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【連載】家族会議『ほしいのは答えじゃない』

「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。

前回の記事はこちら。

【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし:性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。

家族会議16回目#9|ほしいのは答えじゃない

家族会議16回目のこの日の最後、わたしと姉との会話をシェアした。


わたし
そうそう。昨日お姉ちゃんと話しててさ。昨日の話。


しょうがないっていうお母さんの発言ね。

わたし
うん。「わからないからしょうがないんだけど、その前に、そこ(解決)に行き着く過程で悩んでるわけだから、そこ(過程)に寄り添ってあげないとさ」っていう話したじゃん?


――「しょうがない」という母の発言の話は録音には残っていない。4年前のことだからうろ覚えだが、「姉の苦しみをわかってあげられない」という話だったと思う。

母としては、わかってあげたい気持ちはある。
だけど自分が未熟だからわかってあげられない。
こんな段階のわたしだから、しょうがないよね。

と、母はそんなことを言ったのだと思う。


それに対しわたしは、「解決してほしいのではなくて、解決しようともがいている”今”に寄り添ってあげないと」という話をした。


わたし
(母と)そんな話をしたんだって、お姉ちゃんに話したら、「もうずっとここ最近、泉には感謝してるんだけど。本当に。それをずっとしてもらいたかった」「一緒に考えたり悩んだりして欲しかった」って言ってた。

お父さんもお母さんも、基本的に「わかんないから無理」って感じで拒否されて、それで済まされちゃうから「一緒に考えたり悩んだりできなかった」「ずっとそれがしたかったし、してもらいたかった」って。

だけど、「散々言ったりやったりしてきてできなかったから、もう無理だと思ってたのに、泉が今こんなふうに話してくれて、お父さんもお母さんも変わってきたりしてて、わかってくれるようになってきたりもしてて、それがすごく嬉しい」って言ってた。


わかってきてる…。昨日もあんなこと言ったんだもん。わかってないじゃんね。

わたし
わかってないけど、こういうふうに話すことで、ちょっと意識はするでしょ?

だから、やっぱりお姉ちゃんも「一緒に悩んだり考えたりしたかった」ってことみたいだから、わかるかわからないかとか、正しいか正しくないかじゃない。ってことなんだよね。そういうことみたいだよ。


- 家族会議16日目終わり -


悩んでいる人を前にすると、本人の苦しみを取り除いてあげたくなる。

だから「解決策」を提示しようとする。「こうすればいいんじゃない?」「ああしてみたら?」と。


あれこれ提案してみて、解決することもあるかもしれない。
でも、相手の表情は曇ったまま…となると、人は何を思うだろうか。


おそらく、「提案がイマイチなんじゃないか」と思うだろう。


ここで躍起になって「もっといい提案をしなければ」となる人もいれば、「自分にできる提案はここまでだ」と考える人もいると思う。

前者は戦闘態勢で、後者は諦めモードだ。


わが家の両親は、どちらかといえば後者。

正確にいえば、父はもともとは戦闘態勢だったけど、結局のところ「わからない」と諦めた。母はなんとかわかろうと必死だったけど、「わからない」自分を受け入れた。

そんな感じだ。


だけどそもそも姉は、解決してほしいわけでも、提案してほしいわけでも、答えがほしいわけでもない。


一緒に悩んでほしいだけ。

一緒に考えてほしいだけ。


答えのわからない問いを抱える苦しみを、わかってほしいだけだった。


父も母も、答えがわからないのだから、本当はその苦しみを、わかってあげられるはずなのだ。

なんてもったいないんだろう。


かくいうわたしも、苦しみを取り除こうとしてしまうひとりなのだけど。

<次回に続く>


これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!

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心乃泉
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