ちさここはる

映画と音楽を愛し、趣味で小説を書くシングルマザーでございます。 子どもと実家暮らし。夢…

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映画と音楽を愛し、趣味で小説を書くシングルマザーでございます。 子どもと実家暮らし。夢はでっかく映画化とアニメ化と書籍化!wwww

最近の記事

タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#25《最終回》

 乗客 JD 父親からの伝言  ――『フジタぁ~~雨はいいねぇ、乗客の財布も緩むし』 「待機場所によるって。俺なんか、イオンのタクシー乗り場だって言うのに、雨の恩恵が全くないんだよね。とくに今日は、誰もタクシーなんか見てもくれないよ」  俺は動くワイパーを目で追った。大手スーパーのタクシー乗り場なんだけど、人っ子一人とスーパーの出入口からタクシーを見ようともしない。高齢社会と自家用車社会だ。北海道で免許を持たなければ、地域にもよってになるが生活は難しい。だから北海道民の免

    • タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#24

       乗客 女王陛下(元) 後編 北海道に駆け落ちを   弟に送られて来た脳内の地図のおかげもあって、どこもかしこも敵さんに囲まれているのだと、分かるものだった。 (弱ったねぇ) 「これはこれは」  ――『状況が芳しくないのはお分かりだと思いますが。そこを何とかするのが貴方の仕事でしょう?』  耳許に響くダンマルの声に、少し殺気も立ってしまったが、今は、それをグッと堪えるしかない。 「ああ! そうだなぁああッ!」  感情のままに怒りの色で吐き出してしまたね。大人げないこ

      • タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#23

         乗客 女王陛下(元) 前編 麗しの妻 「うっわ。盛り上がってんなぁ~~すっげぇー~~」  俺は久しぶりに、王都をタクシーで周ったんだが。どこもかしこも群衆で、途中から歩くことにした。別に、娘の戴冠式に来た訳じゃない。名前も顔も、出産にすら立ち会ってもいないし分からない。当の母親からの音沙汰もなかったし。あの夜で孕んだなんて思いもしなかったんだよ。 「お祭りだよ、親父」  ダンマルの家が在った場所。とても見やすく、太陽の光りが当たる場所だ。墓参りに寄っただけの話しだ。人

        • グレイテスト・ビジネス 第三話

           獅子唐の言葉から逃げるように駆け出した翁へ、倉庫内を歩いている社員全員から「尾田ダンマル」と声を掛けられ続けた。最初は偶然かと「いや、違います」と話して交わしたが、さらに私情を含んだ物言いをしてくる社員がいて「違うっ、オレはダンマルくんじゃない!」と声を荒げて避けて足を走らせた。しかし、気がつけば、今いる場所さえどこかも分からず、戻り先を見失ってしまっていた。勢いのあった足の動きも、どっちにいけばいいのかと右往左往。こっちかなと突き進んで行く。入り組んだ倉庫内と翁を《尾田ダ

        タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#25《最終回》

          グレイテスト・ビジネス 第二話

           翁が【翁表】として入社したときにアクシデントが起きた。  入社式前に自信過剰な百目鬼重という十九歳の青年に遭遇をして懐かれてしまい、さらには入社式でも横隣が彼であったことが一番の七不思議と遭い、結果として――憤りが爆発炎上してしまった翁の方から喧嘩を吹っ掛けてしまった。喧嘩両成敗と入社式後に創設初となる役員会議にまで至ってしまった。役員だけではなく入社式に来ていた常勤歴の長い社員たち数十名も残り見守っていた。誰も彼もが二人から目を離せなかったからだ。とくに翁を関心と見入ら

          グレイテスト・ビジネス 第二話

          グレイテスト・ビジネス 第一話

           第一話  西暦二千二百一年。今年二十六歳になる翁表は何事も流されてはいけないんだなと、日ごろの運動不足を恨みながら顔しか知らない、名前も知らない社員たちと《倉庫内》を全力疾走していた。太腿が悲鳴を上げている。大きく上下に振っている両腕の二の腕も緊張に張っていて。後々で、きっつい筋肉痛になるんだろうなと、他人事のように思っていた。倉庫内に入る少し前に出来た鼻先の傷も顔中央と大きめに処置されたカットバンの下で痛みを放つ。  翁を含む四人の隊が倉庫内に入った当初から内部には商

          グレイテスト・ビジネス 第一話

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#22

           乗客 編集者と漫画家 後編 取材の終わりに… 『ダンマル、ちゃ……ちがっ。俺、こんなことになるなんざ思って――』  精一杯の言い訳を俺がダンマルに言った。いや、違う。違うな。自分を肯定する為に、自分にそう言い聞かせたかったんだ。こんなにも残酷で、馬鹿みてぇなことをしておいてアレなのは。重々に承知なのは。頭の中では理解してるってのにさ。 『思いもしなかったんだってっ』 「なんて。嘘だよ、……あいつらを倒す、殺す為なら少々の犠牲なんか、どうでもいいさって、俺はこんとき、思

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#22

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#21

           乗客 編集者と漫画家 中編2/2  瞳が輝く水科の表情に俺もビビるっての。こんな場所で、また。ドンパチをおっぱじめるつもりなの。あの日の事を知らない、若い世代なのか。ひょっとして、ひょっとしなくても。俺のことを知らない世代だとしたら、とんでもない。 「え。あンたってさぁ? 喧嘩売る相手、間違えてないかぁ?」  大馬鹿野郎って称号を与えたいところだ。さて、こんな大馬鹿野郎より、どうにも邪魔なのは――漫画家の空知大先生だ。思いっきり、人質じゃないか。 「間違ってなんかいな

