ボクと魔王とボトルメール
部屋に入り、戸を閉め切ると、部屋に普段とは違った香りがする。独特な匂い、私の知らない匂い。お母様の介助を断って一人で階段を上がり、そのせいで切れた息を整えるべく深呼吸をする。鼻腔に、肺に、青が満ちていくような気がする。本の中でしか見たことのない美しい湖上の村、リシェロが瞼の裏に浮かぶ気がした。
点滴でいくらか和らいだものの、身体はまだ思うように動かない。それでもベッドに戻る前に、机の上の瓶を手に取った。私が閉めた時よりも強く閉められた蓋、それに少し苦戦しながらやっとの思い