原:そうですね、オリンピック自体の歴史もすごいありますし、何と言ってもやっぱり評価されるっていうとこだと思うんですよ。選手たちがそこを目指すというのはオリンピックの舞台があって、それに対してのみんなの認識があって初めて成り立っていると思います。

朝原さんと小松成美

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