日本人の現金依存症と奨学金破産
日本の電子マネーの普及率が低いことは有名な話だ。ネットでは隣国の韓国の89パーセントに対し、日本はたったの18パーセント。中国や欧米にいくとスーパーでは数十円の買い物から、運賃のチャージ、屋台飯を食べる時すらクレジットカード一枚でほとんどの買い物ができることに驚く。逆に現金を使おうとすると、例えば、ドイツのスーパーでは高額のユーロ紙幣を渡すと偽札防止用のペンで入念にチェックされる。
あまり入念にチェックされると「信用されていないのか…」と思いたくなる一方で、考えてみれば当たり前だったりもする。例えば、日本の10円玉は「10円の価値がある銅」でできているわけではない。あくまで「それが10円の価値がある」と国が定めたものだ。だから、それが偽りのもの(偽金)なのではないかと思われるのはごく自然なことなのだ。クレジットカードとは異なり、もし、万一不正があった場合、現金では個人情報が追跡できない。(指紋採取による追跡はあるが、使用者自身が偽金をつかまされた人間だと先の追跡が困難)現金にも信用ならない部分があるにもかかわらず、現金に限らず、日本人は「目に見えているものにすがる」傾向がある。言うなれば一種の「現物依存症」だ。
この「近視眼的な浅はかさ」は奨学金破産という日本の社会問題まで引き起こしている。遠くにある目に見えにくい利益(教育の成果、将来の人材)ではなく、今目の前にある利益(貸付の金利)で得をしようとする日本政府は世界に恥をさらしている。ヨーロッパに長年住んでいて、奨学金で破産したなどという話は一つも聞いたことがない。奨学金が必要になる理由の一つは高い授業料だが、イギリスは高額なものの、ドイツは基本無料、フランスも比較的安価だ。自分も奨学金を探したことがあるが、日本の場合、大学卒業後に一度就職し、次の学業まで5年以上が経過すると、返済しなくてよい奨学金はほぼない。ヨーロッパの場合、ドイツのBafögなど、奨学金を返さなくてはならないとしても半額程度だ。(試験に落第しないこと、学業の期間が伸びないことが条件)中東難民など、発展途上国からのドイツで学びたいという学生のために無返済の奨学金制度が充実している。
日本の電子マネー低普及率にみられる日本人の現物依存症は日本人の近視眼的な「人としての浅さ」を証明している。奨学金破産などの日本の社会問題は政府の責任であると同時に、国民一人一人の愚かな心が原因でもある。弱者救済は大切だが、いわゆる「日本のリベラル」の人たちは一部のグループの人気をとるために政府批判するだけで、それらの社会問題が実は自分たち自身の心の問題であるという真実から目を背けている。
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