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ソシュールの言語理論と言語変化の諸相(論文読)

出張や展示会が重なり、論文読ができずにおりましたが、新しい記事更新です。今回は、書道家としての活動でも関わってくる「言語」について。

近代言語学の父と呼ばれるフェルディナン・ド・ソシュール氏の言語理論をベースにいくつかの論文を読んでいます。

ソシュールの言語理論に詳しくない方は、以下の動画をご覧になられると少し理解が深まるかと思います。

数々のソシュールに関する論文の中でも、今回は、

田林洋一さんの「ソシュールの言語理論と言語変化の諸相」
(東北大学 言語・文化教育センター年報)

を読みまして、以下にまとめています。

論文について

https://researchmap.jp/tabayashiyouichi/published_papers/45761019

ソシュールの言語理論:言葉の秘密とその変化


UnsplashKarl Raymund Catabasが撮影した写真

はじめに

言語は、私たちが日々使っているコミュニケーションの道具ですが、その背後には深い理論があります。特に、フェルディナン・ド・ソシュールというスイスの言語学者が提唱した理論は、言語の本質を理解する上で欠かせません。この記事では、ソシュールの言語理論をわかりやすく解説し、言語がどのように変化するのかも一緒に考えてみます。

ソシュールの基本的な考え方

言葉の意味はどう決まるの?

ソシュールは、言葉とその意味の関係は「恣意的(しいてき)」だと考えました。つまり、「犬」という音や文字(これをソシュールは「シニフィアン」と呼びます)と、その意味(「シニフィエ」)は、特に理由があって結びついているわけではなく、社会的な約束事で決まっているのです。

たとえば、「犬」をフランス語では「chien(シアン)」と言いますし、スペイン語では「perro(ペロ)」です。どの言語でも犬の姿は同じですが、それを指す言葉は全然違いますよね。これが「言語の恣意性」という考え方です。

言語をどうやって研究するの?

ソシュールは、言語を「共時態」と「通時態」の2つの視点から研究する方法を提案しました。

  • 共時態: 一時点での言語の状態を研究すること。たとえば、現代の日本語がどのような構造を持っているかを考える。

  • 通時態: 言語が時間を通じてどのように変化してきたかを研究すること。たとえば、古典日本語が現代日本語になるまでの過程を追うことです。

ソシュールは、特に共時態の研究が重要だとしました。なぜなら、言語は常に変わり続けるものであり、その瞬間の状態を理解することが大切だからです。

言語はどのように変わるの?

言葉のつながりと組み合わせ

ソシュールによれば、言語は「統合関係」と「連合関係」で成り立っています。

  • 統合関係: 文章の中で言葉同士がどのように結びついているかを指します。たとえば、「犬が走る」と「犬が吠える」のように、言葉がどう繋がって文を形成するかです。

  • 連合関係: ある言葉が他の言葉とどう関連しているかを指します。たとえば、「犬」と「猫」、「走る」と「歩く」のように、同じカテゴリーに属する言葉の関係です。

言語が変わるとき、この2つの関係がどう変化するかが重要です。例えば、昔の日本語では「けり」という動詞が使われていましたが、現代では「蹴った」に変わっています。これは連合関係の変化の一例です。

体系的な変化とちょっとした変化

言語の変化には、全体の構造が変わる「体系的な変化」と、部分的な変化である「変異」があります。

体系的な変化は、言語全体に影響を与える大きな変化です。たとえば、現代日本語の敬語体系が明治時代と比べて変わってきたことなどが挙げられます。

一方、変異は個別の単語や表現の変化です。たとえば、「ありがとう」を「サンキュー」と言い換えるような小さな変化です。これも言語の進化の一部です。

ソシュールの理論は今でも重要?

現代の言語学とのつながり

ソシュールの考えは、現代の言語学でも重要です。例えば、言語の背景化や前景化という考え方は、ソシュールの理論に基づいています。背景化とは、ある情報を目立たなくすること、前景化とは、逆に目立たせることです。

さらに、言葉がどうやって文法の一部になっていくのかを考える「グラマティカライゼーション」という研究も、ソシュールの理論を発展させたものです。

これからの研究

ソシュールの理論は、言語学に大きな影響を与えましたが、まだ解明されていない部分も多いです。特に、現代の言語学や文化研究との関連性をもっと探求することが、これからの課題となっています。

おわりに

ソシュールの言語理論は、言語の奥深さを理解するための鍵です。言葉は単なる音や文字の集まりではなく、社会的な合意の上に成り立つシステムです。そのシステムがどのように変化していくのかを理解することで、私たちは言語の本質に一歩近づくことができるでしょう。


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すぎた こうき|アーティスト、書道家
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