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良き老人になりたい

人は何事も、自分の都合のいいように解釈するクセがある。<お客様は神さまだ>というのも、その代表的な事例だ。

東京都が悪質なカスタマー・ハラスメントを規制するための条例を議論しているという。読売新聞の『編集手帳』ではその話題にからめて<お客様は神さまだ>の本来の趣旨を紹介していた。

三波春夫さんのセリフとして知られるが、実は言い方も、趣旨も違っている。「神前で祈るようなまっさらな心でなければ、完璧な芸はできない。お客様を神さまと見て歌う」。客の側がその気になるのは滑稽だ。

2024.5.12 読売新聞『編集手帳』

お客様を神さまと見るのはサービスを提供する側の心得であって、お客様側が自分を神だと思い込むのは大きな勘違いということだ。しかし勘違いする人は後を絶たない。その理由のひとつには、その人自身の「満たされなさ」があると思う。


わたしの父は、まさに<お客様は神さまだ>を地で行くタイプだ。客であるとき「俺は客だぞ」と大手を振って歩いているから一緒にいると恥ずかしい。日常生活で満たされない権力欲を、外で満たしたいのだと思う。

そう考えると、こんなこじらせ老人が生まれてしまったのは家族にも責任の一端があるかもしれない。と思う。長年、父の権力欲を満たしてきてしまったのだから…。

とはいえ、これからも父の望み通りに欲求を満たしてあげることはできない。「自分を大切にする」ということを知ってしまったからだ。

父にもそれを知ってほしいのだけど、77年も人に依存してきて今さら無理かとも思う。でも「77歳になっても変わることができる」という前例を打ち立ててほしい気持ちもある。

たぶんそれは「わたしの父なんだからできるはず」という根拠のない期待と、やっぱり、「満たしてくれない、満たしてくれない」と求め続ける苦しみから解放されて幸せになって欲しいという願いかも。

まぁ、家族がどれだけ「自分と向き合い本当の幸せを見つけてほしい」と願っても、父からすれば「それはお前たちが満たし続けてくれさえすれば済む話」ってことだから、どこまでいっても平行線なんだけど。


わたしは良き老人になりたいなぁ。


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心乃泉
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