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#21

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#20

          乗客 編集者と漫画家 中編1/2 厄介な乗客 「そんなに難しい話し、なんですか。尾田さん」  俺の言葉に、目を輝かせていたはずの空知も、しゅんっと悲しそうな表情になっているのを見かねたのか、彼の横で水科が俺に言う。 「まとめる必要なんかないですよ。始まりから終わりまで。きっちりと、話して下さい」  胆の座ったものの言い方には俺も苦笑しか出ない。あんたはどこまで、何を知っているんだよ。どうにも水科には勝てる気がしない。無理矢理に、ねじ伏せることが可能としてもだ。理論的とい

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#20

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#19

           乗客 編集者と漫画家 前編 層雲峡への取材旅行 「っはー~~雪がすっげぇ~~って。ダンマルちゃん」  大雪は降り止むことなくしんしんとだ。俺は大きなため息を吐くしかない。こんな日は、家でのんびりとごろ寝しながら、テレビにツッコミをしながら、携帯でネットショッピングをしながら、ビールを飲みつつ、お風呂に浸かりたい。そのまま布団にダイブして仲良くしたいんだよ。  ――『今年はかなり寒い上に豪雪予定だって。年間天気予報で言ってましたね。ついさっき』 「こんな吹雪で極寒な外に

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#19

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#18

          乗客 酔っ払い 後半 語ることはもうない   ――『何がって。お前が言う、運転手の尾田って奴ぁさぁ~~? 巻き込まれているだけなんじゃねぇの? 異世界の中の異世界の日本人ってなだけだろう。あっちにとって、こっちは――《異世界》そのものじゃんか』  瀧澤が笑って持論を唱えた。言われてみれば、確かにそうだとも思った。  異世界に転生すれば異世界人だろうし。でも、異世界に自ら行ったのなら、それは異世界冒険者ってことだ。尾田は異世界の方に副業名目で仕事にしている、って話しになる。あ

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#18

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#17

          乗客 酔っ払い 前編 ほんの少しだけ、話しを聞いて欲しい  ありのままに起こったことを話すぜ。何が、どうしてそうなったかってのは説明なんか不可能さ。酔っぱらっていた僕に期待するだけ無理って話しだ。  ズキズキズキズキズキ。 「あー~~……頭が痛いッ」  ◆◇  それは北の恵み食べマルシェに来ていた時だ。丁度、地方から旭川に帰って来ていた友達に会いに来ていた。イベントには、たまたま、遭遇したと言ってもいい。  腹が一杯になった後に、そのまま36街に向かって酒を呑んだ。J

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#17

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#16

          乗客 老人 ④ いつか、覚えていたら、話しをしょう ジャアアぁあ~~…… 「っはぁー~~気持ち悪ぃ~~」  近くのセイコマに寄ることを告げて、俺はトイレに駆け込んだ。レフトコーナーがあって、ゆったりと出来る快適空間な場所だ。たまに、こういった場所でゆったり、まったりとサボってコーヒーを飲むのが、また至福の時だ。 「尾田っ! 全部、吐いたか!? 全く、今も変わらずか!」  糞野郎が腰を上げてタクシーに向かうのを「あ! 何か飲みませんか!? お茶とか! コーヒーとか!」と

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#16

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#15

          乗客 老人 ③ 《最果て》と悪霊の真っ黒な砂「どうなったと、言われましても。彼とは……」  言い辛いことだってことを、察してはくれないのか。この糞野郎は。それを忘れて厄介な客断定をしてしまったことに、俺は馬鹿だなぁ、と内心で舌打ちをするしかない。後の祭りってもんだ。 「その。あぁっと? 最果てなんちゃらって場所に着いて、すぐに下ろさずに、観光したんだろう??」 「観光はさせてもらいましたね」 「その後の話しが訊きたいんだっ」  がっこん! と運転席が前後に揺れる。 「

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          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#14

          乗客 老人 ② あの時、一番、苛立った日 それにしても、このじぃさんを見て、思い出す奴って。  一体、誰だっけかな。  こんな横暴な人間なら、俺は忘れないだろうし。  いや、あっちにいた野郎なのかもな。  でも、それにしたって。  一回でも一瞬にしたって、普通なら思い出せそうなものなのに。どうにも、頭が、脳も反応しない。  つまりは、大したことのない存在感でどうでもいい程度だったってことなのかもしれない。  でも、どうしてこんなにも得体の知れない奴のことを、こんなにも俺は

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#14

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#13

          乗客 老人 ① 苦手な人種との通院 「日が暮れる運転してんじゃねえよっ」 「はい。申し訳ありません、お客様」  今日の乗客は、ダンマルちゃんが電話受付していた、お迎えのじぃさんだ。  年齢は、そうだな。多分、60歳ぐらいだろう。  俺が、最も苦手であって、大嫌いな人種だ。  こういう年配者は、俺みたいな職種を蔑むように、態度も横暴な人間が多い。  最初に、『お客さん』って言った瞬間に、詰られて、キレられたもんだから。俺も、このじぃさんが降りるまで《お客様》として気を使わな

          タクシー運転手とワガママな8人の乗客者たち#13