非生命から生命を産む化学回路
生命の起源は、宇宙や知能と同様魅惑的な探求テーマです。
以前にも、何度かそのテーマで取り上げてきました。
生命誕生における1つの論点は
「どのように代謝がはじまったのか?」
です。代謝とは外部から取り込んだものをエネルギーに変換する装置です。たまに「科学エンジン」ともいわれます。
我々の日常で例えると栄養を体内に摂取する「食事」ですがが、ミクロではそれをたんぱく質が分解して生命活動に活用しているわけです。(細かくは内部貯蔵分も使用)
今のような複雑な生命体でない初期においては、そもそも外部に「栄養」が乏しい状況です。
ですので、外部でなく自身で栄養からつくるという説も唱えられてきました。
そんな二者択一の中でハイブリッド仮説が登場しました。それを紹介した記事を見つけたので紹介します。
ようは、
特殊な回路を持つ生命体(のようなもの)であれば、自身でも外部でも栄養をエネルギーに変えることが出来る、
という話です。
その特殊な回路は、クエン酸(TCA)回路と呼ばれます。
元記事から、その回路図を引用します。
小難しい図ですが、この→は時計・反時計両方回ることができます。
従来の常識では、この回路でCO2を固定する(エネルギー発生につながる)には、どうしてもある酵素(ATPクエン酸リアーゼ)が理論上必要でした。
ところが、初期生命の1つであろうと思われる細菌(Thermosulfidibacter)のゲノム解析を行ったところ、痕跡は見つかりませんでした。
そこで、この細菌と有機物とをごった煮にしたスープ状態にして観察すると、有機物有無によって柔軟に回り方を変えることで同様の結果(CO2を固定)が生まれることを発見します。
という成果をもとに提示されたのが、「混合栄養生命起源説」です。
斬新なのは、従来のTCA回路は生物タイプによって時計か反時計か二者択一で、それによって必要な酵素も定まり、それがお互いの弱点につながってしまいます。
ただ、今回初期生命の候補の細菌(Thermosulfidibacter)においては、両方回ることができ環境変化に対応して、栄養を自らがつくったり外部の有機物から取り込むことが出来たということです。
細菌がいかに地球の生命史に重要な役割を担ったのかを、過去に投稿しました。
あらためて、生命の誕生と成長のカギを握るのが細菌にあると感じますね。この領域の研究は今後も追っかけてみたいと思います。
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