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22歳が起業して毎月400名以上が受講するドイツ語教室を作り上げるまで
大学生の時に創業したドイツ語教室Vollmond(フォルモント)が最近5周年を迎えました。
ありがたいことに右肩上がりで成長を続け、今では毎月の受講生は400名以上、所属講師は約60名、「ドイツ語教室」というカテゴリーでは比較的認知されるようになりました。
同じように語学教室を営む方や起業を考えている方から相談をいただくことが増えてきたので、このnoteではこの5年間の経緯とやってよかったことを紹介します。
5年あればもっと成長する事業も世の中にはたくさんあるのですが、インパクトのある大きな起業というよりは、自営業の範疇から少しずつ大きくしていきたい方の参考には少しはなるのかな…と思ったので公開します。
①タイミング
Vollmondははじめは趣味程度で小さくやっていくつもりでしたが、創業後、どんどんひとりでに大きくなっていきました(想像以上の成長を受け入れるキャパシティがなく、どちらかというとそこに苦労しました)。
この予期していなかった成長を引き起こしてくれた要因は2つあると思います。
需要はあるけれど大きすぎない市場
・オンラインレッスン
・日本人講師が多い
が昔も今もVollmondの強みであり、それゆえにVollmondを選んでくれる生徒さんが多いです。
起業当初、どちらも界隈では(おそらく)大きく重視されていないポイントでした。日本のドイツ語教室は基本対面レッスンでしたし、ドイツ語講師=ネイティブというイメージが強かったです。
Vollmondはこの隠れ需要のある市場に図らずも入り込めました。
初期は広告費なしで、SNSとホームページのみでの集客でしたが、順調に生徒さんが増えていきました。
さらに、創業して1年少し経った頃からコロナ禍が始まり、そこで出てきたオンライン需要で急成長しました。この頃は、生徒さんは多いのに人手が全く足りず悩んでいました。
また同時に、「ドイツ語」という小さすぎず大きすぎない市場だったのもよかったと思っています。ニッチすぎると事業として成長させるのが大変だったと思いますし、大きい市場だとお金も経験も豊富な大手にすぐに追い越されるからです。
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初期の認知が0ではない
ただいくら需要があったとしても、知ってもらわないことには何も始まらないですよね。
「Vollmondのため」にやっていたわけではなかったのですが、趣味2割・本気8割でそれまでやっていた私のTwitterアカウントとホームページのブログ記事がVollmondの場合はかなり役に立ちました。
しかも、どちらとも「ドイツ語」について発信していたので、読者やフォロワーさんとVollmondのターゲット層がほぼ同じだったのも今思うとすごくよかったです。
とはいえホームページのPV数は当時は全然なかったので「1番初めの認知はTwitter→レッスンの検討段階でホームページ→申し込み」という流れが多分99%でした。
Vollmondは今でこそネット経由が多くなりましたが、はじめ2年くらいはほとんどSNS経由でした。SNSの力は侮れないですね…!
参考までに、立ち上げ当時のTwitterフォロワー数は2500名弱でした(記憶が正しければ…大きく違わないとは思います)。
ちなみにこれはフォロワーさんを増やそうという目的を掲げて合計3年程度かけて0から運用していたアカウントです。
3年かけて2500名なので、SNS運用という観点では全くセンスがないのですが、誰かに頼むお金もないので自分の時間を膨大にかけて試行錯誤していました(ちなみにホームページも同様で、全部ネットで調べて自分で作りました)。
ただこの努力のおかげでサービス開始のお知らせを私のフォロワーさんを中心に認知してもらえたのは大きかったです。
🇩🇪ドイツ語レッスン再開します
— komachi🇩🇪ドイツ語勉強サポート (@komachivollmond) November 20, 2018
これまでほぼ私ひとりで受けてきたプライベートレッスンですが
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フォロワー数2500って一般的には本当に全然だと思うのですが、「ドイツ語学習」という世界の母数がそもそも少ないことを考えると悪い数字ではなかったのかなと思います。
