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なんで自分勝手じゃダメなのか
自分さえよければいいじゃないですか。
石油だってなくなりますが、自分が生きている間だけでも、もてばいいじゃないですか。
だってそれで幸せなんだもん。困らないもん。
地球温暖化とか言っているけど、自分は困らないもん。
こんにちは、元国語教員、現ライターの国語の庭です。
序盤から何を言っているんだ、って感じですよね。
子どもたちと接する仕事をしていたので、「自分さえよければいい、っていう考えはよくないよ」と教える場面がこれまでたくさんありました。
でも、いざ、なんで?っていう説明をしようと思うとなかなか難しくて。
「人にやったことは、必ず自分に戻って来るよ」などなど言っていたのですが、なんだか遠回しな言い方というか。
たとえばどんな感じで戻ってくるの?と。
実害が見えづらいというか。
伝えきれていないような気がずっとしていました。
そんな中、ある本を読んでストン、と腑に落ちたことがあったので、今回記事にしてみました。
「群れ」で生きてきた名残り
なぜ自分勝手はダメなのか。
本の話をする前に、よく聞くお話をしておきます。
人類の歴史に絡めたお話です。
私もこの話を引用したことがあります。
(どこで聞いたのかは忘れてしまいましたが…)
人間が狩猟をして生計を立てていた時代、2人の男がいました。
1人は、狩りの腕前が抜群にいい。
でも、捕まえた獲物は自分1人で独占している男でした。
もう1人は、狩りがとても苦手。
でも、捕まえた獲物はできるかぎり周囲に分け与える男でした。
ある日、この2人が狩猟中に大ケガをしてしまいます。
自分では動けなくなってしまい、周囲のお世話になることに。
さて、どちらが周囲からより手厚い支援を受けることができたでしょうか?
言わずもがな、後者の男ですよね。
狩りの腕前はイマイチだけど、周りのためを思って行動していた男です。
「人のために」と思って行動してきたことが、後になって自分に返ってくる。
だから、自分のことばかりを考えるのではなくて、周りのこと、他人のことを考えた行動をとる必要があるんですよ、と。
ふむふむ、と思うのですが、ちょっとこんなことを考えてしまいました。
原始時代の話でしょ、って。
今だったら、1人でも病院やネットスーパーがあるんだし、何とかなるかもしれないじゃない。
「自分勝手はよくない」に説得力を与えてくれた本
「自分勝手はよくない」
その例として原始時代の話をされても、説得力があるような、ないような。
自分自身でなかなかしっくりきていないのも正直なところ。
そう思っていたところ、出会ったのがこの本でした。
「自分勝手がダメな理由って、つまりこういう説明をすればいいのでは!?」
そう思いました。
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」著者のブレイディみかこさんの作品です。
「他者の靴を履く」、つまり「相手の立場に立って考える」ことについて書かれている本です。(他にも興味深い内容がたくさん…!)
以下、引用しながら書いていきます。
コロナ直後にスーパーから消えたもの
消毒液、トイレットペーパー、食料、マスク。
2020年、世界的にコロナが流行し始めてから、これらはあっという間に身の回りから姿を消しました。
買い占めが起こったんですよね。
この買い占め、いうなれば「利己的」な行動ですよね。
次にいつ買えるかわからないから、その時までしのげるように買っておこうという気持ちは当然働きますし、自分の身を守るための行動ですが、必要以上にものをため込むのは言ってしまえば自分勝手な行動なんですよね。
本当に必要な人には届かないわけですから。
自分勝手な行動(ここでは買い占め)がダメな理由がつづられています。
一般家庭における買い溜めは、まさに社会全体への想像力が欠けるとどうなるかということを示している。例えば、ハンド・サニタイザーは、いちいちすすぐ必要がなく、瞬時に手の殺菌を行うことができることから、医療現場や保育現場などにこそ必要なものだ。一般家庭で自主隔離をしている人々は、いつでも好きなときに洗面台のある場所に行って手が洗えるのだから、そんなものは無くても困らない。看護、保育、介護などのトリッキーな状況に直面することの多い現場で働いている人々の日常を想像できれば、いや本当にこれが必要な人たちは他にいるよねとわかるはずなのだ。
コロナ予防には手の消毒が有効。
ハンドサニタイザーでなくて石鹸でもいいはずなのに、買い求めて買い溜めしてしまう。
そもそも、大前提として、ハンド・サニタイザーにしてもトイレットペーパーにしても、心からウイルスが怖くて爆発的感染を食い止めたいと思うのであれば、大量に買って自分の家の戸棚の中に眠らせておくより、世間の人々に使用してもらったほうがいい。買い溜めで流通をブロックすれば、世の中に手やお尻が不潔な人を増やすことになって、公衆衛生を劣化させ、いよいよ感染が蔓延する環境を作ってしまう。
この部分、確かにな、と思いました。
消毒液やトイレットペーパーを買い溜めして、自分の身を守っているようにも見えるけど、決してそういうことではないんですね。
買えなかった人たちは物品を使えないので、結果的に社会全体の衛生面が悪くなってしまいます。
パニック買いは非常に利己的な行いのように思えるが、実はまったく自分のためになっていない。なぜなら、それはコミュニティ全体のためになっていないからだ。感染症のようなコミュニティ全体が改善されないと蔓延する病気では、自らのミクロな行動がマクロにどういう影響を与えるのかという想像力を持って行動しないと、最終的にはミクロな不幸(感染症にかかって重篤化するなど)がダイレクトに自分の身に降りかかる。
「自分のことだけ考えていればいい」と利己的に行動しているように見えて、結局よくよく考えてみると、自分のためになっていない。
消毒液やトイレットペーパーを買い溜めして自己防衛できていると思っても、周りのコミュニティにコロナが蔓延していたら、自分がコロナにかかるリスクも自然と上がってしまう。
だから、自分勝手ではダメなんだと。
「人にしたことはいつか自分に返ってくる」
結局まとめるとそういうことなんですが、そんな端的な説明に説得力を与えてくれる有効なエピソードだなと思いました。
他者のため、は自己防衛手段の1つ
人間が社会を形成している限り、完璧な「個」になることは難しいことです。
完全な自給自足生活でもしないと、1人にはなれないんですよね。
もし人間が1人で生きていけるのなら、「他者」への考えは不要なのですが。
冒頭に出てきた、原始時代の「狩りの腕前抜群の男」も、1人で生活できるのならずっとそのままでいいのかもしれません。
でも、コミュニティに属している限り、1人で生きていくって至難の業。
どこかしらで関わりはありますし、知らないうちに助けられていることもあるわけです。
自分自身のことを本当に考えるのなら、自分勝手ではダメなんですよね。
自分のためではなく、他者のために動くことで自分のためになる。
そんなお話でした。