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悪い娘に悪戯されてみたい リョサ『悪い娘の悪戯』

マリオ・バルガス・リョサの大長編小説『悪い娘の悪戯』について。

リョサについて書くのは3回目になるので、リョサについてご興味のある方は前に書いたものをお読みください!

今回取り上げる作品『悪い娘の悪戯』は、僕がリョサという作家にハマったきっかけになった作品です。

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この作品は、ペルーに始まり、パリ、ロンドン、スペイン、東京と世界を舞台に40年にもわたって広げられる大恋愛小説です。主人公の男が、悪い娘(ニーニャ・マラ)に恋をしてしまったのが破滅の始まり。彼女と何度も、いい感じになるのですが、最後の最後でいつもひどく裏切られます。

僕が今まで読んだ小説に登場する悪女(ファム・ファタール)の中でも、この“ニーニャ・マラ”は、かなり性悪で、横領させたり、変態プレイに巻き込んだりと、ダントツで極悪です。

この物語、カストロの革命や、ヒッピー文化など、時代を象徴する社会情勢も同時に描かれます。時代や場所によって、何が正しくて、何が間違っているのか、という価値観はコロコロと変わり続けるのですが、主人公のニーニャ・マラへの愛は、何度裏切られてもさほど変わることがありません。思想や価値観は移ろいやすいものだと感じさせると同時に、"愛"の説明のつかない強さを感じさせてくれます。

一つ気になるのが東京が舞台のチャプター、“ニーニャ・マラ”は、やくざの情婦になっています。このやくざが大変態な上に、なかなかの邪悪人間です。そして、ラブホテルの描写も、日本を誤解してるんじゃない?ってな位、変態的です。ここはリョサさん、やはり日系ペルー人のフジモリ氏に大統領選で負けたことを根に持っているのかしら、と邪推してしまいました。

実際の所、ファム・ファタールってどんな感じなんでしょう。。。と思って調べてみた所、
「恋心を寄せた男を破滅させるために、まるで運命が送り届けたかのような魅力を備えた女」
とのこと。となると、僕の奥さんは、"破滅させる"以外は当てはまるんですねー。ファム・ファタールの良いとこどりですわ。

ところで、2019年に、24曲からなる歌曲集を発表したのですが、その中の一曲が、この『悪い娘の悪戯』にインスパイアされております。良ければお聴きください!

高橋宏治作曲・作詞《24 Songs for Voice and Piano (2017-2019)》より
〈 4. 悪い娘(こ) "niña mala"〉。


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