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クライミングにおける前腕筋力とパンプの仕組み

クライミングにおける前腕筋力とパンプの仕組み
(最大筋力・パワーコンティニュアス・ローカルエンデュランス)

クライミングでは、登る際に必ず筋肉の収縮が行われる。
長時間登った後などは腕がパンプするが、今回は筋肉が収縮する仕組みを分析することでパンプする仕組みを理解し、クライミング能力の発揮・向上を目指す。

筋肉の収縮と生成方法

筋肉の収縮(弛緩)にはATP(アデノシン三リン酸)が使われる。

ATPは筋肉内におよそ5秒分~ほどしか貯蔵できない。そのためATPは継続的に作り出す必要がある。ATPは筋肉内のグリコーゲン(糖)を使って生成する。
生成方法は2つ。有酸素生成 / 無酸素生成。

有酸素生成:毛細血管を通る血液を通じて酸素を筋肉に供給。酸素とグリコーゲン(+乳酸)を燃やしてATP生成(効率も個人差ある)。老廃物はほぼでない。血液が循環することで筋肉内に溜まっている乳酸も取り除く。
理論上はグリコーゲンの限り、パンプせず登ることができる。

無酸素生成:毛細血管が閉まっている際に無酸素でグリコーゲンのみを燃やす。ATP生成速度は速いが、生成効率は悪く老廃物を生成して乳酸が残る。乳酸が発生することで筋細胞内が酸性になりATP作成効率が徐々に悪く、継続できなくなる。結果的に筋力を十分に収縮させるためのATPが生成できず最大パワー(収縮力)の低下、指が開き始める(持久性の低下)。この状態でも収縮は一定残っている。乳酸を取り除くためには血液の循環による除去が必要(無酸素でも少しは除去される)だが、筋肉が収縮しており毛細血管は圧迫され閉じているので、まずは弛緩が必要。シェイクさせることで弛緩を促し血液も循環させる。
毛細血管が閉じ始める最大筋力に対する筋力%はおよそ20%~。完全に閉じるのは60%前後。

パンプとは?:

  1. 必要十分な収縮力(パワー)が発揮できない状態
    強い収縮力を出すにはATPの使用が必要だが、最大収縮力を瞬間的または維持するのに必要量が足りない状態。
    消費ATPが供給ATPを超えることで、力の限度が低くなる。乳酸によりATPの生成効率も悪化しているため持久力も悪化し、指が開くように。
    ⇒ 最大筋力を上げることで毛細血管が閉じるフェーズの筋力レベルを上げる。ムーブを起こし次のホールドに向けて手を出す際などの一瞬の弛緩時に、酸素の供給を行う毛細血管の強さ、心理性と呼吸が必要。

  2. 回復力が遅くなっている状態
    収縮した筋肉によって毛細血管が圧迫され血液が循環しない。よって酸素の供給と乳酸の除去ができずに筋肉の弛緩に必要なATPさえも不足し、回復しない。生成効率が悪い中、無酸素生成で弛緩に必要なATPをゆっくりと生み出し、徐々に弛緩。毛細血管が開き始めることで徐々に血液が循環し乳酸の除去、ATPの有酸素生成が再開されるようになる。
    ⇒ 閉じているのをこじ開けて、なるべく早く多く酸素供給する毛細血管の強さが肝。また有酸素生成の効率をあげることで乳酸の除去速度を上げることも重要。

=>必要以上の力で収縮しないこと(心理面も影響)はATPの消費を抑え、血液の循環も可能な限り維持できるため乳酸も溜まりづらくなり、次のムームの選択肢や持久力、1トライ中での最大筋力の発揮可能回数を増やすことへと繋がる。

クライミング能力を向上させるには

=>つまりクライミング能力を上げるという観点からは、下記3点が重要になってくる。
最大筋力の向上(+貯蔵可能ATPの増加)
無酸素系エネルギー生成経路の向上(ATP生成効率・乳酸をあまり発さない)
有酸素系エネルギー生成経路の向上(毛細血管の発達.強化による酸素の供給力・ATP生成効率・乳酸除去力)をいかに強くできるか(呼吸と心理状態))

具体的には:
・最大強を上げる+腱を鍛える。
・強を長く続けて無酸素効率上昇(一時的なパワーアップのため維持期間短)
・強と弱を継続的に繰り返す(基礎能力のため維持期間長)
・弱を続けて有酸素効率上昇(基礎能力のため維持長)

「年間スケジュールの中で、体のコンディションをピークに持っていきたい期間の直前に、2~4週間程度集中してトレーニングする」

書籍「Logical Progression」

トレーニング方法

最大筋力:主に自宅・短時間集中。
セットも少なく。少しフレッシュが残っていても大丈夫。むしろ次回が早まるので良い
指懸垂。最大3回の重量負荷で3セット。
Go60(5秒か6秒が限界のおもりつき)
リストカール。最大5回の重量
カチ持ち(8mm)
懸垂おもりつき(4回)

パワーコンティニュアス(無酸素生成経路):主にジムまたは自宅
限界付近のボルダー課題をレスト短く(2時間集中)
Go60(1set20秒)
ABC懸垂
ぶら下がり

ローカルエンデュランス(有酸素生成経路):ジムまたは自宅
スキルの向上
一定時間(45分間~60分間)の中で、できるだけ多くのボルダー課題を登る。グレードは、オンサイトできるかできないかのグレードから2~3グレード下の課題を選択。ひどくパンプするようであれば負荷が高すぎるのでグレードを落とす。レストは10秒から長くて30秒。乳酸が少し貯まるくらいが理想。
足置いての前腕での耐久トレ


以上。
書籍: Performance Rock Climbingと、クライミングブログの内容を参照。

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