あと、当時は寝てる間以外はずっとTwitterのことばかり考えていたので、センスはないけれど熱量だけはめちゃくちゃあり、それゆえに気にかけてくれていたフォロワーさんの割合がもしかしたら高かったのかなと思っています。
そんなスタートでしたが、SNSや代表のアカウントに依存している集客は危険だとも思っているので、起業後はそこを分散させていきました。
5年経った今の認知経路はざっくりとこんな感じです。
・ネット検索:60%
・SNS:25%
・口コミ:15%
②事業への向き合い方
当たり前のことかもしれないですが、基本的には「続く」事業にするのを目標に進めています。
私が急に動けなくなっても回る状態にしたいです(今はまだ、2日連続で休むくらいが限界です)。
赤字にならないスタート
私は全て自己資金ではじめ、今に至ります。
まずそれ以外の選択肢を知らなかったですし、大学生だったので事業用にかけられる貯金もなく、外からの経済的支援もありませんでした。
ただ幸いにも、「ドイツ語オンラインレッスン」にはお金がほとんどかかりません。必要なのはパソコンとネットの繋がる部屋。他の先生とのやり取りも初めからフルリモートでした。
また、創業前から私自身がそもそもドイツ語講師としてレッスンを個人でしていたので、継続して受講してくれている生徒さんもいて、自分の最低限の生活費程度は自分で稼げる状態だったのも精神的によかったです。
・赤字になりづらい
・固定費を抑える
起業したいけど資金がない場合、この2点は、焦らず細く長く事業を続けていくために大事なのかなと思います(ある程度軌道に乗った今も意識しています)。
経営に専念できる仕組み作り
教室としての収益は初め半年くらいはお小遣い程度で、自分の生活費の足しになるほどでは全くなかったので、本業は講師、副業(捉えようによってはボランティア)で経営をしている状態が続きました。
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ただ、このやり方だと経営者の体力がなくなっていくばかりでかなりしんどいです。体力も時間もギリギリだと判断力も鈍ってミスも増え、前に進むエネルギーも減りますし、基本悪循環でしかないと思います。
収益をしっかりあげて経営者が経営に専念できる状態を作るのは遅かれ早かれ必須でした。
あとは私は女性で将来的に出産を考えているので、プライベートが入る隙がない働き方を変えていかなければと意識もしていました。
きっかけになったのは、一度生理が来なくてレディースクリニックに行った日のことです。
結局はストレスが原因だったのですが、妊娠の可能性も0ではないわけで、その可能性が浮かんだ時にまずはじめに思ったのが「どうしよう」でした。そう思ってしまったことがすごくショックで、もし仮に今後授かることができた時には心から喜べるように働き方を整えていこうと本気で思い直しました。
利益を出す
世の中お金が全てではありませんが、営利事業である以上、利益を出していくことは長く事業を続けていく上では蔑ろにはできないと思います。
Vollmondは赤字になりにくいものの、大きく収益が出るビジネスモデルではありませんでした。
はじめはボランティアに近い心持ちで始めたのでそれでもよかったのですが、生徒さんも講師も多くなるにつれ「もう私一人の趣味で完結するレベルではないので、長く続けられるように、ちゃんと利益を出して業務改善に投資して、良くしていかないといけない」と自覚するようになりました。
また、Vollmondははじめ3年は私の個人事業として運営し、その後法人化したのですが、特に法人化をしてからは利益を出すことだけではなく売上を安定させることを意識するようになりました。
法人化後の1年は、不安で毎日売上をチェックしていました。
個人事業を法人成りするメリット・デメリット色々ありますが、多少税金を多く払わないといけないにせよ(税関連で法人成りを考える人が多いと思うので)、毎月の利益が安定していないのであれば個人事業主のままでいた方がある程度精神的にはいいのかもしれないな、と法人化して思いました。
私の場合はそこで「やるしかない」と覚悟できたのも結果よかったので後悔はしていないのですが、常に胃がキリキリしていました。
ちなみに、実は最近会社として二期目の決算が終わったのですが、目標だった売上高を超えていてとても嬉しかったです!
