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【連載】家族会議『放置された苦しみの悪影響』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし:性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。
家族会議22回目#4|放置された苦しみの悪影響
――里帰り出産をしなかった母は、第一子を出産後、育児ノイローゼになっていた。
育児疲れからぼーっとしていて、遮断機の下りてきた踏切に入っていきそうになったというエピソードがある。
この日の家族会議は、その当時の状況やら心境やらを話している。
父:
出産のときに大変だっていう話はね、なんていうんかな、俺の頭の中どうなってるかというと、基本的に何も知らないんだよ。勉強もしてないし。
それでね、独身の頃ね、鈴木さんのうちによく遊びに行ってたんで、鈴木さんの奥さんから「何を食べたい?味噌汁するんだけど」っちゅうから、「味噌汁こんなのがいいよ」とか言って、餃子作ってくれたりさ。で、食事ご馳走よくなってたんだ。
そのとき鈴木さんの奥さんが、やっぱりあの人も帰らずに大阪で(子供)生んだのね。で、その人が「帰らずに私1人でやったんだよ」と、美化してるっていうか、自慢気に話しててさ、「はあ。」と言うしかなかった。何が自慢なのか、いいのか悪いのかさえもわからんかった。
そういう頭で、いざあなた(妻)の番になって、俺の頭はどうついていったらいいのか、わかんなかったな。
だから「帰ってやった方がいいんじゃないか」って言ったときも、「いや1人でやる」と、言ったとき「そうなのか」と。鈴木さんも1人でやったから、「そんなもんなのかなあ」と。
鈴木さん曰く、帰って、鈴木さんの奥さんいるわけだ。帰ってそういう出産をやるとなんか、世間体が悪いっちゅうかね。
母:
ん?帰ってって実家に?
父:
実家に。
――父の話は、頭がこんがらがる。
母:
実家に帰ってやると、世間体が悪い?
父:
というか、
わたし:
お母さんと同じ考えってことじゃない?甘えてるみたいな。
母:
そういうことなのかしら?
父:
で、やっぱり1人でやると、なんか「やったわよ」っていう感じになるって、言うことをよくおっしゃってたから。なんかよその辺がよく理解できなかった俺。
わたし:
それだけ大変ってことだよね。
父:
大変なことって全然理解できなかった。
――理解できなかったのではなく、理解しようとしなかったのだろう。
「女」を見下している父にとって、女が語る苦労なんて取るに足らないことだ。
母:
「すごいことをやったのよ」ってことね。ひとりでね。
私は遠かったのもあったね。
父:
大阪と岩手でね。
母:
遠いから。妊娠してる体で行くわけでしょ?だから早めに行かないと。あんまりギリギリじゃ、体調が崩れたりするかもしれないから早めに行かなきゃいけないし、遠いからこそ、今度は戻りも遅くなる。
わたし:
旦那さんほっといて、実家に帰っていいのかなってことだよね。
母:
でも一番はやっぱり、2人の子供なんだからっていうのがあったな。
細かいことは自分がやろうと思ってたけど、でも、例えばもうすぐ産まれそうになったらちょっと落ち着かないわけじゃない。いつ生まれるかって。そのときはタクシー呼んでどうするとか。
とにかく、私が実家に帰れば何も気にしなくていいことを、ちょっとは気にしたりしなきゃいけないじゃん。そういうのは、2人の子供だから当たり前っていうか、そんな気がしてた。
そんな感じのことを、私も(当時)言ったと思うけど、どんな感じでお父さんは聞いてたのか。また違うのかもしれないけど。
自分たちでやろう。やりたい。やる。やんなきゃいけないんじゃない。みたいなのもあったかな。
父:
だけどね、あの頃は一応やったと思ってんの俺は。だけど、話聞くと、足りないなと。これじゃと。いう感覚になった昨日の話(育児ノイローゼ状態になっていた話)聞いてて。
あの頃の自分としては、一応、自分のできることはやってるよな。という気でいたよ。
生まれたときが、広島出張のときだろ。で、広島のお客さんから「もう帰っていいよ」って言われたから、早めにしまって。即新幹線乗り込んで病院に直行したし。
母:
お父さんがやってくれなかった。とかというよりは、自分で言わなかったっていうのもある。やっぱ精神的なところだよね、大変だったのは。
もちろん作業も大変だけど、それは若いから、大変だったけど何とかやってた。やっぱり精神的なものかな。
父:
精神的なものっていうのは、やっぱりある程度理解してないと、俺も無理だったな。
母:
私自身が自覚もないから、うまくそれを伝えられなかった。自覚ができてないと言えないしさ。
それに、育児書通りにやろうみたいな感じとか、そんな細かい、私の思いみたいなのお父さんもわかんないと思うし、自分が自分のことを知らないっていうか。
とにかくがむしゃらにやって、自分で自分の首絞めたのかもしれないし、大変なときに、どう大変かっていう説明もできないような、幼い。いろんな意味で幼かった。
ていうのが一番のあれだな。
自分の精神状態がどうかなんて、本当わからない。そういうの、どこでもしたことないし、大体が、自分の気持ちをしまう。出さないっていう訓練してたから。
だけど心の中ではいろんなことを思うよね。でも、その思いをどうするのかっていうのが全然。幼いというか、できてないというか。
――父は、母自身に問題があったのだと言わせるのが上手いなあと思う。
確かに、母にも幼さや、意固地になったことなど、自分で自分を追い詰めたという問題はあった。
母はそうやって自分の問題点を認識するのだけど、父はこうやって、やれることだけをやって母に責任を押し付ける。
― 今日はここまで ―
自分の気持ちを出さないのは、日本人の気質でもある。
とくに、「弱音を吐かない」ことが良しとされ、「我慢は美徳」とされてきた。
そうやって心の中にしまいこんだ苦しみにも、行き場が必要だ。
しまっておけばいい。
とはいかないのが苦しみなのである。
しまい込まれて放置された苦しみは、人の幸せを奪っていく。
ある人は育児ノイローゼになり、ある人は自己愛性パーソナリティ障害になり、ある人は鬱になる。
<次回に続く>
これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!
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