【連載】家族会議『偽善上等』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議19回目#10|偽善上等
――7人兄弟の末っ子の父は、小さいころに起こった出来事の事情がわからないことが多い。
父が3,4歳の頃、次男の伯父は川で亡くなったのだけど、その時の事情を父は憶測で話している。
唯一生きていて、横浜に住んでる3つ上の男兄弟に聞いてみてもいいんじゃないかと思ったのだけど‥‥
父:
あの人はわかったような話をするから、喋るかもしれないけど。
わたし:
そうなの?
父:
どこまで本当か、ちょっと疑問だな。
わたし:
そうなんだね。笑
父:
一番多分知ってるのは、はまこおばちゃんかな。
わたし:
はまこおばちゃんも、もういないもんね。
父:
だから今は、できるだけ知ってることは喋ろうと思ってるから。できるだけの話を喋る。それ以上のことはわからない。
母:
生きてるうちじゃないと話できないもんね。
わたし:
なんかそれを思うね。本当に。いろいろ最近話してるとさ、おじちゃん(長男)なら知ってるかもね。みたいな話になるよね。
父:
だから残念なのは千厩の家系図(祖父の実家)が書けないんだよ。あとは唯一、兄貴(横浜に住む伯父)がどれだけ知ってるか。
もう兄貴が言ったことを半分嘘だとしても、それを信じて書くしかねえんじゃねえか?もう。
わたし:
なに?あんま好きじゃないわけ?笑
横浜のおじちゃんのこと。
父:
好きじゃないっちゅうのか、要するに膨れてるんだよ話が。
わたし:
そうなんだ?
父:
それは昔から知ってるから。知らない人が聞くと、わぁ~と思うんだけど、知ってる人が聞くと、ゔ~ん思ってさ。
わたし:
ふうん。お父さんもあるよね。笑
父:
そんなもんじゃねえぞ?
わたし:
そうなんだ?笑
――伯父がどう話を盛るのかは知らないけど、父も相当な盛りようだ。たぶんだけど、伯父より父のほうがひどいと思う。
わたし:
ひどいんだ?なんかそうそう、前から思ってたけど、横浜のおじちゃんに対するライバル心っていうか、なんかあるよねって思ってたけど。
母:
それはもうずっと、私も結婚したときから感じてるけど。で「なんなの?」って、何回か聞いたことあったりして
父:
何かその辺は伸(長男の息子)も感じてんじゃねえか?
わたし:
だから仲良くなれるのか。お父さんと伸兄ちゃんはわかり合える。
――長兄の子供であるいとこの伸兄ちゃんは、なぜか父を慕っている。どこがそんなにいいのか‥‥。
父:
そうかもしんねえな。
わたし:
なんか、お父さんならわかってくれるみたいな感覚があるのかな。なんでだろうね。横浜のおじちゃんそんなイメージないけど。
でも確かに真実を知らないとね、知りようがないもんね。嘘なのか。盛った話なのかどうか。
でもなんか‥‥、横浜の子供たち(わたしのいとこ)って、なんか素直な感じだよね。
母:
うん。
わたし:
すごく。おばちゃんの影響なのかな。
――いとこたちの素直さを見ると、伯父さんがそんなに変な人には思えないのがわたしだ。
このあと父は、伯父の話に対する疑念をあれこれ話し出した。省くけど。
わたし:
だからあんまり信用してないんだ。
父:
信用してないっていう、ことなのかな?
わたし:
好きじゃないだけ?
父:
好きじゃないっていうのかな?
わたし:
なに?嫌い?
父:
嫌いというのかな?笑
泉に任せた。
わたし:
いいの?お父さんの感情わたしに任せちゃって。
父:
いいです。
わたし:
じゃあ嫌いなのかな。「嫌いなのかなぁ」って思いながら聞いてたから。
なにかと批判的っていうか、なんか負けたくなさそうな感じとか出てくるなと思って。歳近いからかな。
父:
なんか、遊んでないんだよまず。小さいときから。
――このひと言を聞いて思った。父は、もっと兄に遊んでほしかったのかもしれないと。それをずっと、根に持っているのかもしれないと。
母:
同級生がいっぱいいたからみたいなこと?
父:
それ(友達)は居たからいいんだけど。兄貴と遊んだ記憶がないんだよな。一番腹立ったのが、小学校の頃。
わたし:
腹立ってるじゃん。笑
父:
何倍かという話があってさ、3倍か4倍かの計算。
「これ何倍か」って聞いたら「倍だよ」。「倍って何倍だ」って聞いたらば、「倍だつってんだろ」って、そこで喧嘩始まっちゃう。「その倍を聞いてんだよ」「倍ったら倍だ!」って。笑
わたし:
何かあれかな。お父さんの方がどんどん頭良くなって、賞状とってきたりするから、横浜のおじいちゃんも面白くなかったのかな。
――想像するに、父はマウントをとろうという魂胆があったんじゃないかと思う。性格的に、素直に人に教えを乞うタイプじゃないし。
本当はわかっていて、兄がどこまでわかっているのか試したんじゃないだろうか。だから伯父さんも、投げやりに答えたんじゃないか‥‥っていうのは妄想だけど。
母:
それがそういう態度に出て、それでお父さんが今度嫌な気持ちになって。
わたし:
複雑に出るからね。
母:
でも一応、兄弟仲良くって言ってたよね。
父:
仲良くしてますよ。
――うわべだけどね。
母:
お義父さんの兄弟は仲悪いんだって。だから「自分たちは兄弟仲良くしようね」って言ってやってきて。それはお義兄さん(長兄)が言ったことかな。それで「仲良くやってきたよ」みたいな。
でも仲いい方だとは思うけどね。
わたし:
うんうん、とは思う。それは思うけど、なんかちょっと無理がある。仲の良さに。ってことだよね。もうちょっと本音出してもよかったんじゃない?みたいな。でもまあ、なんかいい関係ではあるよね。
母:
そうだよ。
わたし:
だってお葬式行くしね。きっと来てくれるしねって思うもん。そこ大事だよね。
母:
少々のね、何かがあっても来てくれる程度の関係っていうか。
――兄弟仲が悪く、大人になって絶縁状態になる兄弟もいることを思えば、父の兄弟は良くも悪くも一致団結している。偽善で。
偽善で成り立っている兄弟だけど、つながりを持ち続けることは何かの支えにはなる。大人になって、そういう繋がりも大事だよなと思う。
偽善だから、あまり波風も立たないし問題も起きづらいし。
それはそれで、大人の付き合いとして有りなんだろう。
ただ気になるのは、兄弟の中で父が一番、腹の底にどす黒いものを抱えているように見えることだ。そのフラストレーションを、わたしたち家族で憂さ晴らししてきたようにも見える。
末っ子という立場で、親や兄弟に従うしかなかったうっぷんを、家族の中の絶対的権力者になることで晴らしてきたかのように。
そう考えると、そこの兄弟が表面上「いい感じの兄弟」という体裁を保つために、しわ寄せがこっちに来ちゃってるんですけど。って思うのだ。
― 家族会議19回目おわり ―
大人になって親戚づきあいって大事だよなあとしみじみ思う。それが偽善だとしても。
だけど、家族が崩壊しそうなとき、偽善で付き合っている親戚には何も話せない。冠婚葬祭では協力してもらえても、本当に助けが必要なときに助けを求められないなぁって思う。
父がもっと兄に頼れたら。わたしたち家族の状況も、少しは違ったかもしれない。
家庭内別居中のわが家に伯父一家が遊びに来ることになって、「居て、参加してほしい」と言ってきた父。
取り繕いも、ここまできたら上等だ。
<次回に続く>
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