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【連載】家族会議『親の背を見て子は育つ』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。
【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし:性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。
前回の記事はこちら。
家族会議31回目#8|親の背を見て子は育つ
どんな大人になっているか、それには親の影響が大きい。
差別意識も偏見も、親の意識や価値観が受け継がれていることが多い。
わたし:
お父さんも家族会議で同じようなこと言ってたね。「親の背中を見れば子は育つ」とか‥‥。
母:
この言葉もよく言ってた。聞いたことはない?
わたし:
言ってたような、言ってないような?
母:
だからお父さんがこのことを言ってんのに対しても、馬鹿にしてたよ。よく。親の背中を見て子は育つ?その意味の取り方が、全然違うよなって思うの。その言葉の持つ意味を正しく理解はしてない。
わたし:
うんうん。
母:
お父さんは言ってはいるけど、どっちかっていうと、お父さんがやってんのは子供に背中を向けてるって感じ。そう思ってたずっと。
わたし:
お父さん単純だからね。
母:
背中を見せるじゃなくて、背中向けてる。意味違う。意味っていうか、全然違うと思う。
わたし:
だから浅いんだよね。お父さんて。
「親の背を見て子は育つ」ということわざがあります。このことわざは、「子は親を映す鏡」ということわざと同じと見なされています。すなわち、親と一緒に暮らしている子どもは、親のよい面もわるい面も自然に身につけてしまうから、親は、ふだんから自分の言動に気をつけるべきだ、という意味している
――「親の背を見て育つ」は、どちらかと言えば親の教育に対する戒めだ。子供の前で、親がどうあるべきかを説いている。
だけど父は、この「ことわざ」を、教訓が含まれた「ことわざ」として受け取っていない。言葉の通りに受け取って、「子供は親を見て勝手に育つ」と理解している。つまり、自分が何かをする必要はないと、思っているのだ。
母:
そういう、いろんなところで心の中でツッコミ入れちゃって、お母さんはお父さんを馬鹿にしてる。
わたし:
そうだね。
‥‥馬鹿にしてる人とうまくいくことってないよね。ないんだよ。わたしないもん。なかった。馬鹿にしてる人とうまくいったことなんて。笑
母:
そうだよね‥‥。
わたし:
だって、馬鹿にしてる時点で、うまくいこうとも思ってないよね。わたしだったら。だって馬鹿にするような人とさ、仲良くしたいと思わないんじゃん普通。
母:
そっか‥‥だって馬鹿にするところいっぱいあるんだもん。どうしても。
最初に馬鹿にされなければ、とりあえずはそんなじゃないんだけど、とにかく偉そう。
わたし:
反発心から余計にそうなるよね。
――父が母から馬鹿にされるのは、自業自得な面がある。こんなにも何も知らないのに、自分は利口だと言わんばかりの態度で母(女)を見下してきたからだ。
母:
違うのに自分はポジティブって言ってるし。
わたし:
わかるーわたしもそういうところだもん。軽蔑してるの。
なんかさ、ポジティブだとか、結婚当初、根暗だとか根明だとかそういうこと言ってた話聞くと、お父さんって、根明になりたかったのかなって思った。結婚デビューだったのかなと思ったの。
母:
どういうこと?
わたし:
高校デビューとか大学デビューとか言うでしょ。自分の過去を知ってる人がいないところで、自分をセルフプロデュースして別人としてデビューするみたいな。自分を知ってる人がいなければ、イメチェンした状態で最初のスタートが切れるから。
母:
そうだよね。何も知らないところから。
お父さんの会社で一緒に働いてたわけでもないし‥‥あぁー、結婚デビューね。
わたし:
お見合いだしさ、「こういう自分で行くぞ」っていう。笑
なんかそういう意気込みみたいなのがあったのかなって。
――父の口癖は「ガラガラポンして最初からやり直したい」だ。このぐちゃぐちゃになった家族関係も、ガラガラポンしたいという。
そういう発想が父にあることを考えると、結婚はガラガラポンだったのではないかと思う。
母:
自分で「俺はこうだよ。俺ってこうだよ」みたいな。
わたし:
うん。そもそも、高校デビューする子も、うまくいく場合もあると思うけど、根暗の子が根明になろうっていうのは無理があるよね。見た目を変えるみたいなのはできると思うけど、性格を変えることって難しい。
母:
そうね。短い間ならともかくね。
わたし:
だからデビューしても失敗しやすい。
母:
結婚デビューかぁ。言われてみれば。
わたし:
男としてこうしたいとか、明るくてポジティブな人になりたいとか。そういうのを何も知らないお母さんの前で、「俺はこうだから」って言って作り上げていこうとしたっていうかさ。
でもやっぱ、見た目とかはできると思うけど性格は難しい。それこそ相当頑張らないと自分が。宣言したからって変わらないから。だから失敗しちゃったのかな。って感じ。
誰でも少なからずあると思うんだよね。新しい彼氏ができたときに、自分をよく見せようと演じたりとかさ。でも、付き合いが長くなってくるとボロがで出てくる。そういうのってやりがち。でも結婚って先が長いから、自分じゃない人を見せ続けるのは無理がある。
母:
うまくいかなかったらいかなかったでさ、最初はそんな意気込みでやったとしても、「こういうつもりだったけどうまくいかなかったな」とか、あればいいんだけど
わたし:
うん。笑 お父さんの場合弱みもみせられないからさ。訂正できないまま、もう取り繕い取り繕い。でもう、ボロボロの状態って感じかな。取り繕いきれなくなった。
母:
結局、私と似たようなもんだったわけじゃん。私のこと根暗だって言ったけど、自分もそうだったわけなんでしょう?
