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米不足に米価上昇があっても、コメ増産を阻む壁がある

国の統計によると、15年後には農業者人口が3分の1になるため、現在の生産水準が維持できなくなるとのことですが、農業の現場では国の予測を上回るスピードで農業者の人口減少が加速しております。

昨年12月中に県内各地の農業法人の方々と話す機会がありましたが、その方々によると、地域の農業者がやめるため、毎年たくさんの農地が集まってくるものの、対応できなく断っているとのことです。
また、協会にもたくさんの農業者の方々が見学に来られるので、これからの農業をどう考えているか聞くと、多くの方が10年以内に農業をやめたいと話しております。

先日、長い間、農業指導に携わってこられた方が「生産をするなと言われた産業に、若者が参入するわけがない」と言われておりましたが、55年間、生産抑制が続いている米作り農業が若者から見放されるのは当たり前だということに、改めて納得させられました。

米作り農業は日本農業の中心であり、米作り農業が安定しているからこそ、野菜、果物、畜産等の農業経営も安定します。
日本農業の中心である米作り農業は、半世紀以上生産を抑制されており、一度も増産という政策に変更されておりません。

55年という歳月は、親子二代に亘る長い年月になりますが、その長い年月の間、一度も米を増産するという政策が実施されなかったため、米作り農業をやめたいというのは至極当たり前の感覚ではないでしょうか。

今年は、昨年からの米不足により米価が上昇し、昨年の2倍を超えておりますが、それでも、米の増産に政策変更がされないでおります。

政治家や農業関係者の中から、米の増産に政策が変わると米価が下がるので、現状維持の政策を進めなければならないとの話が聞かれますが、その方達は、日本農業に米を増産する力が残っていると、本当に思っているのでしょうか。

半世紀もの長い間、減反政策が続いたことで、農業者には、育苗ハウス、田植え機、コンバイン、乾燥機等の農業設備は現在の面積に対応できる設備しかないため、今以上に面積を増やすことができないでおります。
今以上に面積を増やすには、全ての農業設備を増やさなければならず、多額の資金が必要になるため、設備投資をすることができません。
国の政策が増産に変更されたとしても、農業の現場では、増産に向うことができないのが現実です。

農業者人口の減少が加速する中、生産水準を維持するには、農業のロボット化とAI化の推進が必要不可欠であると考えておりますが、そのためには農地の基盤整備による大区画化と集約が必要になります。
農業は、今までの家業としての農業から、産業としての農業に変わる産業革命の時代がきたのではと考えております。
昨年11月に、致知出版社から取材があり、そのことを話させて頂きましたので、後日掲載される予定です。

新しい年は、更なる激動の年になるのではと考えておりますが、どんな時代になっても、春に種を播き、秋に収穫するという米作りに変わりはありません。

本年も何卒宜しくお願い申し上げます。

令和7年1月
大潟村あきたこまち生産者協会
涌井 徹