B2BとB2Cのマーケティング、何が同じか違うか議論
B2BとB2Cのマーケティング、違うところと同じ所
まえがき
まあよく言われる話ですが、B2Bを本業として(大昔にB2Cも少しかじったこともあ)るワタクシが語りたいなー、などと思い書き連ねます。
特に2C界隈で著名な方が2Bにも進出されてきてるので、そのあたりの期待値コントロールも含めて、2Bな方に「2Cの話の使いドコロ」とか「彼らが知らないこと」の整理をできればな、と。
いやあ色んな人から怒られるかもw
あ、扉絵はAIで生成してもらいました。楽ですなー。
B2BとB2Cという雑なくくりをしていますが、Large Enterprise向けB2Bと日雑・加食などの消費財B2Cの比較を想定してます。それ以外にもSaaSやらSMBやらコマースやらなんやらあるのは知っていますが、業界定義だけで寿命が付きそうなので、Tipicalなカテゴリーでの比較ということでご了承ください。
最も大きな違いは「顧客」、 だけではなく「自社内の関係者との力関係」も違う
はい、これ身も蓋もない話ですねー。
マーケターが考える「顧客への価値提供」と「顧客から対価を得るまでのあらゆるプロセス」において、組織内の関係者と権限設計、意識が大きく違います。
「2Cのマーケターが社内調整やってない」なんて言ってませんよ。その広さ・深さ・難度が違う(ことが圧倒的に多い)と言っています。
まずは営業部門とのアラインメントの取りやすさから話しましょうか。
これは「顧客接点の把握度について、2Cと2Bでの社内認識の違い」とも言えますね。
ここでの2Cは主に消費財との比較を語っていますが、2Cにも量販店営業なり卸・流通営業なりが当然いますよね。7&iやイオン、ドラッグストアグループの担当営業、三菱食品や国分担当などですね。
一方の2Bはアカウント営業やインダストリー営業(自動車業界とか通信とか製造業とか)と販社営業(Distributer営業とかVAR担当とか)ですね。
で、「これら社内の営業部門が顧客(支払を意思決定する対象)をどの程度理解しているか?」という質問に対し、答えの差が大きく異なります。
比較として消費者と遠い2C営業
2Cの営業が対面するのはGMS/CVSやドラッグストア等のバイヤーであり、支払を意思決定する顧客(2Cでは消費者)ではない、つまり直接の購買者ではない、という認識が暗黙知として存在します。
もちろん「あそこのバイヤーが”こういうのが売れる”と言っていた」という伝聞はあります。
対面するバイヤーも(もちろんカテゴリに造詣が深い方は多々いますが)当該カテゴリや棚・商圏における知識であるため、その意見はマーケット全体を表さないことが多くあります。(「で、何GRPでるんですか?」と聞いて棚を決めるバイヤーさんとか・・・。)
相対的に顧客とマーケットに近い2B営業
2Bの場合、重要アカウントを担当する営業部門は、その相手だけで自社事業全体売上の60%から場合によっては80%以上まで占める場合があります。そして相対しているのは購買の意思決定者そのものです。
「その先に顧客の顧客がいるだろう!」とか「最終的には消費者に消費されるんだ!」とかいってる人たち、そんな話をしてません。「海外プラントの増築可否」と「消費者のZMOT」はほぼ無視できる程度に関係ありませんし、消費者のパーセプションは重点かつ優先の領域ではないのです。
つまり2Bと2Cの間には「営業と支払意思決定者の関係に、比較として差がある」と言えます。
支払意思決定者との乖離度合いはバーゲニングパワーの違いにつながります。
バーゲニングパワーの違い
新商品を営業の意見だけで決める2Cはいないでしょう。(昔、実際にやってたけど売れなくてすぐやめてましたw)
2Cでは「顧客理解」が出来ているのは(比較として)「営業」ではなく「マーケティング」である、という共通認識が暗黙知として社内で存在します。
定量調査やFGI、エスノグラフィーなど、営業部門にはできないことを2Cマーケがやるため、その知見の蓄積には明らかに差が出てきます。
2Bの営業部門も2Cと同じく巨大な数字を負いますが、その大部分を占める顧客の数は限られ、その限られた顧客のフロントを務めるがゆえにバーゲニングパワーを持ちます。異論はあると思うのですが、「ちょっと営業に聞いて来る」が下手なリサーチよりも効果があるのは2Bの特徴と言えます。
自分の数字に直結するため、新サービスの導入や改廃にも営業が大きな発言力を発揮します。結果として相対的にマーケティング部門のバーゲニングパワーが非常に低くなります。
この社内のバーゲニングパワーのバランスの違いを理解せず「(営業を飛び越した)顧客理解を基にしたマーケティング」を打ち出したり、The Modelに書いてあるような「セールスプロセスの再構築」をいきなり2Bで行うと猛烈なハレーションが発生するわけです。
営業の強さと闇と顧客満足
一方で2B営業との相対の難しさは「ブラックボックスであること」も多いです。
優秀な営業ほど、情報の非対称性がそのまま自分の仕事と関係することを本能レベルで理解しており、「バイアスの無い情報開示」が期待しにくいという問題もあります。
某社で顧客のNPSを取ったとき、1回目は好スコア、2回目は目も当てられない低スコアでした。違いは1回目は営業に対象リストを作ってもらい、2回目は営業を通さずに保有するDB全部に送ったことです。
低スコアの重要顧客のアンケート欄にはもちろん品質や価格についての不満も書かれていましたが、「見積依頼したのに音沙汰がない」とか「どなたが担当でしたっけ?異動ばかりで把握できてないです」とか、ホントに重要顧客なの?というコメントがかなりありました。
こんな感じで「嘘はつかないが不利になるようなことは開示しない」という人間として至極まともな対応を、顧客と社内に対して実践し、常にそのスキルを研鑽しているのが営業部門といえるでしょう。(営業に限らずゴリゴリに数字に追われてるマーケターも同じスキルを研鑽していますがw)
まとめ
営業以外にも開発部門や工場、果ては事業TOPや経営陣など、本来マーケターがやり取りすべき先は多くあります。これは2Cも2Bも同じです。
ただ、社内のバーゲニングパワーが全く違うため、マーケターの扱われ方は天と地ほどの差があると認識頂けると良いかと思います。
もちろん、営業の厳しい現場である顧客の正面に出たがらないダメダメマーケターも数多くいます。マーケもせめて同行ぐらいすりゃいいのにとか思うのですが。。。(なのでインサイドセールス機能はマーケが持つべき派です)
ただ2Cで素晴らしい実績を出した手法は、社内のアクセプタンスが異なる場合はなかなか実現は難しいことがあります、というお話でした。