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【連載】家族会議『世論への責任転嫁』

「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。

前回の記事はこちら。

【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし:性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。

家族会議17回目#6|世論への責任転嫁

――父は言う。

現役が終わっても上下関係を振りかざす人は嫌だし、自分は上下関係がない社会の人とは対等に付き合っている。そこに何の抵抗もない。と。


だけどその認識は、現実とギャップがある。


現実の父は、社会でも「客・年上・父親」などの立場を振りかざし、上から目線で偉そうに振舞う。思い通りに相手が自分を立ててくれなければ怒り出す。


しかし、自分がそんなことをしていることを、「覚えていない」と言う。


わたし
なんだろうなぁ‥‥。感情に飲まれるのかな?覚えてないわけじゃん?お父さんは。

その瞬間、もうカーッとなって、もう一瞬にして飲まれちゃう?なんかの人格に?で、その後はパーッと忘れちゃう。

だとしたらすごく都合のいい人格がいるのかなって。

そういう意味では本当、人格がいろいろいるって思ったほうが、むしろお父さんを受け入れやすくなるわ。


――イカリの感情って、そういうものなのかもしれないねと、昨日、母や姉と話していた。

6秒我慢すれば静まると言われるイカリは、裏を返せば、それだけ突発的に高ぶる感情ということだ。

だけど一般的には、覚えてると思うけど。



さっきスイッチを入れ替えるとか言ってたけど、まあ、それも人格。お父さんのイメージと違うかもしれないけど、人格のようなこと言ってるよな?みたいには思って聞いてたけど。

わたし
うん‥‥そう。

お父さんを責めるみたいになっちゃって、すごい嫌なんだけど、でもやっぱり言ってることと、見てきたものに「違う」って思う部分があると、やっぱそこ、客観的に見れないんだなって思っちゃう。

(自分がしたことが)無かったことになっちゃうっていうのは、だとしたら別人格?その時々で出てくる人格が違うみたいなこと?で、完全にもう切り替わっちゃう?

そう思えば記憶がないのも納得はいくけど。

でもお父さん、人格がいろいろあるって話も納得できないよね?だとしたら思い出してほしいって感じ。ぶっ壊すとかじゃなくて、まず、思い出せないと治しようもないと思う。


――家族会議の中で、父の問題点をいろいろ指摘したら、父は自分を「ぶっ壊す」ことにした。

だけどそのやり方に問題があって、こんな話をする流れになったのである。


わたし
この録音の中でもさ、やっぱり「覚えてない」って言ってたけど。

前も言ったけどさ、お父さんにされて嫌だった話とかを「覚えてない」で片付けられちゃうと、さらに傷つくわけだから。

なんかこう、覚えてなくても思い出す努力は必要かなっていうか。思い出そうとしてほしいって感じかな。

それでも思い出せないことも中にはあると思うけど、思い出せないにしても思い出そうとしてほしいし、それで思い出せなかったとしても、「じゃあなんで、自分はその時そんなこと言ったのかな」って考えてみてほしいなって思う。


‥‥もう、嫌だー。


――父はこういうとき、怒鳴って反発してくるか、被害者意識に入り込むかのどちらかだ。

ここでは被害者意識に入り込んでいる。となると、罪悪感に駆られるのがわたしだ。


わたし
言いたくないんだけど。お父さん病気になっちゃいそうだし。
まだ反論してもらった方が、わたしはいいかもしれない。


いや、その通りです。
言うことないわ。
おっしゃる通りです。

わたし
うん‥‥。おっしゃる通りでもさ、別に反論してもいいっていうか。「でもできないんだもん」とか言ってくれてもいいっていうかさ。


反論できませんよ。

わたし
まあ、お父さんこういうふうに話受け入れてくれるけど。でも反論の気持ちないの?できないとかじゃなくて。

わたしのことを思えば反応できないっていうのはわかったけど。
わたしが正論だなって思うから、それに反論することなんてできないっていうのはわかったけど。

それでもさ、理屈じゃなく嫌なこととかあるんじゃない?

だって覚えてないわけじゃん?自分がしてきたこととかさ。だとしたら、あんなこんな言われても、「知らないもん」「俺じゃないもん」「そんなことするわけないもん」みたいになるよね?

まあ、そういう反発してくることもあるけどさ。それにはわたしも、またさらに反発するけど。

だけどもう、言ってもいい。そういうの出さないから、なかなか治らないのかなって。むしろ出しちゃった方がいいんじゃないのかな。


出すものがないよ今の言葉で。

わたし
ない?むかつきはしないわけ?わたしに言われて。


むかつく気っていうか、今、だってこういうことをやる場で言われてんだから、いいんじゃないのと。

わたし
いいんじゃないの、か。まあなんかそれならいいんだけどさ。


えっとなんかお父さん、私には?


だからあなたにも前言ったでしょう。こういう場だから、言葉をぐっと引っ込めないで、どんどん言ったらいいじゃんって。


ありがとう。


それとなんか変わりあるかな?


お父さんも思ったこと‥‥


言ってるよ今まで。


今泉が言ったことにじゃなくても、私になんかあったら言って‥‥


うん、なんて言うんだろうな。まだそこまで、昨日の今日だから。なんていうの、声が荒々しくなっちゃうから。


なっちゃう感じなんだ。


今はとにかくできるだけ。


時間が欲しい?時間が経ったら何?


反論するにしても、少し優しく反論したいな。そうじゃないと、あまり進歩がないような気がして。議論するにしても優しく議論したいというのがお母さんの願いでもあるわけでしょうよ。


今だとそうはなれないから?


たぶんなれないと思う。


あとなら何か言うよみたいなこと?


うん、時間をいただければ。


言葉を考えて。


優しくね、話せるようになると思う。


- 今日はここまで -


父は反論の余地がないと思ったとき、「じっくり考えてみるから時間をくれ」といつも言う。

悪いことではない。

アンガーマネジメントで言えば、このとき怒りを我慢して、じっくり自己分析してみるのなら、それは有意義なことだろう。


だけど父は、この時間を使って自己分析などしない。自分を省みることをすっ飛ばして、世論を味方に論破する方法を考えている。

そしてそれはたいてい、偏見まみれの世論を参考にしてしまうのだ。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」みたいな感じ。

つまりは、世論に責任転嫁してしまう。


父がひとりで時間を置いて考えると、ろくなことにならない。

<次回に続く>


これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!


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心乃泉
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