わたし:
そうだよね。
この前の、家族会議いったん中断しようって言ったときの、悲壮感漂う感じもすごかったもん。次の日の朝かな、なんかすごかったもん、とにかく。笑
母:
暗かったってこと?
わたし:
暗いっていうか、本当悲壮感を漂わせて。最悪だーと思った。しかもそこに、気持ちが全く感じられないところがすごいなって思っちゃった。
パフォーマンスにしか見えないから、見せられるだけ余計に冷めるんだよね。だから本当、そういうところからは親の背を見て学ぶなぁって思う。
仕事でクレームになったときにも、やっぱね、必要以上に下手に出ると、お客さんって逆に怒るんだよね。余計こじれることある。それって結局、下心が見えるっていうか。「謝って許してもらおう」って。だから「悪いと思ってないでしょ」ってなる。
母:
あー。悪いと思ってないのに形だけを
わたし:
もう形だけにしかやっぱ見えない。そういうのってわかっちゃうんだよね。
母:
とにかく謝っとこうみたいな気持ちが。
わたし:
そうそう。本当に悪いと思ってない。その気持ちが入ってない。何が悪かったのかもわかってない。怒ってるから謝ろう。みたいな。そういうスタンスだと、本当に手のつけられないぐらいのクレームになったりする。お客さんっていうか、人付き合いってそういうもん。
だから、ただ謝っても意味ないし、一番は何がいけなかったのかをちゃんと理解して、それ相応の謝罪をする。ことがまずは一番大事なことであって。
母:
それ相応の謝罪。自分が思ってるぐらいの謝罪?いや、違うか。しっかりわかんないとそれ相応の謝罪ができないよね。
わたし:
うん。そうそう。とにかく理解してるかどうかが一番大事。どれぐらい悪いことをしたのかとか、何が悪かったのかとか。それをわからないで謝っても、何も伝わらないんだよね。
まさにそういう感じだったっていう感じ。
母:
お父さんがね。
わたし:
だから本当、よくないなって。勉強なるわって感じだった。これは本当最悪だなって。
― 家族会議31回目おわり ―
親の背を見て子は育つ。
実際、わたしも姉も、親の背を見て育った。
親の背を見てきたからこうなった。
姉が鬱になったのも、私が転職を繰り返すタイプなのも、親の影響である。
そうでしかない。
だけど父は、子供らが自分の背中を見て育ったとは到底思えないだろう。
自分の背中を見ていたらこうはならないはずと思っている。
それはつまり、父自身が、自分がどういう人間であるかを知らないことを意味する。
ここで自分を振り返ってみるのが普通だろうが、それができないのが父だ。
物事や言葉が「意味するもの」がわからない。
わたしたち子供がこうなっていることが「意味するところ」がわかならい。
点と点がつながらないみたいな。
それが、父の特徴であり、アスペルガーの特徴ともいえる気がする。
「あ」と「い」が繋がって「愛」になり、「愛」という言葉には「いとしく思う気持ち」や「かわいいと思う気持ち」、「心が温かくなる感覚」など、ひと言では言い表せない気持ちや感覚が内包されている。
それがわからない。
父にとって「愛」は、「あ」と「い」でしかない。
それでいて、父の中に「愛」は存在している。
強く欲しているあの感情と「あ・い」が結びつかないもどかしさ‥‥。
<次回に続く>
これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!
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