「好き」を仕事に
とはいえ大抵の物事はすぐには結果が出ないので、結果が出るまで諦めずにやり続けられるかどうかが何よりも大事だと思います。
Vollmondが「ビジネス」として安定してきたのは本当に最近、5年目に入ってからです。
先が見えない暗いトンネルを走り続ける中で、1番力になったのは「好き」の力でした。
私はドイツ語が好きで、ドイツ語を教えるのも好きで、ドイツ語を通じて出会う生徒さんも先生ももちろんVollmondも好きです。ドイツ語学習で悩む生徒さんたちの力になりたいと本気で思っています。
例え私には一円も入らなくても、Vollmondや生徒さんのためになるならば喜んでできることがたくさんあります。
「努力は夢中に勝てない」とどこかで聞いたことがありますが、事業責任者がその仕事を本気で好きでやっているかどうか、は特に事業が苦しい時期に大事になるポイントだと思います。
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③経営への向き合い方
私はもともと起業したい!と思っていたわけではなく、気付けば経営者にならざるを得なくなっていたという感じだったので、「経営者」としての自覚を持つまでに時間がかかりました。
学校でもバイトでも「リーダー」なんてしたことがなく、グループワークでは書記をするタイプでした。
「代表」という立場に慣れなさすぎて、今も昔もよく悩みます。
でも未熟ながらにも5年間続けてきて、その中でVollmondの成長に少しは貢献できたのかなと思う私の経営スタイルをまとめてみます。
はじめは完璧を目指さない
60%の完成度だとしてもとりあえずやってみる/出してみる姿勢は、事業規模が小さかったりその分野での経験がない場合には大事だと思います。
何事もやってみないと分からないことが多いですし、はじめから完璧を目指すのも難しい話なので、ある程度自分の中の完璧主義な一面とは妥協点を見つけるのが初期は大事だと思います。
ただ、60%で出して満足するのではなく、その後は頭を使って改善して100%に近付けていくことが必須だとは思います(そしてそうやっていると「60%」の質も高くなります)。詳しくは後述します。
トップである自覚を持つ
私はまず自身がドイツ語講師であり、自分ひとりでは手が回らなくなったので教室を作ったという経緯があります。
なので、以下2点は教室の代表の私が1番できると胸を張って言えるようにしておこうと常に目標として頭にあります。
・ドイツ語講師としてのレッスン力
・自身のドイツ語力
「1番」というのはあくまで意識の話ですが、プレイヤーが経営者になる場合、プレイヤーとしての能力を維持・向上させる姿勢はいい影響を持つと思います。
あとは、言葉にするのが少し難しいのですが、いくら私が生徒さんや講師、関係者と同じ目線でいようもしくはいたいと願っても、それはある意味傲慢でもあり、相手からすると「トップ」以上でも以下でもないケースが多いことにも年月を経て気付きました。
そこを自覚できてからは一段と自分自身も引き締まりましたし、ある意味色々なことを許容できるようにもなりました。
価値があると信じられることをする
事業の責任者がその事業の価値を本気で信じていないと、それ以上に事業が成長していくことは難しいと思います。
私の力不足ゆえに大変なこともトラブルも色々とありましたが、それでもVollmondは誰かの役に立つことをしていると心から信じて疑いませんでした。また、そう信じ続けられるように違和感を感じることはしないようにもしました。
一難去ってまた一難… な時期を乗り越えていく上で、この根本的な信念があるかないかは大きいと思います。
ただしそれは「Vollmondがあってよかったです」と思いを言葉にして伝えてくれる生徒さんや先生がいたからでもあります。
本当にどうしようもなくしんどいとき、「こう思ってくれる人が1人でもいる限り続けよう」と何度立ち直ったか分かりません。本当に感謝しています。
頭を使ってトライ&エラー
とはいえ信じ続ける「だけ」では中々前に進まないので、頭を使ってトライ&エラーを重ねながら続けていくのが大事だと思います。
他の仕事もスポーツも、やってみて→うまくいかない原因の仮説を立てて→改善して、を繰り返して成長していきますよね。
ただし、やることよりもうまくいかない原因分析とその改善策を考える方が大事だと思うのですが、経験も知識も少ないと一人で考えるのには限界があるのが難しいところです。
多分一番いいのは信頼できる同業の先輩に直接相談をすることなのですが、私はびっくりするほど横の繋がりがないので、ネットで色んな経営者の記事を読んだりして足りてない知識と経験を意識的にインプットするようにしました。
どうしようもなかったときは経営者向けのコーチングを受けたり、よろず支援拠点等、国や市の支援サービスを受けたりもしていました(が、正直まだ「これ」というのに出会えていないのが現状です)。
日常的に行き詰まったときは、ちょっと散歩してみたり、旅行に出ていつもとは違う環境で仕事をするのも意外と効果的でおすすめです。
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覚悟を決めて続ける
そして最後は結局これに尽きるのかなと思います。
経営を始めていまだに慣れないのが、最終的に決定するのは他の誰でもなく私であり、ゆえにその決定に対する責任も私にあることです。
何か大きな事件が起きて、トップが責任を取って辞任するニュースを時々見ますが、「そういうことなんだよな」と思います。
自分の決断に覚悟を持って、その選択を正解にできるように、投げ出さず続ける。
簡単に聞こえますがこれが実はすごく難しくて、でも結局1番大切な気がします。
以上、5年かけてドイツ語教室を成長させるためにやってよかったと思うことをまとめました。
私もVollmondもまだまだ課題ばかりなので、これからもがんばります☺️
現在Vollmondでは、生徒さんも先生も募集中です◎
ドイツ語を勉強したい方、教えたい方、お待ちしています。
そして、今年のnote更新はおそらくこちらで最後です。
今年はnoteを久しぶりに再開できて、よかったです。一度止まってしまうとまたアクセルをかけるのにエネルギーが要りますね…。
でも書くことが好きなのを再認識できたので、また来年も更新できたらいいなと思っています。
それでは、少し早いですがよいお年を😊