長年信じられたアルツハイマー病仮説への疑惑
以前に、化石にまつわる20世紀最大ミステリーとして、人類起源の化石捏造事件を取り上げました。
数十年もその捏造された化石を信じて研究が進められたのは悲劇でしかありません。
今、他の分野でも、捏造疑惑騒動が話題になっています。
なお、現時点ではまだ審議中ですので、100%決着がついたわけではないのでご注意ください。
テーマは、人類難病の1つ「アルツハイマー病」です。すでに日本語記事も登場しているので、その1つを引用しておきます。
こちらの科学雑誌にその経緯含めて詳しく掲載されています。
ようは、
アルツハイマー発症原因とみなされてきたアミロイドβ発見論文で、画像操作の可能性があり目下審議中、
という話です。
これは結構関係者にとっては衝撃的なトピックです。
アルツハイマー病とは、シンプルに言うと「認知症」で、脳の記憶や思考力が低下していきます。
基礎知識サイトを1つ紹介しておきますが、一般的には脳を構成する神経に異常が起き、その症状を現す代表的なものが「アミロイド班」と呼ばれるものです。
そしてこのアミロイド班を形成するきっかけとして注目されてきたのが、アミロイドになる前段階の「アミロイドβ」と呼ばれるたんぱく質です。
2006年にマウスの実験でその量に影響があることが示唆されました。
そしてこの論文をきっかけに拡張されて、「アミロイドカスケード仮説」と呼ばれる説が有力なものとなりました。
大まかにいえば下記のドミノ現象(カスケード)でアルツハイマー病の症状が進行する、としています。
1.アミロイド前駆体タンパク遺伝子(APP)発現
2.アミロイドβタンパク(Aβ)生成
3.2が凝集されてAβオリゴマー生成
4.3が脳内タンパク質「タウ」をリン酸化
5.4によって神経細胞が傷つけられて死滅
今回の指摘は、そもそも2のアミロイドβの因果関係への疑義で、この一連の仮説自体を否定する可能性があります。
注意したいのは、今回の疑惑は、ある一人の科学者による画像疑義が見つかったものです。(今のところ関係する科学者による不正疑義は訴えられていません)
具体的には、たんぱく質の質量分析からアミロイドβを現す領域が増えているという箇所です。
最下段にある画像の上下が複製ではないか?というのが指摘の1つです。
まだこれに対して明確な回答がかえってませんが、すでに元論文では7月14日付けで注釈が付け加えられています。(下記引用)
繰り返しですが、現時点では、あくまでこの特定の研究者による画像捏造疑惑です。
ただ、この成果をもとにアミロイドβカスケード仮説を信じて研究が広がり、そして2021年に世界初のFDA(米国の薬を承認する当局)承認薬が生まれたのは事実です。(当然ですが、薬による治療効果があるとプロセスを経て認定されました)
そしてこのカスケード自体もまだ仮説であり、アミロイドβ仮説が棄却されたとしても、後続のドミノは別のルートでつながる可能性もあります。
最近捏造に関するニュースがたまたま多く見かけます。特に今回のトピックは人類の代表的な難病に関するもので、その影響力はとても大きいです。
捏造が証明された科学者は非難されてしかるべきですが、イコールその説及び派生的な研究を十把一絡げに否定するのはもう少し理性的にみたほうが良いかもしれません。
進展があればこちらでも追加で投稿したいと思いますが、そろそろワイドショー的な報道も出てくるかもしれません。
どうか感情的に判断せずに、まずは捏造有無の確認とその再現防止策が冷静に議論されることを望みます。