宇宙はファインチューニングされているのか?その1
前回、水の「粘りけ」が実は「プランク定数」と「陽子/電子質量比」というミクロな定数の影響をうけている、という話をしました。
今回は、上記のミクロ定数がマクロである宇宙空間にどう絡むのか?、という話です。
自身が輝く恒星の周りをまわる惑星(地球もその1つ)を例にとると、1つ1つの原子がその重力(引力)によって支えられています。
もう1つ、原子自身もプラスの陽子群の周りをマイナスの電子がまわっており、電磁気力と呼ばれる斥力(陽子間・電子間)・引力(陽子・電子間)が起こっているわけです。
したがって、安定的に天体として存在するためには、上記の2つの力が程よくバランスしていないといけません。
巻末の参考リソースによると、理論的には
惑星の質量÷陽子の質量が10の54乗ぐらいのスケール
でなければいけないそうです。
そして実在しているので当然ですが、実際計算すると一致します。
同じように、恒星(57乗)、その集合体である銀河(67乗)でも理論値と実際の観測に基づく値が見事に一致しています。
もし、重力が電磁気力と同じくらい強くなったと仮定すると(今は10の40乗分の1!)、原子が複数個集まるだけで核融合反応が起こって、あっという間にエネルギーが枯渇してしまいます。(参考までに、最寄りの恒星である太陽は、100億年かけて核融合エネルギーを放射し続けます)
もう1つ例を挙げます。
アインシュタインが静的な宇宙を表現するために便宜的に導入した「宇宙定数(または宇宙項)」という値があります。
意味合いとしては、万有引力だけだとつぶれてしまうので、万有斥力に相当するものです。
ただし、発表した数年後に宇宙が膨張している、という観測が発表され、アインシュタインはこの宇宙定数を撤回するという出来事がありました。
話はそこからさらに一転します。
さらに観測精度が高まった20世紀末になると、宇宙が膨張する速度(加速度)が、従来よりも相当早いことが明らかになりました。
過去記事でも軽くふれたので引用しておきます。
結論だけ書くと、「宇宙定数」が見事に復活します。
但し、ここからが未解決問題です。
この加速膨張の原因として、真空エネルギーによるものではないか?とされています。(勿論仮説ですが消去法では有力)
理論的にその値が導かれ、その過程で前回登場した「プランク定数」が関わってきます。
こういったフリをきかせると、「上述の天体同様さぞや見事に一致するのだろう」、と期待すると思います。
見事にその期待は打ち砕かれました。
真空エネルギーを理論的に計算すると、実測より「10の120乗」も大きい結果となってしまいました。
個人的に知る限り、物理学史上最大の乖離・・・です。
そもそも、今の宇宙が安定的に存在するための宇宙定数(理論でなく実測からの天下り)は結構シビアで、(120乗どころか)ほんの数倍大きくするだけでも加速膨張が激しすぎて、現在のような天体が生まれないと予測されています。
これはまだ未解決の謎とされており、解明したらノーベル賞は間違いないと思います。
一旦はここまでにして、次回は(今回とりあげてない)残りの「力」と宇宙とのバランスについて触れてみます。
<参考リソース>