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食べたくない、作りたくない...抗がん剤治療中の食事と心の負担を軽くする方法

「なんだか砂を食べている感じなんだ」、「何を食べても味がしないの」、「とにかくおいしくない」これらは、これまで出会ってきた抗がん剤治療(血液内科勤務時にて血液疾患への抗がん剤)の患者さんたちの言葉です。このように、抗がん剤治療中、多くの方が味覚の変化に悩まされます。

現在は外来通院での治療も進み、仕事やお子さんのことをしながら治療を受けている方も増えてきていると思います。
日常の中で大切な食事。作るのも辛い、それでも周りを頼れない時の対応をお伝えさせて頂きます。



1.味覚障害の一般的な理解

抗がん剤治療による味覚障害は、決して珍しいものではありません。
以下のような特徴があります:

  1. 発生メカニズム: 抗がん剤が味蕾(味を感じる細胞)に影響を与えることで生じます。

  2. 症状: 味を感じにくくなる、味が変わって感じる、金属的な味がする、砂を食べているような感じになる、などの症状が現れます。

  3. 一時性: 多くの場合、治療終了後徐々に改善していきます。

  4. 個人差: 症状の程度や持続期間には個人差があります。

味覚障害は一時的なものと言われますが、やはり日々のことなのでとても大切ですよね。一時的なこの時期を少しでも気持ちを楽に過ごして頂くキッカケになればと思います。


2.食事作りの負担を軽減

味覚の変化や体調の変化により、毎日の食事作りが大きな負担になることがあります。特にお子さんが居る方、親御さんを介護している方など、ご自身が手を貸さないといけない場面があるかと思います。
すでに試していることもあるかもしれません。以下の方法を活用して、負担を軽減してみるのはどうでしょうか。

  1. お惣菜の活用:スーパーやデパートの惣菜コーナーを利用

  2. ミールキットの利用:食材と調味料がセットになったキット

  3. レトルト食品の活用:様々な味が増えたので、バリエーションを楽しめる

  4. 宅配食の利用:栄養バランスの整った宅配食を定期的に利用、冷凍可能なものも増えてきている


    栄養面や味の濃さなど気になる場合もあるかもしれません。
    確かに、市販のものは品質保持のためにある程度味の濃さが必要なこともあります。この食事が毎日毎日1年中続くとなると、健康面に不安はありますよね。そのため、期間限定として活用をしてみるのはどうでしょうか。

    *離乳食の場合は、市販のものも栄養面が整っているのでおススメです。ですが、やはりずっと続くと不安になりますよね。その場合は、自治体の保健師に相談をしてみましょう。食事以外のことも相談でき安心感につながります。まずは電話で相談の日程確認をしてみてくださいね。


3.心の葛藤:なぜ手放せないのか?

これらの方法を知っていても、食事作りを手放すことに心理的な抵抗を感じる方も多いかもしれません。それはなぜでしょうか?
「もっと周りを頼っていいのに」「いまはソレを手放してもいいんじゃない?」など、周りからも言われているかも。それでも難しいのは、あなたの思考のクセに種があるかもしれませんよ。

1.「家族の食事は自分が作るべき」という強い責任感がある。作らないことに罪悪感がある。その最初の種は、例えば幼少期の実母など様子です。
「母親は体調を崩しても常に手作りの食事を提供していた」。だからそれが母親として当然だ。といった思考のクセです。

2.【食事を作る=母親、娘の役割】という無意識の思い込みがある場合、その役割を失うことが怖かったりするものです。そのため、「すべて自分でやらなければ」となりやすいのです。

これ以外にもお一人お一人心の中に種を抱えています。
まずは、食事を作れないあなた自身をあなたが責める必要はありません。ゆっくりでいいのです。周りのサポート、活用できる資源(お惣菜や宅配など)を活用する。この味覚障害がある辛い時期を心も体も無理なく過ごせる方法を探していきましょう。




抗がん剤治療中の味覚変化と食事作りの課題は、身体的にも心理的にも大きな影響を与えますよね。

だからこ完璧を求めるのではなく、状況に応じて柔軟に対応すること。そして、周りの人々のサポートを受け入れることは、決して弱さの表れではなく、むしろ賢明な選択だ。そう思ってみるのはどうでしょうか。

自分自身に優しくなることから始めてみませんか?
あなたとご家族の幸せと楽しい食事への一歩になることを願っております。


かかりつけナースカウンセラー
岡田聡子


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